第34話 3/4

 祠から出て、再び屋敷に戻る車へと乗り込んだ。


--よいか? 小宮達を救う方法を伝えるぞ。


「ああ。頼むよ」


「……」


 黙っている芦屋秋菜あしやあきなを横目にカノガミが話し始めた。


--まず、この世界の仕組みを説明せねばならん。それぞれの世界を1本の線としよう。通常のタイムリープではこの線の中でしか行き来できん。


「それはなんとなく聞いたことがあるかも。良くタイムトラベル系の創作なんかで説明される物だよな。いくつもの世界が並行に並んでいるって」


--まぁちょっと聞くんじゃ。この世界ではその線がで世界が並んでおるんじゃ。


「立体……か、それって線が微妙に斜めになってたり奥行きがあったり、クロスしていたりするってことかな」


--そうじゃ。そして、ここからが重要じゃ。にあるが生まれる。それが。実はその世界同士は、世界が分岐した地点を起点として、


「二つの世界が繋がってる!? それって……」


--その繋がりを仮に「ラセン時間」と呼ぶとしよう。タイムリープで「ラセン時間」を潜ることで、あの日、小宮達が消えた地点まで戻ることが可能じゃ!!


「そこでみーちゃんを止めれば……」


--犬山が言っていたじゃろう? 今ウチらのいるにとってそれはタイムパラドックスになる。そうすればパラドックスを修正する為、世界は融合し、1。それができる。ラセン時間を潜ることができれば!


「ラセン時間を通るタイムリープ……」


「それで? お前らはその『ラセンリープ』とやらをやるつもりってことか?」


--「ラセンリープ」って……秋菜。お前のその恥ずかしいセンスはどこから来ておるんじゃ?


「うるさいっ! 略しただけだ! 名前が長いんだよ!」


 珍しく芦屋秋菜が顔を真っ赤にした。


「いいじゃんカノガミ。ラセンリープ。カッコいいじゃん」


--ジュンもか。お前ら中2病じゃのぉ〜。


「そもそも俺は中2じゃいっ!? で、どうやったら、そのラセンリープはできるんだ?」


--ラセン時間はの。『ノがみ』しか通ることができん。


「どういうことだ?」


--資格が無いから……としか説明できん。じゃから、ウチでも、みーちゃんでも通ることは不可能じゃ。当然人間にも。無理に通ろうとすると時間の狭間に閉じ込められてジ・エンドじゃ。



「じゃあそもそも『ラセンリープ』できないじゃん」


--いや、方法はある。一つだけ。


「ん? だってカノガミにもみーちゃんにも無理なんだろ?」


--ウチとみーちゃんが融合して『彼ノがみ』に戻るのじゃ。そうすればラセンリープできる。それに、ウチと繋がっとるジュンは例外的に一緒に飛ぶことができる。


「な……『彼ノがみ』の復活? そんなことをするなら私も黙っていられないぞ。一体どれだけの被害が出るか……」


--安心してくれ。融合とはいえ、みーちゃんとウチはもう別の存在。上手く混ざらん。ガワの『彼ノがみ』は言わば抜け殻……。ロボットみたいなもんじゃ♡ 被害が出ないよう中からウチが操ってやろう」


「抜け殻? 本当だろうな?」


--ウチを信じて欲しいのじゃ。被害は出さん。


「……分かった」


 芦屋秋菜は納得したのか。それ以上の追求はしなかった。


「な、なぁカノガミ? お前が消えちゃうなんてこと……無いよな?」


--そこでジュンの出番じゃ♡


「俺の出番?」


--ラセンリープして到着した後、ジュンがウチのことを引っ張っておくれ。そうすればまたウチに戻れるじゃろ。


「引っ張るってどうやったらいいんだ?」


--ウチに会いたいと強く念じてくれれば良い。釣竿みたいに引き上げて欲しいのじゃ。そうすればまた会える。


「そうなのか……良かった」


「あのガキが戻った後はどうするんだよ」


--それも大丈夫じゃ。前にみーちゃんに触れたことがあったが、みーちゃんの力がウチに流れ込んだのじゃ。元々同じ存在のウチらは物理接触で融合する。そして、もう一度分離した時、みーちゃんとウチの力は対等になるハズ。そうなりゃもう悪さできんのじゃ。


 ああ。あの時のみーちゃんマジギレしてたのってそれが原因だったのか。


 融合しそうだわ力奪われるわで散々だったんだろうな。


--ウチの復活直後にジュンごと消そうとしたり、そうかと思えばウチの力を様子見したり、よっぽど警戒しとるのじゃろうな。



「色々と唐突で頭に入ってこないが……分かった。協力してやろう」


--感謝するのじゃ秋菜。チャンスは一瞬じゃ! みーちゃんが封印を破って出て来た時!!


「封印が解けるまで残り2日。明日は朝から作成会議だ」

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