第31.5話

 芦屋の屋敷へと向かう車の中。


--ノコノコついて来て良かったのか?


 どうせ比良坂さんに話を聞いた後は芦屋の屋敷を訪ねるつもりだったんだ。好都合だよ。


 ま、まぁ……連行されるとは思わなかったけど。



 なんとかなるよな。多分……。



 隣を見ると芦屋秋菜と目があった。


「何をジロジロ見ている?」


「あ、いえ、別に何も……ちょっと俺の知ってる秋菜ちゃ……芦屋秋菜と違うなぁと思って」


--違いすぎじゃ! まるでヤ○ザじゃぞコイツ。


「カノガミとか言うヤツ。私がお前の声を聞こえないとでも思っているのか?」


--な、何故ウチの声が聞こえるんじゃ!?


「私はさっきあのクソガキと話していたと思うが?」


--あ。


「お前も封印かな」


--嫌じゃああああぁぁぁ!! 許しておくれえええぇぇ!!


「カノガミは封印がトラウマになってるんだ。冗談でもやめてくれ」


--ジュン♡


「ふん」


「……」

「……」


「……お前達の世界の私はどんなだった?」


「え? うーん……。『お兄様とのラブラブ演習』をやってたかな」


 ラブラブというより死と隣り合わせの演習だったけど……ソド子さんとか……。


「な!? 『ラブラブ』!? なんだそれは!?」


--それはちょっと言えんのぉ〜。


 言ってやれよ!


--コイツ男っ気無さそうじゃからの。嫌がらせじゃ♡ 仕返しじゃ♡


「聞こえてるぞ」


--ヒッ!? しまったのじゃ!?


「マヌケな奴」


--きいいぃぃ! 腹立つのぉ!?


「これ以上状況悪くすんな。堪えろって」


--でも、腹立つと言えば、前の世界の秋菜もめっちゃ腹立ったの。


 お前はキレすぎておかしくなったくらいだしな。


 あの時の光景が脳裏に浮かぶ。


 カノガミを迎え打つ秋菜ちゃんの姿が。


 秋菜ちゃんが何故か発した一言が。


 「来いっ!! 腐れ悪霊が!」


 ……。


 向こうの秋菜ちゃんも、こっちの芦屋秋菜になる可能性十分あるな……。



 もう一度隣を見てみる。



 芦屋秋菜は車の外を見ながら呟いた。



「お兄様とのラブラブ演習……か」

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