第35.5話

 私の最初の記憶はチヨから始まった。


「あ! 光×玉が動×とる! お父×! 光の玉が動い×りま×よ!」


 ぼんやりとした記×の中で、チヨの×が聞こえた。チヨは×まれたば×りの私の憑代よりしろと×った。


 私はチヨに力×見せ×みた。するとチヨは私に笑××けてくれた。


「ア×タはカミ×マじゃったんやね! ウ×はチヨ! カ×サマ。カミサ×が大き×な×まで、チヨがしっ×りお世×させて×きますから」


 チヨはい×も私の所に×ってきては××してくれた。今×の出×事、村の様×、友×と何をして遊×だか。そう×ったことを××てくれた。


 チヨの存×が私を孤×から××てくれた。



 私はいつ×チヨ×の礼としてチ×ラを見せた。果物の×を成×させてみたり、川の×れを遅××て魚を×りやす×したり。


 その度にチヨは×んでく×た。「村×み×なが×せに×る」と。


 小さな×だった。少ないが×うには困×ず、みな勤×で、よく協×した。


 私はチヨがその村の中で×つかツ×イとなり、子を×すことを×しみに×ていた。




















 しかし、ある年から……。






 年貢の取り立てが厳しくなった。


 小さな村は一気に困窮し、明日食う物にも困る日々が続いた。


 そんな姿を見かねたチヨは私に願った。


「皆が飢えを凌げるようにして欲しい」と。


 私は土地の時間を弄った。本来作物が実らぬ季節。しかし、時間を弄ったことで豊作となり、村人は飢えずに済んだ。


 私は村人に知られることになり、カミと呼ばれた。そしてチヨはカミの言葉を伝える巫女と呼ばれた。


 チヨの父は村長だった。村長はチヨを使い、さらに作物を実らせた。




 その年。村人が1人消えた。


 その後も力を使う度に人が消えた。




 私はその時知った。私は全能では無いと。力には代償があり、糧が必要だった。




 チヨは大層悲しんだ。元々優しい子だ。純粋に他者の幸せを願っていたのだろう。


 チヨはその事実を村長に訴えた。しかし、その事実を知ってなお、村長はチヨに願わせた。作物を実らせるようにと。皆の為だと。


 ある日。人が消えていることはチヨのせいだと言う者が現れた。その考えは一気に村に広まった。それからチヨは巫女から呪われた女とされ、私はカミではないと言われた。




 そしてチヨは殺された。


 自分が幸せを願った者達の手によって。




 私はチヨを蘇らせようとした。死んだチヨの時を戻そうとした。それには犠牲が必要だったが、私には関係無かった。どれほどの命が必要かも分からなかった。目に付いた人間全てから命を吸い上げた。


 私は……ただチヨが再び笑ってくれればそれで良かった。



 だが……。



 蘇ったチヨは笑わなかった。



 自分の為に命を奪われた者達にひたすら謝り続けた。そして再びこの世を去った。



 私は孤独になった。



 その後、村人の嘆願により芦屋あしやの者達が村を訪れた。



 村長は裁かれ、私は封印された。



 私に訪れた何百年もの孤独と暗闇は、罰だったのだろうか?



 今ではもう、チヨとの安らかな日々を思い出すことはできない。



 ただ、悲しみと憎しみが胸の内に残るばかりだ。

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