アイツVSアイツ。なのじゃ!

第31話 1/1

「おかしいな。この学校の霊は全て除霊したはずなんだが? なぜガキの悪霊がいる?」


 秋菜ちゃんが手を払いながら言う。


「……アナタ。私にこんなことしてただで済むと思ってるの?」


 粉まみれで真っ白のみーちゃんには、あきらかに怒りが滲んでいた。


「はぁ? この芦屋家、芦屋秋菜の庭で悪霊がイキがるなよ?」


 秋菜ちゃん!? 次期当主!?


--キャラが違うのじゃ!?


 ……そうか! この秋菜ちゃんはの秋菜ちゃんだ!


--じゃから次期当主なのか!


「……あの時逃した芦屋の小娘か。ちょうどいい。あなたにも消えてもらうわ」


 ダメだっ! 秋菜ちゃんまで消されるわけに訳には……。


「秋菜ちゃん! その子は白水のカミサマだ!! 君も知ってるハズだ! 早く逃げろ!」


「……」


 秋菜ちゃんが鋭い目でこちらを見てくる。


 怖っ!? もしかして……この世界だと初対面だったのかも。


「オマエ、2年の外輪準だろ?。白水の歴史をよくご存知で。でも残念。この霊はカミサマなんかじゃないだろ。弱すぎ」


 秋菜ちゃんが持っていた通学カバンを下に置いた。


「私を愚弄するつもり?」


「あ、秋菜ちゃん! 君までリープさせられるぞ! 早く逃げるんだ!!」


「後悔しても遅いわ」



 みーちゃんが手をかざす。



「……!? リープが使えない!?」


 みーちゃんが自分の手を見つめる。


--そ、そうか! ウチが力を奪ったからじゃ!


 おぉ! やるじゃんカノガミ!! 天才!!

--えへへ。照れるのぉ〜。


「今、お前が被った粉には私の霊力が込めてある。使


--え。


 カノガミのおかげじゃ、なかった。


「しばらくお得意の能力は使えん。諦めるんだな」


 秋菜ちゃんがしゃがみ込んで通学カバンをゴソゴソと漁る。


「わ、私はカミだぞ? 能力など使えなくても人間に負けるか」


 あ、みーちゃん怒ってるわこれ……。


「あー。言うんだよなぁ」


 秋菜ちゃんはゆっくりと立ち上がって頭をかいた。


「弱い霊ほど自分のことを『カミ』だの『化身』だの大きくみせたがる。デカイ言葉を使おうとするなよザコ」


 あ! みーちゃんの顔がみるみる変わっていく! 鬼の形相になってく!?


「ざ〜こ♡ 低級♡ 能力も使えないクソガキサマ♡」


 秋菜ちゃん!? 有利だからってそんなに煽らないで!!


「き、き、き、き、きさ、きさままま」


 みーちゃん!? キレすぎて言葉がちゃんと出てないよ!?


「タイマン張りたいなら買ってやるよクソガキ」


 秋菜ちゃんが構える。


 え? 何その構え? なんで手をちょっと開いてるの? あれか? 掴み系の技出すあれか?


「八つ裂きにしてやる!!」


 ヒィィィィ!? みーちゃん凄いオーラだ!?


 みーちゃんが床のタイルが吹き飛ばしながら走る。


 秋菜ちゃんの眼前にブチ切れみーちゃんが迫る!


 ダメだっ!? やられる!?


 思わず目を閉じた。


 ……っ!


「プライドの高いカミサマは人間の安い挑発にすぐ乗っちゃう」



 え?



 瞬間。



 乾いた音が部屋に響く。


 

 目を開けてみると、そこには……。



 秋菜ちゃんがみーちゃんの顔を



「なにこれ? こんなのが攻撃のつもり?」


 みーちゃんの表情が怒りから戸惑いに変わる。


「これな〜んだ?」


 秋菜ちゃんが満面の笑みを浮かべた。


だよクソガキ♡」


 よく見てみると、みーちゃんの顔は2で挟まれていた。


 小宮が言っていた。『あの世とこの世を行き来するノガミは、そのどちらでもないに封印された』って。


「え? う、嘘……いや、嫌ぁ……」


 凄い勢いでみーちゃんの体が吸い込まれていく。


「嫌あああぁぁぁぁ!!」


 みーちゃんは小さな手鏡に封印されてしまった。


「封印完了」




 す、すげえええええぇぇぇぇぇ!


 なぁカノガミ!


-- ……。


 カノガミ?


--あ、ちょっとウチ用事を思い出したのじゃ。


 ちょ! 逃げるなって。



 ……。



 決着から数分後。


 秋菜ちゃんが手鏡に何本ものヘアゴムを巻いていく。


「何してるの?」


「私の霊力を込めたヘアゴムで封印を強化してる。ちょっとでも封印が持つように」


「ちょっとでも……って、もう大丈夫なんじゃないの?」


「馬鹿言うな。こんな100均の手鏡なんてすぐ破られる。もって5日ってとこか」


「え!? そうなったら……」


「あのガキが出て来たら私は八つ裂きにされるだろうな」


「八つ裂きって……秋菜ちゃんめちゃくちゃ強いじゃん。もう一回封印できないの?」


「次は勝てない。今のは不意打ちだから勝てた。凄い霊力を感じて準備して来たからな……これでよし」


 秋菜ちゃんはヘアゴムを巻き終わったのか、手鏡をカバンにしまった。


「これからどうするんだ?」


「これを屋敷に持って行き対処を考える」


--凄いヤツじゃ。分析力、冷静さ、それになんと言っても自分の心情を感じさせない不敵さ……まさに芦屋当主に相応しい。夏樹とはえらい違いじゃ。


 ちょ、褒め言葉が全部夏樹に刺さるんですけど!


「さて、どうして彼ノがみのことを知っていたのか教えて貰おうか?」



◇◇◇


「ふぅん。外輪準とそこのカノガミという女の霊は他の世界から来たと」


--ウチは霊じゃないぞ!


 みーちゃんの二の舞になるからやめろ。


「なんとか俺達は友達を救いたいんだ」


「なるほどな。それじゃあ芦屋の屋敷に来てもらう」


「ありがとう! 秋菜ちゃん!」

--昨日の敵は今日の友じゃな♡


「何勘違いしている大罪人が」


 「え?」

--え?


「お前らは芦屋の家の者として裁かせてもらう。死んだ方がマシだと思わせてやろう」


 「え?」

--え?


「特に、外輪準」


「え?」


「この芦屋秋菜を秋菜などとふざけた呼び方をした事、後悔させてやる」


「え?」


「オマエが泣いて詫びを入れるまでボコボコにしてやるから覚悟しておけ」



「ええええええええええ!?」



 速攻で泣いて詫びを入れた。

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