能力者現る!なのじゃ!

第13話 1/3

 「じゃ! 今日、私と犬山くんは取材で戻らないから部室の戸締まりよろしくー♪」


「よろしく頼む」


 軽快な音と共に扉が閉まった。2人も部員が消えたことで部室の人工密度は一気に減少した。


「外輪くん。小宮と犬山が出ていったでおじゃる」

「夏樹くん。鬼の居ぬ間になんとやらでごじゃる」


「「今日はサボり放題でごじゃるおじゃるっ!!」」


--なんじゃ!? 楽しそうな雰囲気じゃなぁ! ウチも混ぜてくれ♡


 ちょ、お前の話し方が混ざるとややこしくなるだろ。


「早速、茶と茶菓子を用意せねばっ! 外輪。お茶入れてくれ♪」


「あいよ♪」


 茶菓子の棚を物色する夏樹を横目に電気ポットを持って外に出た。


 そういや料理部の女子達が依頼の御礼でクッキーを焼いてくれるって言ってたな。水を汲むついでに寄ってみるか♪


--クッキー? クッキーって言った? ウチも食いたいのじゃ♡


 分かってるよ。コッソリ食えよな〜。



◇◇◇

 

 料理部の前まで来ると部長の料理谷りょうりや先輩に泣きつかれた。


「外輪ぁ……! なんとかしてくれぇぇぇい!」


「え!? ど、どうしたんですか先輩!?」


 料理谷先輩はガタイの良さと男気に溢れる料理部唯一の男子部員だ。号泣して泣きつかれるのはちょっとした恐怖を感じる。


「あれなんだよぉぉ……」


 料理谷先輩に連れられ、調理実習室に入るとそこには女子の輪ができていた。オマケに黄色い悲鳴も飛び交っている。


「すごい!? どうやってるの!?」


 あ、女子の中に副部長の方内ほううち先輩もいる!


「うぅ……洋子ちゃんまで……」


 そうか。料理谷先輩、方内先輩と幼馴染だもんな。いつも「洋子ちゃん」って親しげに呼んでるくらいだし……好きなのかも。


「おやおや。誰かと思ったら外輪準君じゃないか。先日ぶりだね」


 女子の輪から1人の男子生徒が前に出る。ウェーブした髪を指でクルクル巻きながら。



!?


 この男……!?


--誰じゃコイツ?


 コイツがこの前バス停で遭遇した奴だ! カノガミも言ってただろ? 危険な力を持つ奴だって。


--ん、んん?


「ちょうど君を誘おうと思ってたんだよ。僕達2人。としてこの学校、我が物にしよう」


「嫌だっ! 俺はそんなことに協力したくはないっ!!」


「それなら仕方ない……ちょっと力比べでもしようじゃないか。僕が勝ったら従って貰うよ? ちょうどここの女子達にね。僕の力を披露していたんだ。彼女らにジャッジして貰おう」


 そう言うと男はスプーンを手に取った。


「まずは挨拶代わりだ。ふん……」


 男が目を閉じる。何をする気だ……?


「はぁ!!」


 男がカッと目を開くとスプーンがグニャリと曲がった。さらに、もう一度力を込める素振りをすると、スプーンはまた元に戻った。


「「「すごーい!!」」」


 女子達から声援が上がる。


 そうか。この力を披露して料理部女子の注目をさらっていったのか。それで、料理谷先輩は俺に助けを求めたと。


「名前を言ってなかったね。僕は蝶野有緑ちょうのありのり。見ての通りのエスパーさ」


 超能力者!? カノガミ!? 大丈夫か!? 逃げた方が……。


--は? なんじゃこのくだらん力は?


「くだらん力って……お前……っ!?」


「……な、んだと。この僕の力がくだらないって言うのか?」


 蝶野先輩が全身をプルプル震わせる。


「あ、いや……」


 え? カノガミ? この人ヤバイ能力者なんじゃないの?


--じゃって、スプーン曲げるなんて大したことない無いじゃろ。ホレ。


 カノガミがスプーンを持ち上げて曲げる。


 おま、それ手で曲げただけじゃねぇか。


「「「スプーンが浮いたああああぁぁぁぁ!? しかも曲がったああああぁぁぁぁぁぁ!?」」」


 調理実習室にいた全員が叫ぶ。


 あ!? カノガミは他の人に見えないんだった!?


「「「蝶野先輩まで驚いてなかった? 外輪がやったんじゃない?」」」


 周りからヒソヒソと会話が聞こえる。


 やめてぇぇぇ!? 俺を巻き込まないでぇぇぇ!?


 おい、早く逃げようぜ! カノガミ!


--うーむ。蝶野……蝶野。どっかで聞いたことある名前じゃのぉ。


 そんなこといいだろ!? 早く!!


「この蝶野有緑。今まで力を隠し生きて来た! しかし、君と出会ってこの力の素晴らしさに気付いたというのに! 君はそれを否定した上、バカにするように力を誇示するというのか!?」


「え!? 俺はそんなこと……」


--あ、そうじゃ! この前掲示板に書いてあったヤツじゃ! 『3年の蝶野先輩は保健室に行くフリをして○ソをしに行ってる』と。


「いやそれ今関係ないよね!? 保健室行くフリしてウ○コしに行くことは関係無いよね!?」


「な……んだと? 君、なぜそれを!?」


 蝶野先輩が驚愕する。


 あ、本当だったんだ。


「「「えー……それはちょっと……」」」


 女子達がヒソヒソ声で話始めた。


「くそおぉぉぉっ!?」


 蝶野先輩の態度が豹変し、敵意を剥き出しにする。


 ヒェッ!? カノガミさん!? 蝶野先輩ブチギレてますよ!?


--お、クッキーが焼き上がりそうじゃ♡ いい匂いじゃのぉ〜。


 カノガミはオーブンの中を覗き込んでいた。


 カノガミさぁーーーん!?


「もういい。人に使うことはしたくなかったが、ここまでコケにした君が悪いんだよ?」


 蝶野先輩が右手の人差し指と中指を額に当て力を溜める。


「はああああああぁぁぁぁ……!?」



 え? 魔貫○殺砲?



 蝶野先輩が指先を俺に向ける。ヤベェ!? 食らったら絶対ダメなヤツだ!!


「食らええぇぇぇっ!!」



 蝶野先輩の指先から光が放たれる。



 なんだよこれ!? もはや超能力じゃねぇぇぇぇ!?



「うわあああああぁぁぁっ!?」


 俺は咄嗟に伏せて光を避けた。


 あれ? カノガミは?


 横を見てもカノガミがいない。


--よし! 焼けたぞ! 早速1つ焼きたてを頂こうかのう♡


 カノガミの奴!? クッキーに気を取られて攻撃に気付いていない!?


 光の線がカノガミを襲う!!


 カ、カノガミィィィィッ!?

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