第46話 2/2

「武士道とはダシを取ることと見つけたりっ!!」


 武士道研究会の部室に入ると1人の部員が演説していた。


「して、その心は?」


 メガネをかけた部員が何やら質問した。


「(カツオ)ブシが大事でしょう」


「いいね〜」

「いいよ〜」

「これは中々……」


 他の部員達が口々に演説している部員を讃える。


「な、なんじゃこりゃ……」


「え? 武士道を研究している最中なのですが?」


 直江が不思議そうな顔をした。


--ただのダジャレ研究会じゃぞ。


 あ、ああ……。これは活動実態なんてみんな知らんわな。


「なるほど〜。武士道研究会の活動はこんな感じなんだ! メモっとこ」


 小宮がメモ帳を取り出して、何かを書き込んだ。


「ありがとうございます小宮先輩! 新聞に載せてもらえると嬉しいのですが……」


「じゃ、『今日の部活紹介』のコーナーに載せてあげるね♪」


「ありがとうございます! これで部員が増えるぞぉ〜」


 直江がガッツポーズした。


 直江……部員、増えないかも……。


「と、とにかく、天井裏だよな? 早速調べるぞ」


 部室に入り天井を調べると、部屋の隅に開きそうな空間があった。


「あれか……。ちょっと俺、覗いてみるわ」


 机を並べてその上に乗る。


「き、気をつけて下さいね!? 霊的な何かがいるかもしれません」


「わあってるよー」


 カノガミ。一緒に覗いてくれないか?


--しょうちのすけじゃ。


 武士道研究会の影響受けてんじゃん……。


 カノガミが光の玉になって肩に乗る。慎重に天井を開いて中を覗き込んだ。


「何か見える? ソトッちー」


「ちょっと待ってくれー」


--ジュン! 気を付けるのじゃ!!


 お、何か分かったか?


--奥の方から強い力を感じる。ウチが見て来てやるからジュンは下で待っておれ。念の為に入り口も塞ぐのじゃ。ウチが合図したら開けておくれ。


 ああ。分かった。


 天井を閉めて机から降りた。


「どうですか?」


「もうちょっと待ってくれ」


 直江に聞こえないように小宮へ耳打ちした。


「今カノガミに見てもらってるから」


「了解♪」


--うーむ。光のままじゃと危険かもしれんな。ちと狭いが人間態になるかの。ふんっ!


 天井から「ドンッ!!」という音がした。


 カノガミのヤツもうちょっと静かにやれよなぁ。

「そ、外輪先輩!? 上から今、お、音が!?」


「え?」


 あ、ヤバイ。カノガミが逆に部員を怖がらせてる。


--お、何かいたぞ! 待つのじゃ!!


 天井からドスドス音が鳴る。


「「「ぎゃああああ!? て、天井から物凄い音がああぁぁ」」」


 怯える部員達。


--ダメじゃ動きにくい!! でやるか。


 え?


 恐らくカノガミが髪を伸ばして操っているのだろう。天井から


「「「ヒィィィィ!? 何この音ぉぉぉ!?」」」


 これは……まずいな。


--入り口の方に逃げたのじゃ! 待て!!


 カノガミの声と同時に、先ほど開閉した場所が勢いよく開く。


 何かが飛び出した後、それを追いかけるように


 うわ、天井外れたことどうやって説明しよう? まだカノガミが見えてなくて良かっ……。


「「「ぎゃああああ!! 天井から髪の毛があああああ」」」

「そ、外輪先輩!? 逃げましょう!!」


「え?」


 部員達はパニックを起こして部屋から逃げ出してしまった。


「カノちゃん。必死すぎて可視化しちゃってたみたいだね……」


 小宮が呟き、その光景を写真に収めた。


 そういや、カノガミ言ってたな。「まだ上手くコントロールできない」って……。


 すまん。武士道研究会のみんな……。


「あ、そういえば飛び出してきた何かはどこだ!?」


 部屋を見回すと黒いワンピースを着た少女の霊が佇んでいた。


 ん? 黒いワンピース?


「みーちゃん!? なんで!?」


 みーちゃんはワンピースの裾を掴んでモジモジしている。


「なんでみーちゃんが学校にいるのー?」


 小宮が質問した。


「あの、みんなにラセンリープの影響が無いか心配で……様子を見に来ていたの」


「それにしてもなんで天井裏なんかにいたんだ?」


「カノガミと力を分けてからまだコントロールに慣れてなくて……。上手く姿を消せないの」


「あ、そういえば私にも見えてたもんねぇ。みーちゃんが天井から飛び出すところ」


 小宮が納得したように言った。

 

「ここの天井裏はちょうど外から繋がっててみんなの教室に行き来できるから……天井から様子を見ていたわ」


--ジュンすまん! 逃してしもうた……ってなんでみーちゃんがおるんじゃ?


「お前、天井裏でみーちゃんに気付かなかったのかよ?」


--えぇ〜? 上にいたのってみーちゃんだったの? 暗くて気配で追ってたから気付かんかったのじゃ♡

 

 気付かんかった♡ じゃねええぇぇぇ!?

 

「武士道研究会のみんな怖がらせちまったなぁ……でもありがとなみーちゃん」


「え?」


「みんなのこと気にしてくれて」


「う、うん」


 みーちゃんは恥ずかしいそうにモジモジした。なんだかその姿は、戦っていた時からは想像がつかないほど可愛らしい姿だった。



◇◇◇

 翌日。この出来事は学校新聞に取り上げられた。小宮曰く「事実だし捏造報道じゃないよね?」とのことだった。


 新聞記事は大いに話題になり、「天井裏の怪」として、白水中学の七不思議に加わった。


 七不思議は八不思議に。しかし、相変わらずみんなは白水中学七不思議と呼んでいる。


 その新聞以降、見物客が「武士研」の部室を訪れ、武士研の活動は一気に校内へ知れ渡った。


「お2人ともありがとうございました! まだ怖いですけどあれから音もしないですし、霊と上手くやっていきます!」


 と、直江から感謝された。



 ちなみに。



 武士研のメンバーは増えていない。

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