第23話 2/2

「秋菜ちゃああああん!? ウチの、ウチの子に何してるんすかぁぁぁ!?」


「準さん。何をそんなに慌てているのですか? もう一体の悪霊が準さんを狙っていたので除霊しただけですが?」


「あの子は悪霊じゃないですうぅぅぅ!!」


「何を意味不明な……も、もしかして準さんは既に取り憑かれて!?」


「いや、取り憑かれてはいたけどもぉぉぉ! 違うんだってぇぇ! 助けようとしてくれてたんだってぇぇ!!」



--ふっふっふふふふふふふ……。



 どこからかカノガミの声が聞こえる!?


 霧散したモヤが再び集まり、人の形になっていく。



--ふはははははは……。



 良かった! 生きてたんだなカノガミ! 心配して……。





--ウチをのぉ。ここまでのぉ。コケにしてくれたのはのぉ。オヌシが初めてじゃ……。



 カノガミ?



--憎いぃぃぃ!! 秋菜が憎いいぃぃぃ!? 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いィィ!!!!!! なんじゃこの湧き上がる感情はああぁ!? 



 カ、カノガミさん……?



--あ"ああああああああああああああ!!



 カノガミからドス黒いオーラが溢れ出す。



 だ、大丈夫なのか? カノガミのヤツ……。



 あ、急にオーラが消えた。



--ふぅ♡



 憎しみが発散されたのかな? 




 良かったぁ。




--こぉんクソガキャアアアアア!! ぶっ○したらああああああああああああああああああああああアああああああああああああああああああああああああアああああああああああああアあああああああああああああ!!



 めっちゃキレてますやん……。



 カノガミが秋菜ちゃんに向かって全速力で走る。


「ちっ! しつこい霊ですね!」


秋菜ちゃんが構えた。


「2人ともおおおぉぉぉ!? ソド子さんが迫ってるよおおぉぉぉ!? 何してんのおおぉぉぉ!?」


 ほらっ! ソド子さんがもう目の前にっ!?


 !?


--邪魔じゃあああああああああ!!


 カノガミがソド子さんの顔面に強烈なパンチを叩き込む。



 ソド子さああああああああん!?



 ソド子さんは縦に3回転して頭から地面に落ちた。


 辺りに骨が折れたような嫌な音が響く。


 ソド子さんが辺りを見回す。自分の身に何が起こったのか分からないみたいだ。


 カノガミがソド子さんの顔面を鷲掴みにする。


--ソド子ぉぉぉぉぉ……秋菜のタマァ取る為じゃぁ。テメェの力頂くのじゃあぁぁ……。


 ソド子さんはもはや返事もできず光となってカノガミに吸収された。



「な……っ! 霊を……食ってる……!?」


 

 秋菜ちゃんが驚愕の表情を浮かべた。



 え?


 食ってないよ?


 秋菜ちゃんにはどんな風に見えてるの?



--イッヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ。これでぇ……ソド子の力でぇ……人間ぶん殴れるんじゃあ……。



 あ、カノガミ……キレすぎておかしくなってる。



「仕方ありません。一か八か右手に全霊力を集中して迎え撃ちます」



 秋菜ちゃんの右手が眩い光を放つ。


 カノガミが秋菜ちゃんに飛び掛かる。


--○ねえええええええ!! 秋菜あああああぁぁぁ!!


「来いっ!! 腐れ悪霊が!」


 秋菜ちゃんんん!? さらに煽るのはやめて貰えるかなああぁぁ!?



 ダメだっ!? もう見てられない!?



 目を閉じた。



 物凄い轟音が響く……っ!



 その後。


 

 辺りが静寂に包まれる。




 恐る恐る目を開ける



 そこには……。



 カノガミの顔面に深々と拳を突き立てた


 恐らくカウンターの形で拳が入ってしまっていたのだろう。


 カノガミは、立ったまま完全に固まっていた。


 カノガミの体から、エネルギーが抜けていく。顔面のへこんだソド子さんが成仏していくのが見える。


 ソド子さん。お気の毒に。


 どうか、安らかに。


 俺が言うのもアレだけど。



--う。



 おぉ!? カノガミ!! 生きてるか!



--う"えええぇぇぇん! この女がいじめるううぅぅぅ!!


 カノガミが号泣しながら抱きついてくる。



 ……。



 恐らく、だが。


 13歳の少女に、完膚なきまでに叩きのめされたことが、カノガミのプライドをズタズタに引き裂いた。


 そして、受け入れ難いその事象が、カノガミを幼児退行させてしまったのだろう。


「おぉよしよし。お前は良くがんばったよ」


--うううぅぅぅ。ジュン〜。


「準さん? 悪霊など慰めてどうされたのですか?」


「秋菜ちゃん。コイツは悪霊じゃないよ」


「何を言って……あ!?」


 秋菜ちゃんが深々と頭を下げる。


「分かってくれた? コイツはね。俺のト」

「ごめんなさい!! 準さんが使役していた使だったのですね……そうとは知らずに私は……」


 う、うぅん? この子もバカなのかなぁ?


--ジュン〜。もうコイツ嫌じゃあ。早くお家帰りたいいぃぃ。

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