第18話 2/5
「女子はあっちの別邸を使ってくれ」
夏樹が指差すと使用人の女性が1人、小宮と比良坂さんを案内していった。
「俺達はこっち」
男3人で長い渡り廊下を歩く。和風建築な建物は、階層こそ無いものの、とんでもない広さだった。小宮達の向かった別邸にはテニス用のコートもあると言っていた。
「それにしても想像を超える屋敷だな」
辺りを見回しながら犬山が言う。いや、俺だって驚いてる。まさかこれほどまで広いとは……。
「俺達と同じ中学に通ってるのが不思議なくらいだなぁ」
「ばば様から言われてんだよ〜。『
--ふーん! なんじゃ立派な所に住みおって! ウチは何百年真っ暗な洞穴に閉じ込められてたと思うんじゃ! 面白くないのう!
光の玉の状態でもカノガミがプリプリしてるのが分かった。
そう言うなって、後でコッソリ探検しようぜ。
--それは面白そうじゃの! 憎き芦屋家の秘宝。ウチが奪って見せようぞ!
いや、それはやめとけよ……。
「お兄様!」
急に後ろから大きな声が聞こえてきた。
「どういうことですか!? 今日は
「いやぁ〜すまんね〜秋菜。お兄ちゃんはな、友達と青春を謳歌するんだ♪」
「この子が例の?」
犬山がこっそりと話しかけてきた。
あ、そうか。犬山は初対面だったな。
「この子が夏樹の妹の
「そうか。随分な剣幕だな。なんだか悪いことをした気がする」
「気にすんなよ犬山。俺達はただ友人の頼みを聞いただけなんだしさ」
「私とお兄様のラブラブ演習がぁぁぁ!!」
秋菜ちゃんが地団駄を踏む。え? ラブラブって何?
「気にすんな外輪! 秋菜のことだから絶対悪い霊を放つつもりだぜ〜? 演習なんて無い方がイイって!」
「なんですかその言い草は!? 秋菜はお兄様の将来を心配して! ……いえ、守る物がある状況というのも有りなのでは?」
秋菜ちゃんがボソボソと何かを喋る。
「そうですよ。ご友人がいる中での危機的状況……仲間の死が目前に迫った状況の方が力は覚醒しやすいかもしれません……であれば……アレを……ああして……」
なんか不審な内容が聞こえた気がするんだけど……。
「時に準さん」
「な、何?」
秋菜ちゃんがツカツカとこちらへ向かってくる。
え? 俺、秋菜ちゃんに何かやった?
「肩に邪気がついておりますよ」
--ふぎゃっ!!
秋菜ちゃんが俺の肩に止まっていたカノガミの光を手で払った。
--うおおおぉぉ! 止めてくれええぇぇ!
カノガミは廊下をバウンドして転がっていった。
「それでは私は用意する物がございますので失礼します。また夕食の時にお会いしましょう」
それだけ言うと秋菜ちゃんは廊下の奥へと消えていった。
「夏樹。秋菜さんの言葉、俺は不安になってきたのだが」
「心配すんなって犬山〜。流石に客に危険が及ぶようなことはしないって!」
夏樹のヤツ、能天気だなぁ。
--ぐぬぬ……おのれ芦屋……。おのれ秋菜ぁ……。
ふらふらと戻ってきたカノガミが何か言っていた。
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