第35話 4/4
今日は慌しい1日だった。朝から晩まで芦屋秋菜との作戦会議に演習。全然休まる暇もなかった。
1つだけ気になるのは、芦屋秋菜がどう動くかについては分からないことだ。どれだけ聞いても「明日の朝、皆に伝える」と言って教えて貰えなかった。
まぁ、芦屋秋菜のことだから何か策があってのことだと思うけど。
俺達はとにかく、みーちゃんに接触するまでの行動を何パターンも練習させられた。
結局、こうやって芦屋の客間に帰って来れたのは辺りが暗くなってからだった。
シャワーを浴びて、ベッドで横になる。
明日はいよいよみーちゃんが復活する日か……。
--ジュン。
どうした? 緊張してんのか?
--オヌシだけに話がある。
なんだよ?
--ウチの話には1つだけウソがある。
は? ウソ!? こんな直前に一体なんだよ!?
--すまん。あの時は秋菜もいた。ああ言うしかなかったのじゃ。
それで、どの辺りがウソなんだ?
--「
それってめちゃくちゃ危険だろ? 彼ノがみは大昔に多くの人間を消したって聞いたぞ。
--ウチはなんとか被害が出んようにコントロールしてみせる。絶対できる! 彼ノがみは、中にいるウチらの影響を無意識下で受けるハズじゃ! じゃけど……。
なんだよ?
--人格があるということは……ラセンリープは彼ノがみの意思でしか行えん。じゃから、ジュンに彼ノがみをラセンリープまで誘導して欲しいのじゃ。
ラセンリープまでの誘導……。
--ウチでは、もう彼ノがみがどんな性格なのか……分からん。
彼ノがみは、カノガミでもみーちゃんでもないんだよな?
--ああ。ウチらにとって彼ノがみは元となる存在ではあるが……違う。何もかも。ただ、ウチやみーちゃん、彼ノがみを繋ぐものが1つだけ、ある。
カノガミ達をつなぐもの?
--「チヨ」じゃ。
「チヨ」……ずっと気になっていた。夢で見たこともあったし、芦屋の歴史資料にもその名前があった。
一体誰なんだよ? カノガミ達にとって、どんな存在なんだ?
--チヨは彼ノがみの最初の
そういえば芦屋の歴史資料にも、書いてあったな。「カミの声が聞こえる娘」で、「村人に殺された」って。
--やはりか……。
なんだよ。知らなかったのか?
--ウチはな。チヨとの何気ないこと、良かったことの思い出が残っておる。反対にチヨの最期に関する記憶はみーちゃんの中に強く残っておるようじゃ。ウチらの力の差はそこにある。
チヨさんの記憶と力の差……。
--チヨの悲劇がみーちゃんをあそこまで駆り立てていると思うのじゃ。そして、恐らく彼ノがみも……チヨに囚われておる。
死者に囚われる……か。人のことはあんまり言えないな。
--ウチは……みーちゃんにチヨの思い出を渡したいのじゃ。良かった時のことを。じゃって、最後が辛かったからってそれだけが全てじゃないじゃろ?
……。
--彼ノがみと対峙するジュンには話しておきたかったのじゃ。1番危険な役回りをジュンに託すことになってしまって、すまん。
なんだ。そんなこと気にしてたのかよ。
--そんなことってなんじゃ! ウチがこんなに心配しとるのに!!
俺にはカノガミを引き上げるっていう大事な役割があるだろ? だから絶対生き残ってみせるよ。
--ジュン……。
俺こそごめん。お前ばっかりに怖いことを押し付けて。改めて思うよ。俺はカノガミがいないと何もできないんだなって。
--なんじゃ♡ それじゃあ全部終わったらカントリーマ◯ム5袋買ってもらおうかのぉ〜。いや、アイスも捨てがたいの。トリプルのヤツ。それで、店先で食って店員を驚かすんじゃ♡
人が真面目に思ってんのに!!
--ふふ。
「はは」
--よぉーし! 明日! みーちゃんをなんとかして! 彼ノがみになって! みんなを救う!! できる気がしてきたのじゃ!!
ああ。俺も絶対! ラセンリープして、みんなを救って、カノガミのこと引き上げるからな!!
--じゃあの。おやすみジュン。
「ああ。おやすみ。カノガミ」
そして、みーちゃんの封印が解ける日がやって来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます