第33話 2/4

 芦屋あしやの屋敷に来てから3日。もうすぐみーちゃんの封印が解ける。


--だ、ダメじゃ……! ぜんっぜん突破口なんて無いぞ……。


 しかし、俺達は未だに小宮達を救う方法を見つけられなかった。


--うぅ……あんなに大見栄切って恥ずかしいのじゃ……。


「ここの書庫ってノがみを封印した経緯は詳しく書いてあるけど、彼ノがみの能力自体の言及は無いからなぁ」


「私はどちらでも問題無いがな。無理なら全力であのガキを迎え撃つだけだ」


 芦屋秋菜は机の上に足を組んで座っていた。


「なんで芦屋秋菜はそんな冷静でいられるんだよ? 自分が死ぬかもしれないのに」


「私はこの地を守るという使命以外に興味は無い」


「芦屋秋菜が死んだら芦屋家はどうなるのさ?」


「また別の当主が立てられるだけだ」


 ひぇぇぇ。別作品のキャラみたい……。


「私からしたらお前の方が不思議だ。ただの学生のくせに死への恐怖心を感じない」


「いや、怖いよ。でも、他の誰かが不幸になるのが嫌なだけだ」


「ふぅん」


--ダメじゃあああああぁぁぁ!! どうする!? どうしよう……!?


 カノガミが本を放り投げ頭を掻きむしった。


「カミのクセに分からないことだらけなんだな」


「カノガミを煽らないでくれ」


--じゃってぇ……。ウチはそもそも記憶があまり残っておらんしぃ。340年もブランクあるわけじゃしぃ……復活した時も世の変化に驚きまくってたくらいじゃしぃ。


「あぁ〜そんなこともあったなぁ。そうそう。カノガミがさ。髪の毛使って俺の知識読んだりして順応したんだよなぁ」


「それは……私なら拒否するな」


「いやぁ、もうホラー映画そのものの光景でさぁ……」


--そ、そ……。


 カノガミがプルプル震える。


--それじゃあああああああぁぁぁ!!


「ど、どうした急に?」


--秋菜、ウチらにを貸してくれ。


「鍵? どこの鍵だ?」


--じゃ!!



◇◇◇


 3ヶ月前、小宮と入った封印の祠に再びやって来た。


 俺達が入った時と変わらず異様な空気を醸し出す洞窟の中へと入り、最奥のカミ棚へと到着する。


「それで、どうするんだよカノガミ?」


--彼ノがみを封印した2枚の封印鏡。その鏡には彼ノがみの力の名残が残っておるのじゃ。そこから彼ノがみの記憶と知識を読み取る。


「そんなことできるのか?」


--できるはず。


「分かった。早速やってみてくれ」


--ジュン。


「ん? なんだカノガミ?」


--て、手を繋いでくれんかの? やっぱり、まだ暗闇が怖い……。


 カノガミのヤツ……そうだよな。コイツが封印されていた場所だ。相当無理をしてくれているんだな……。


「ありがとな。こんなに頑張ってくれて」


 カノガミの手を取った。


--ジュンの手……あったかいの。安心する。


「カノガミの手も……」


「……重要な場面のところ申し訳ないが、早くしてくれないか?」


 後ろを振り返ると芦屋秋菜が睨んでいた。


 ……。


 怖かった。


--コホン。ではいくぞ。


 カノガミが目を閉じると、うっすらと体全体が光を放つ。


 長い髪が伸びてウネウネと動く。そして、封印鏡を包みこんだ。


 ……。


--お、彼ノがみの記憶が流れ込んで来たのじゃ。


「おぉ! 成功か!」


 突然、カノガミの光が強くなり、表情が苦痛に歪む。


--ジュ、ジュン……手を……。


 繋いだ手を強く握る。


「が、がんばれ!」


--う、うむ。もう少し、じゃ……。


 カノガミの光が増していく。先ほどまでの薄い光が、洞窟を照らすほど眩くなっていく。


 あまりの眩しさに目を開けていられなくなった頃、再び光は弱まっていった。


--はぁ……はぁ……やった。方法が見つかったのじゃ。


 力が抜けたのか、カノガミが崩れ落ちる。それを抱き止めるように支えた。


「ありがとうカノガミ……」



「時間が無い。早く外に出るぞ」



--なんじゃあ。秋菜は空気が読めんヤツじゃのぉ……。

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