第21話 5/5

「と、こういうことが書いてあります♪」


「なんで昔話風なんだよっ!」


「だってぇ〜。みんなこうした方が分かり安いでしょ?」


 小宮と夏樹が何か言っている。けど俺は頭に入ってこなかった。


 ノがみ? 人を消した? なんだよ。俺が知ってるカノガミと全然違うじゃん。一体どういうことだよ。


 横を見ると犬山が何かを考えてる様子だった。


「犬山? どうした?」


「いや、今の話に気になる所があってな」


「どこの部分〜?」


「最後に違和感があるんだ。村長が芦屋を呼んだのは自分の納める村を守る為だったはずだ。なのに、最後には芦屋が村を納めることになってる」


「うん。それは私も思ってたよ。でも、何回読み返してもこうやって書いてあるんだよね〜」


 小宮と犬山がうんうん唸る。昔の話だし、今では確認のしようがないよな。


「比良坂さん。カミサマの話どうだった? 俺はなんだかピンと来なかったなぁ」


「……」


 あれ? どうしたんだろ?


 比良坂さんは青白い顔をしていた。


「比良坂さん大丈夫? 気分でも悪いの?」


「外輪君……あのね、私ね」


「そういやさ〜ノがみってどうやって封印してんの? 俺その辺良く分かんなくてさ」


 比良坂さんが何かを言おうとしたが、夏樹の質問にかき消されてしまった。


「なんかね。鏡を使うらしいよ」


「そこまでは分かるんだけどさ〜。理屈がよく分かんないっていうか」


「彼ノがみはあの世とこの世を行き来するらしいの。だからそのどちらでもない世界……」


 小宮は手を合わせる真似をした。


「鏡を合わせて、合わせ鏡の世界に閉じ込めたんだって」


 合わせ鏡か、アレって無限に続く回廊みたいな感じだよな。


 それにしても……「あの世とこの世を行き来」か。それってタイムリープに似てる気もする。


「へぇ〜。やっぱり小宮は物知りだなぁ」


 夏樹が感心したように頷いた。


「なっつんちの本に書いてあったんだけど……」




「しっかりして下さいお兄様! 次期当主として実に嘆かわしいですよ!!」


「うぉ!? 秋菜!? いつの間に」


「資料室の前を通りかかりましたら茉莉まつりさんのお話が聞こえてきたので。みなさん夕食の準備が整いました。食堂にお越し下さい」


--ごはん!? ごはんか! うひょーっ!


 カノガミが目を覚ましたみたいだ。光の玉が俺の周りを飛び回る。


「あら、また邪気が」

--ふぎゃっ!?


 秋菜ちゃんがカノガミをはたき落とした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る