落とし物を探すのじゃ!
第9話 1/4
部室に行くと先客がいた。
制服はカッチリ着こなしてるのに髪はボサボサのチグハグなヤツが。
「お、犬山じゃん。部室にいるの珍しいな」
「この前の新聞が好評らしくてな。部長から増刷を頼まれた。各所から保管用にもう一部欲しいとの話が出ている」
--あぁ〜ウチへの信仰が厚くなっていくのじゃあ〜。有能なカミの辛い所よのぉ〜。
信仰じゃねぇから。お前女子レスラーの霊だと思われてるから。
そう言えば。犬山って映画好きだったよな。それとなくタイムリープの話を振ってみようかな。
俺の寿命は別として、過去を変えたら色々な所で迷惑がかかる可能性もある。なんかあったよな。過去を変えるとなんか……。こう、デメリット的なヤツ。
「犬山。タイムリープって知ってる?」
「ああ。映画でも良くテーマにされる現象だな」
「過去を変えることで起きるデメリットって何かな?」
「む、俺の浅い知識で申し訳ないが……1番有名なのはタイムパラドックスだな」
--タイム・パラパラ?
タイムパラドックスだよ!!
「例えば、過去に戻って自分を産む前の親を殺害した時、過去に戻った自分は存在するのか? という矛盾が生まれる」
「なるほど」
犬山の言った言葉に一瞬胸が痛んだが、考えないようにした。
--ふぅん。人間はそんな難しいこと考えるんじゃのぉ。
なんか他人事みたいに言ってるけど、お前にめっちゃ関係あることじゃねぇか!!
--だってぇ。ウチ今までそんなの、したことないんじゃもん♡
う……で、でも他に悪さするヤツがいるかもしれないじゃんか!
--誰がそんなことするんじゃ? ウチ以外に過去を変えられるヤツなど、この世界に存在せんぞ?
例えばホラ、タイムマシンやタイムリープができる装置を開発した人類とか。
--うーん……ウチは過去が変わったら感知できるしのぉ。それに昔、何万年先じゃったかを未来視した時にはそんな物作れるような人間は現れておらんかったけどな。これはハッキリと覚えとるのじゃ。
な、なんか人類の進歩についてとんでもないネタバレを聞いた気がする。
--ちなみに未来の人類はどうなっとるか教えてやろうか? なんと人類はなぁ……。
うわああぁぁぁ!! やめてええぇぇ!? 人類の未来なんて、俺にそんな責任背負わせないでえええぇぇぇ!!
「大丈夫か外輪? 顔色悪いぞ」
「いや、気にしないでくれ……」
「……そうか」
その時、部室の扉が勢いよく開いた。
「おうおうおう! ちゃんと来ておるなソトッチと犬山くん!」
いつもの通り元気な小宮が、夏樹を引き連れて入って来た。
「2人に頼みたいことがあるんだよね〜」
「新聞の増刷は良いのか?」
「その為になっつんを連れて来たんだ♪」
後ろの夏樹が深くため息をついた。
「まぁ……そういうことだから、後は俺がやっとくわ……」
夏樹……確か先日の吉田さんに遊びに誘われてたよな。アレな本の件でまた小宮に脅されたのか。
さようなら夏樹の青春。「俺、初めて女子に誘われた!」とキラキラしていた瞳を俺は忘れないよ。
「
ん?
「比良坂って転校生の?」
「そ。インタビューの件で仲良くなったの」
「いやったああああぁぁぁ! すまんな夏樹! お前の青春を生贄に俺の青春を召喚っ!!」
「お前……声に出して言うなよ……」
しまった!? 最近思考が声に出るな!?
--そんなに有名な
あの比良坂舞だぞ? みんな気になってる美少女転校生じゃん!
--美少女……ふ、ふ〜ん。ウチの方が美人じゃしぃ? べ、別に眼中に無いのぉ。
「こうしちゃいられねぇ! 早速行こうぜ犬山!」
「おぅ」
--なんじゃ。ジュンのヤツ調子に乗りおって……。
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