131回目の正解。なのじゃ!

第36話 1/2

 芦屋秋菜あしやあきなの提案で、極力被害が出ないように芦屋の屋敷から少し離れた山の中でみーちゃんと戦うことになった。


 芦屋秋菜が開けた広場にみーちゃんを封印した手鏡を置く。


「来る」


 手鏡が粉々に砕け散り、紫色のモヤが現れる。


 モヤが集まり、徐々に人の形となっていく。カノガミとは異なり、それは小さな女の子の姿へと変化していった。


「……」


 みーちゃんは怒り狂ってすぐに攻撃してくると思ったが、静かに佇んでいるだけだった。


「お早いお帰りで。クソガキ」


「芦屋秋菜……もう二度と同じ手は喰らわないわ」


 みーちゃんの表情は分からない。ただ、彼女の声のトーンからひどく冷静なのだけは分かった。


「思ったより冷静だな」


「再び閉じ込められた中で大切な物を思い出しただけよ。ただ、あなたの寿命はもういらないわ。舞にとって邪魔なだけ」


「へぇ。じゃあ私をどうするんだ?」


「言ったでしょ? 殺すわ。この『かのがみ』に二度目の封印という屈辱を味合わせた女」


 そう言うと、目の前からみーちゃんが消えた。


「く……っ!?」


 芦屋秋菜が後ろへ飛ぶ。


 しかし、次の瞬間。


 


「がは……っ!!」


「違うのよ。全く違うの。人間とカミではこれほど違うの。ごめんなさい。この前は私が油断してしまったから夢を見させてしまったわね?」


 みーちゃんの声だけが当たりに響く。


 芦屋秋菜は地面をのたうち回った。



「もう1つごめんなさい。八つ裂きの約束は破るわね」


 みーちゃんが再び姿を現す。やっと捉えられた彼女の顔からは、一切の感情が感じられなかった。


「お前のの時を止めた。苦しみながら死ね。小娘」


 みーちゃんが芦屋秋菜の横を通り過ぎようとした時。


 芦屋秋菜がみーちゃんの服を掴んだ。


「へぇ。小娘とは言え流石に芦屋の血を引くだけはあるわね……だけど、これは何?」


 みーちゃんが掴まれた腕を払い踏みつける。


 踏み付けられた手から手鏡が落ちた。


 みーちゃんの目つきが変わる。


「貴様は全く同じことをしようとしていたわけ? 私に向かって。それがどれほど私の怒りを買うか想像はしたの?」


 みーちゃんが指を鳴らす。


 芦屋秋菜が大きく息を吸った。


 またみーちゃんが指を鳴らす。


 吸った息を吐くことができずもがく。


 芦屋秋菜は子供のように体を丸め、喉を抑える。目は見開かれ、顔は真っ赤になっていく。そして……苦しさからか、涙を流した。


「お前は何も分かっちゃいない。誰と向き合っているのか。私が愛する人間以外この世にいるお前らはゴミだ。ゴミ。どうしようもないクズ。私が指を鳴らすだけで簡単に許しを乞う。そのくせ悪知恵だけは働く。お前達は散々私を利用した挙句チヨを殺した。今度は私から舞を奪うつもりだろう?」


「う……あ……」


 芦屋秋菜が何かを言おうと声を出す。しかし、息ができず上手く言葉にできないようだった。


「何? 言いたいことがあれば言ってみるといい。言った瞬間また止めてあげるけど」


 みーちゃんが再び指を鳴らした。


「……か」


「え?」


「ばーか……」


「貴様……」


 みーちゃんが完全に


 今だ!! カノガミっ!!


 みーちゃんの光の玉が人の形になった。



--みいいいいいぃぃぃちゃああああああん!!



 カノガミが猛スピードでみーちゃんへと落下する。



「な!?」



 涙でぐしゃぐしゃ、真っ赤な顔で天を仰いだ芦屋秋菜が呟いた。



「……お仲間が来たよクソガキ♡」




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