たった1つの方法。なのじゃ!
第32話 1/4
--ジュ、ジュン……消えとうない……。ウチ、もっとジュンと一緒にいたか……。
「カノガミ?」
--さ、最後にお願いを聞いて欲しいのじゃ……。ウチに「愛してる」と言ってくれ……そして、く、くちづけを……。
「……」
--は、早く! ウチが消えてしまう前に…… く、くちづけを……。
「あー……お前達、何をやっている?」
扉の方を見ると、そこには
--なんじゃ! いいとこじゃったのに!
「客間で待っていろとは言ったがイチャついていいとは言ってないぞ」
--「消えるカノガミと最愛のジュン」ゴッコじゃ。暇じゃったからのぉ〜。
「カノガミ……なんかお前色々とストレートになったなぁ……」
--そう恥ずかしがるでないジュン♡ ウチらは抱き合って一夜を明かした男女ではないか♡
「は? お前らそんな不純な関係だったのか……?」
「ち、違うから!? いや、その、とにかく俺は何もしてないから!!」
--もう♡ 完全に否定せんところがジュンらしいのぉ♡
「ちょっ!! お前もう黙ってろよ!!」
「……やっぱりコイツらぶち○すか」
「ヒィィィィ!? やめてぇぇぇ」
「……とにかく、ばば様が会ってくれることになった。私に着いてこい」
◇◇◇
芦屋秋菜に連れられた先は応接室のような場所だった。
「お前ら。ばば様に失礼の無いようにしろよ」
--ウチらのどこに失礼な要素があるのじゃ?
お前じゃい!!
扉が開くと、1人の老女が入って来た。
この人がばば様……芦屋家の現当主か。夏樹の話で聞いたことはあるけど、こうやって会うのは初めてだ。
「秋菜から話を聞きました。そちらが
「ばば様……ですよね? 俺達は友達を救いたいだけなんです」
「安心しなさい。貴方達をどうこうするつもりはありません」
「え? 俺達は裁かれるって……」
「今の私達では、もう1人の片割れを封印するには多くの犠牲を払うでしょう。そうであれば、あなた方にも協力を頼んだ方が被害は少ないと考えます」
--協力ってどうするんじゃ?
「片割れの再封印に協力して下さい。無事封印することができればアナタだけは見逃してあげましょう。我らの監視下に置くという条件付きですが」
-- ……ダメじゃ。協力はできん。
「……力の弱いお前ならこの場で封印することもできるんだぞ」
芦屋秋菜がカノガミを睨みつける。その眼光の鋭さに思わず冷や汗が出た。
--ウチはジュンと約束したのじゃ。みんなを助けると。その為にはみーちゃんを封印してはいかんと思う。
「カノガミ……」
「お前に何か策はあるのか?」
--無い!
無いんかーーーーい!?
--しかし、何かあるはずなのじゃ! 必死に思い出してみた! ウチのぼんやりとした記憶の中に、みんなを救う方法がある気がしておる!
「仮にお前達が友人を助けたとして、私達はどうなる? 認めたくは無いが、あのクソガキがお前らの友人を消したことでこの世界は生まれたんだろ?」
--それは大丈夫じゃ、この世界とウチらの世界は別れて間もない。成功すれば2つの世界は融合する。各世界におる生物達も意識が統合されるじゃろう。どちらかが消えるということは無い。
「カノガミ……なんだか急に賢くなった気がするな! タイムパラドックスすら知らなかったのに」
--う、うううるさいの! ウチの専門ジャンルじゃぞ一応!? ……できれば芦屋の書庫を使わせて欲しいのじゃ。芦屋の記録書なら、
「私がお前に協力する理由があるか? 夏樹とかいう兄が復活すれば、私が当主になることも無くなるわけだが?」
う、それは確かに芦屋秋菜にとっては不都合かもしれないな……。
--秋菜。言いにくいのじゃが……。
「なんだ?」
--あのな。秋菜が生き残ったのは、夏樹が秋菜を庇ったからなのじゃ。
「……」
--みーちゃんが手をかざした時、夏樹が秋菜のことを突き飛ばしたのじゃ。恐らくじゃが、夏樹はみーちゃんのことが見えておったのじゃろう。
夏樹……あの時「見える」と言ってたのは本当だったのか。てっきり比良坂さんの前で調子に乗っていたのかと思ってた。
--どうじゃ秋菜? オヌシには協力する理由は無いかの?
「お兄様……か」
「秋菜。ここから先はお前の心がおもむくままに動きなさい。このおいぼれはその選択だけを見守りましょう」
「ばば様……分かりました。外輪準、カノガミ。お前達に協力してやろう」
--感謝するのじゃ。
「ただし、あのガキの封印が解けるまでだ。それまでに突破口が見つからなければ再封印に協力してもらう」
「分かったよ。他に方法も無いしな。カノガミもそれでいいだろ?」
--よいぞ。
「ではついて来い」
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