逢着編。ってなんじゃ?

潜入!芦屋屋敷!なのじゃ!

第17話 1/5

 カノガミと出会って3ヶ月が過ぎた。



「頼むみんな! 今度の連休、俺ん家の屋敷に泊まりに来てくれ!」


 学校が終わるやいなや、部室に駆け込んで来た夏樹が言った。


「急にどうしたのなっつん?」


「お前の家は訪問者お断りではなかったか?」


 小宮も犬山も驚いている。


 --なんで夏樹の家は入ってはいかんのじゃ?


 夏樹の家、芦屋あしや家の屋敷は白水の大地主宅ということで、関係者以外の立ち入りを拒んでいたんだ。


「今度当主のばば様が遠方に出るってことで家を空けるんだよ。その間使用人と俺と妹だけになる」


「それの何がいけないんだよ?」


「妹の奴! 俺に霊能力が無いからって、これを機に強化演習するとか言ってるんだよ! 何されるかマジで分からん……頼むみんな! ウチでお泊まり会やってくれえぇぇ! 勉強合宿とか適当な理由つけてさぁ!」


 夏樹が深々と頭を下げた。


「うーん。男子の家にお泊まりって親許してくれるかなぁ」


「そこは別邸もあるからさ! 後、小宮だけにならないように他の女子も誘って貰ってもいいから!」


「俺は構わんぞ」


「犬山ぁ……お前ってやつは……」


 俺も行こっかな。どうせ連休暇だし。


--のう。ジュン。


 なんだ?


--今、『芦屋あしや』って言った?


 あれ? お前知らなかったっけ? 夏樹は芦屋の跡取りだぞ。


--な、なんじゃってええぇぇぇ!? な、なんの力も持たない情け無い男子おのこの夏樹が、あの芦屋の男じゃと!? しかも跡取り!?


 あ、夏樹ってカミサマ公認で霊能力無いんだ……。


--ウチは「最近の子はこういうものかなぁ? ウチとは世代が違うしなぁ」と思っておったが……。


 お前と同じ世代のヤツなんていないだろ!?


--ジュンには話しておったかの? 芦屋はウチを封印した宿敵なんじゃ。


 そういやカノガミの封印を解いた時に小宮が教えてくれたな。


--ウチに敵地に乗り込めと言うんか?


 ヤバッ!? このままだとカノガミとグダグダ過ごす連休になっちまう!?


 ほ、ほら。夏樹がそれほど力が無いってことは、芦屋家も弱ってるんじゃないか? 行っても大丈夫だって!


--……確かに、あの芦屋家が没落した様を見物するのも一興では、ある。


 経済的には没落してないけどな。


--よし! 行っても良いぞ!



「おう夏樹! 俺も行くぜ!」


「ありがとおおおぉぉぉ!!」


◇◇◇


 そして、連休初日--。


「あ、外輪君。おはよう!」


 な、なななななななんで比良坂さんが待ち合わせ場所に!?


「ふっふっふ。私に感謝してくれたまへよ。ソトッちくん?」


 小宮が耳打ちして来た。


「小宮様ぁ。このご恩は一生わすれませぬ!」


「では、恩人である私に貢物を捧げるのじゃ♪」


「え? あ、はは……」


「ちょっとぉっ! 何その反応! 私が滑ったみたいじゃーん!」


 そんな話し方されると焦るって……。


--なんじゃ? ノってやれば良いのに。 小宮が可哀想じゃろ?


 お前のせいじゃいっ!!

 

「犬山は何か遊べる物持って来た?」


「推理カードゲームを持って来た」


「いや! それめっちゃお前有利だよね!? ……ところで、当の本人はどこにいるんだよ?」


 待っていると1台の車がやって来た。



 --胴体の長い車じゃのぉ。


 --長い。


 --長いの。


 --長すぎじゃろ!?


「やぁ〜みんな。今日はよく来てくれたね〜」


 最後尾の窓から夏樹が顔を出した。


「夏樹!? お前……この車どうしたんだよ!?」


「いやぁ〜いつもは厳しいばば様だけど、孫の青春の1ページに協力してくれたんだよね〜」


 協力のレベルが違う!?


「ま、早速乗ってよみんな」


 こうして俺達は芦屋家へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る