追放しただけなのに。~仕組まれた成り上がり~
猫鰯
第1話:大人気のパーティーなのです。
「お前クビ。もういらねぇよ」
そういって首を切った冒険者は数知れず。その後なぜかみんな成り上がってしまった。そんなこんなで『あのパーティーを追放されると成り上がれるらしい』という不名誉な噂が立ってしまったのか、俺のパーティーに入りたいって奴が連日後を絶たない。
事の発端は半年前のダンジョン探索だった……。
♢
森と湖が眼下に見える小高い丘の上。この街では、毎年春先になると気持ち良い風が吹き抜ける。渓流に住む魚や湧き上がる天然水、森には野生動物が多く生息し、草花や綿花が群生している。この地に住む人々は、そんな自然の恩恵を受けながら日々の生活を営んでいた。
その日俺は……俺達は、街の冒険者ギルドから依頼を受けて未開のダンジョン調査に出向いたんだ。俺はヒーラー兼リーダーのキュア夫。他の固定メンバーは戦士の
しかし今回はもう一人、盗賊の
道中はスムーズだった。目鼻が効くので危険を回避するのが容易、その時は皆『正式メンバーとして加入してもらうのもいいな』って気分になっていた。
森を抜け、山を二つ超えた谷底にあるこの洞窟は、発見されてまだ半年位。この辺りはレベルが低いモンスターしかいないから、洞窟の中にも大した敵はいない。なんだかんだで経験豊富な俺達にかかれば、寝てても余裕な仕事。
……の、はずだった。
この盗賊、ヌスッタが役に立ったのは道中だけ。ダンジョンの罠外しは失敗しまくりで、毒針が飛んできて危うく刺さりそうになるし、目の前で落とし穴が発動して落ちそうになるし、挙句の果てに毒ガストラップにひっかかって、洞窟内に充満してしまい、捜索を打ち切らなければならなくなった。
さすがにこれはヤバイ。こいつがいたら命がいくつあっても足りない。ここはリーダーとして仕方なく……
「お前クビ。もういらねぇよ!」
とりあえず三日はガスが抜けないという話なので、一旦街に戻る事にした。もちろんこいつはその場に放置。そのときうつむいたままのスヌッタがどんな顔をしていたかは知らないし、知りたくもない。
こんな使えない奴を推薦するとかギルドの怠慢だろ。
その後も紹介されたり、募集をかけたりもしたけど、結局すぐにボロが出る奴ばかりでクビのオンパレード。だけどどういう訳か『パーティに入りたい』と言ってくる冒険者が後を絶たない。その度に期待して裏切られてクビにする。
でも、なんでだろう。
……俺がクビにしたヤツ。みんな成り上がっているのですが?
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