第14話 2/3

--頂くのじゃ! あ〜ん♡


 蝶野先輩の放った光は、クッキーを食べようとして大口を開けていたカノガミを直撃した。


 直後。


 「パァンッ!!」という破裂音と共に。


 カノガミが持っていたが破裂した。


「クソッ! 避けられてしまったか! しかし、クッキーを浮かせて身代わりにしたのにはどんな意味が……? まさか、周囲に被害が及ぶことを防ごうと?」


 俺は何もやってないから!? ただカノガミがクッキー食おうとしてただけだから!?


 カノガミ! 大丈夫か!?


 おい! カノガミ!!


-- ……。


 カノガミは人間態のままへたり込んで動かない。まさかやられたのか……?


「クソッ!? 蝶野先輩! 俺達が争う必要なんてないじゃないですか!?」


「これは僕のプライドを傷つけた君に責任がある」


 再び蝶野先輩が額にエネルギーを溜める。


「今度こそ受けて貰うよ。この僕のを……っ!」


「え? 魔貫○殺砲……ですよね? ピッ○ロの……」


「な……っ!? 僕はパクってない!! パクってないぞ!! ちゃんと鏡の前で研究したんだ! このカッコいいポーズを!!」


「「「蝶野先輩……鏡の前であのポーズ決めてたの……?」」」


 女子達がざわつく。


 蝶野先輩はまた全身をプルプルと震わせた。


「そ、外輪くん……君というヤツは僕に何か恨みでもあるのか……?」


 めっちゃ怒ってる……。


 蝶野先輩が指先を向ける。


「こ、今度はエネルギーの加減をしない……どうなるか僕は知らないよ……」


「ワザとじゃないんですぅぅぅ!! 謝るから許してぇぇぇぇ!?」


「もう遅いっ!!」



--貴様。



 カノガミがゆらりと起き上がる。



 そのオーラは禍々しく。声のトーンも低い。まるでいつものカノガミじゃないみたいだ。


--カミであるウチへの貢物を破裂させるとは……。


 え、貢物じゃないよね? 勝手に食おうとしてたクッキーだよね?



--ゆ"る"さ"ん"っ!!



 カノガミが蝶野先輩に向かって走る。



 俺の脳裏にモギオ君の悪夢が蘇る。



 ダメだカノガミっ!! 蝶野先輩はだぞ!? モギオ君のように叩きつけたら死んでしまう!?


 


 ん? 人間?



 カノガミって確かよな?


 おぉ! じゃあ何も問題ないじゃん!




 焦って損したぁ。




--それはの話。は……。



 カノガミが蝶野先輩のをしっかりと掴んだ。


--掴めるんじゃあああああぁぁぁ!!



 直後。



 「パァンッ!!」という破裂音と共に。


 蝶野先輩のが弾け飛んだ。



 ……。



 調理実習室は静寂に包まれる。



 誰もが思考停止していた。



 世界の変化を受け入れられずにいた。



 俺達の目の前に蝶野先輩が現れたという変化を。





「「「きゃあああああぁぁぁ!?」」」




 せきを切ったように、料理部女子の声が上がった。しかし、それは先程の黄色い声援ではなかった。


「蝶野!? 神聖な調理実習室で何を!?」


 料理谷先輩が叫ぶ。


「ち、違う!? 僕じゃない! 僕の力じゃない!?」


 蝶野先輩が叫ぶ。


「外輪〜ここに居たのかよ〜。えぇ!?」


 調理実習室にやって来た夏樹が叫ぶ。



--カノガミ奥義。抹殺陣。じゃ。



 カノガミは腕を前でクロスしてポーズを決める。



 ……。



「蝶野!? なんて破廉恥な!?」

「違う違う違う!! 僕は被害者だ!!!」

「きゃあああ!! 先生を呼ばないと!!」

「待って! 先生を呼ぶのは待ってぇ!!」

「外輪これはどういうことなんだよお!?」

--鮮やかにキマってしまったのぉ〜。



 ……。



 あーあ。



 もうめちゃくちゃだよ。

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