ラブラブダンジョンは摩訶不思議!なのじゃ!

第64話 1/5

「カノガミ〜そっちも片付けてくれ」


「分かったのじゃ」


 カノガミが積んであったマンガ雑誌を物置部屋へ運んでいく。


 今日から3連休。先日約束した通り、芦屋あしや兄妹が泊まることになっていた。


「じゃけど、片付けそっちのけで遊び道具ばっか揃えるのはジュンらしいのぉ〜」


「うるせぇ。見ろよカイ兄の部屋から引っ張り出したこのゲーム達を! これだけあれば3泊なんて余裕だぜ!」


「ふーん何のゲームじゃ? スマ○ラ、カスタムロ○、マリ○カート、ボンバー○ン、ゴールデ○アイ? なんじゃロクヨンのばっかりじゃの」


「プレステのゲームは夏樹がバ○オハザード持って来るって」


「じゃあウチにバ○オハザードクリアさせて欲しいのじゃ!」


「お前は謎解きに詰まるとキレてくるからヤダ」


「えぇ〜!? なんじゃあ……ジュンをイライラさせながらのプレイが楽しいのにぃ〜」


「どういうプレイだよ!?」


 2人とも芦屋の屋敷で改修工事があるとかで、3連休丸々宿泊する。最終日も泊まって、そのまま学校へ登校するとは中々にイレギュラーなスケジュールだ。俺は楽しいから問題無いけど。



 ……。



「そういえば小宮と犬山は来ないのかの?」


 カノガミが物置部屋とリビングを往復しながら言った。


「小宮は今日から家族旅行だって。早く帰ってきたら最終日には顔出すってさ。犬山は用事あるって」


「そうなのか。ちと寂しいのぅ……これで……最後じゃ!」


「おぉサンキュー。これで大体大丈夫かな?」


 ちょうどリビングのマンガが綺麗に片付いたタイミングでチャイムが鳴った。


◇◇◇


「うわぁ〜外輪の家来るの久しぶりだなぁ」

「お兄様! 恥ずかしいですからあまりキョロキョロしないで下さい!」


「夏樹が来るのって小学生の頃以来か?」


 芦屋あしや兄妹をリビングに通してテーブルに座ってもらう。4人掛けのテーブルが埋まるのは久しぶりだったから、少し嬉しい。


 用意しておいた来客用カップにお茶を入れた。


「あ、そうそう! 2人が寝る部屋はカイ兄の部屋使ってくれ! 布団も干しといたからさ。どっちか布団で寝てくれな」


「な、なんか……俺らとは家事レベルが違うな」


「ジュンの家事スキルはウチが育てたのじゃ」


「偉そうに言うな。まぁでも確かにカノガミが来てからやること増えたもんなぁ」


「ウチもやってるじゃろぉ!」


 カノガミが怒りだした。


「分かってるって。風呂掃除とたまにメシ作ってくれるよな」


「分かればよい♡」


「カノガミさん……それでいいんだ……」


「洗濯はどうされてるのですか? 女性物とか……」


「あぁ、それはね。カノガミって洗濯物出ないんだよ」


「え!? どういうことですか?」


「ウチの衣服はイメージなのじゃ。『これを着ている』とウチが強く念じればその服を着ておるように見せられる」


 そう言うと同時にカノガミの服がパーカーから制服に変わった。


「秋菜。スカートを触ってみるのじゃ。質感も本物そのものじゃろ?」


「ほ、ホントですね。私の制服と全く同じ……」


「そうじゃろ? その代わり再現する為には念入りにその服を調べないといかんがの」


 そう言うとカノガミの服はまたパーカーに戻った。


「すげー!! ちなみにカノガミさんってふ、風呂とかどうしてるの?」


「お兄様!!」


「別にアレな意味じゃねぇよ秋菜。カミサマの実態調査するのも芦屋の勤めだからさー」


「なぜこういう時だけ芦屋の勤めを持ち出すのですか……」


 秋菜ちゃんがため息をついた。


「入らなくても問題は無いがの。好きじゃからウチは入っとるぞ」


「くそぅ外輪……なんてうらやましいんだ……」


 夏樹が涙を流して訴えてきた。


「おい!? 変な想像すんなよ! なんもねぇから!」


「ジュン……ウチは気付いとるぞ? ウチが風呂に入っている時の熱い視線を♡」


「え、準さんってそういう人だったのですか……!?」

「うぅ……羨ましいぃぃ……」


「おい!? そんなことしてねぇよ!! 変なこと言うなよ!!」


 誤解を解くのに1時間かかった。


◇◇◇


 夏樹達が来てから2時間。なぜか質問攻めに会っていた。


「みーちゃんと力を分けた影響はどうなんですか?」


「タイムリープ以外に若干の時止めや巻き戻しもできるようになったかの。無機物の方が融通きくのじゃ」


 カノガミが得意気に質問に答える。


 答える度に夏樹達が驚く。するとさらにカノガミが得意気になっていくという負のループが出来上がっていた。


「あとあと! カノガミさんはどこで寝てるの!?」


 夏樹はこの手の質問ばっかりしている。秋菜ちゃんもツッコミを入れるのを諦めたようだった。


「あぁ〜それはの……


「「え"」」


 芦屋兄妹のリアクションが今までと明らかに違う。


「ん? ウチなんか変なこと言ったかの?」


「ああああ! 待ってくれ!! 違うんだって!!」


「いいんですよ準さん。そうですよね。同棲……ですもんね。むしろ私達が無粋だったのかもしれません。先ほどのお風呂の件もそう言うことなら……理解できないこともありません」


 秋菜ちゃんの慈愛に満ちた表情が辛い。


「違うんだ! 俺の部屋だけど、カノガミは押入れで寝てんだよぉぉぉ!」



「え? 押入れ?」



「そうだよ……カノガミが青ダヌキのマンガに影響されてさ。俺はベット、カノガミは押入れで寝てんだ」


 2人を俺の部屋に案内する。そこは押入れと反対の壁に俺のベットが置かれ、部屋の中央にロープを張ってカーテンが引かれていた。


「こんな感じだから、別の部屋みたいなもんだよ」


「光球態でも寝れるがの。やっぱり布団で寝るのが好きじゃから♡」


 カノガミはなぜかウィンクしてみせた。


「あ、ちなみに押入れは開けっぱなしじゃぞ? 暗闇は好かんのじゃ」



「どう思う? 秋菜?」

「ううん……どうでしょう?」



 芦屋兄妹は何やらヒソヒソと話し出した。



「ギリギリ、セーフ……かな?」

「ギリギリ、セーフですかね?」



「ギ、ギリギリか……」



 俺とカノガミの生活はギリギリらしかった。

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