第2話:俺が悪いんすか?
ある日、紹介されたパーティーに入った。そこは
個々の能力は、中の下と言った所。突出した能力はないけど、下手を打つ事もない。可もなく不可もないそこそこなパーティー。そしてお人よし。まあ、これは美徳ではあるけれどプラスにはならないだろう。
……俺の足を引っ張らなければいいけど。
♢
まずダンジョンの入り口で驚かされた。いきなり無防備に足を踏み入れようとしやがった。まてまてまて……
「俺が先に入りますよ。罠とかあるかもだし」
「ああ、そうだな。ヌスッタ頼む」
そう言いながら、すでに片足が入りかけた戦士を止めるリーダーのキュア夫。
マジあぶねえよ。いきなりトラップがあるじゃねぇか。こいつ等よく生き残って来れたな……。罠自体は単純なもので、盗賊ギルドにはいって三日目のヤツでも解除できる程度のものだ。この、ちょっとだけせり上がった石を踏むと、入り口上にある岩が落ちてきて潰されるって寸法だ。その石が動かない様に他の石を挟み込んで……
「大丈夫です。行きましょう」
少し進むと左手に鍵穴付きの扉が一つあった。これ、どう見ても1200%罠じゃないか。開けようとすると毒針が飛んで来るヤツだ。
「あの、そこに立つと危ないので、横に避けて……あ。もっと後ろに……もっと」
この手の罠は解除しても、毒針が飛び出す装置はそのまま残る。もしそれが何かの拍子に誤作動を起こしたら『いきなり毒針が飛んでくる』という危険性がある。だからここは安全な場所から罠を発動させるのがベスト。
カチリ……
――ヒュッ
『カンカンカンッ』ってな感じの小さな音が後ろの方で聞こえる。飛び出した毒針が三本、壁に突き刺さった音だ。『あぶねぇ』とか聞こえて来たけど問題ない。メンバーはそこから三メートルも離れた位置にいる。十分に安全な位置まで下がっていてもらったから、俺も安心して罠を発動する事が出来たんだ。
「あ、待って」
すぐに前に出ようとする戦士を止め、足元を指さす。
「ここにも……」
部屋の入り口にある落とし穴。これも作動させておく。ガコンッと音を立てて床に穴が開き、戦士は後ずさった。つま先ギリギリに穴が開いて驚いたのだろう。
「もう大丈夫っすよ。ここ、落ちない様に……」
その一言で進み出る戦士のケンイチ。扉を開けて部屋の中を見渡す。
「お、宝箱があるじゃん」
「マジ? ラッキーだな」
今回は調査と言う事でギルドからの依頼案件だ。その為義務付けられているのは調査報告であって、その際に見つかった宝等は“発見者の総獲り”と相場が決まっている。宝箱に手をかける魔法使いのマコ。中からは金貨等が数枚出て来た。
しかしその直後、ドアの脇から“いかにも毒です”という紫色のガスが噴き出し始めた。
「危険です、急いで!」
「もう、何よこれ!」
「ヌスッタ、ちゃんと解除しろよ!」
慌てて金貨をつかみ取り、ダッシュで逃げる面々。ここはまだダンジョン入り口の光が見える辺りだ、特に被害もなく外に出られるだろう。
とりあえず何事もなくて良かった。発見が早かった亊が幸いだったな。洞窟のガスは、入口に吹き出てくることはなく“奥の方に流れて”行った。
メンバーの視線が箱に集中しているのなら、俺は周囲の監視を怠らない。これは盗賊の基本であるし、ギルドでも最も重要な事として最初に教え込まれる。なんだかんだ言っても、メンバーの命を握っている大切な役割なんだ。
だけどキュア夫からは信じられない一言が飛び出した。
「お前クビ。もういらねぇよ」
そういって俺を置いてさっさと帰路につく三人。
……いいのかそれで?
毒ガスが奥に流れたって事は、洞窟内に風が通っているって証明。裏に出口があるかもしくは通気口か。少し待てばガスは全部抜けていく。そんなの、盗賊ギルドじゃ二日目に習いますよ? まあ、彼等には『三日は抜けないかも』とか適当に言っておきましたけど。もちろんこんなブラフは、盗賊ギルドじゃ一日目にならいますけど。
そして俺は持ってきた弁当を食べてから昼寝をし、再度洞窟に入った。
言うまでもなく、毒ガスで全滅したモンスターを尻目にお宝を総獲りさせてもらいました。
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