後篇
後日、俺と
店内は平日の昼間という事もあって、まだ人の姿は少なそうだ。
「あ、あったあった。あれよ
本の形を肩形どった四角い台の周りに、星の形をした飾りが付いていて星はライトが仕込まれていて派手な音と共にピカピカと光っている。
な、なんて派手な台なんだ。そして星の主張が激しいぞ。
「これっすか」
俺は何かよくわからない感覚に、思いっきり警戒した。
「そうよ。これが目的のパチスロ機〝カクウツ伝説〟よ。
なぜか、
俺と
「えーと、やりかたは……」
「
「あ、ありがとうございます」
「私が誘ったんだから、気にしないで。それより
何を言っているのかよくわからないけど、
よく警戒して挑んだ方が良さそうだ。
俺は
台がピカピカと光り、スロットのゲームが始まった。
レバーを押すとドラムが回転して、ボタンで止める。操作はたったそれだけだ。
いきなり派手な音が鳴り響いて、演出が始まる。
「このスロットはね
「イベントシーンが始まったらイベントをよく覚えておいて。イベントの種類によって、当たりの確率が違うのよ。イベントはWeb小説のコンテストになっているの。コンテストに入賞したら7が揃うボーナス確定よ。通常でも星は目押ししてなるべく取りこぼさない様にした方がいいわ。フォロワー爆増チャンスゾーンに突入できたらラッキーね。あとシーンの中に編集者が映ったら、チャンスよ。でもガセもあるからあまり期待しすぎないで!」
すごい、これが本気の時の
すると、俺の台から何やら賑やかな音楽が鳴り響いて、台に付いている飾りの星がぴかぴかと輝いた。
「やったわね!
なんだか良くわからないが、どうやらチャンスゾーンに入ったらしい。さっきまで画面では主人公が一生懸命小説を書いている地味な画面だったが、今は屋根の上から星をばら撒いている派手な画面の演出に変わっていた。
「
あと一つ7が揃えば、どうやらボーナスになるらしい。その前に演出がまっていた。
今、画面の中の主人公はコンテストイベントの結果を待っている様子がアニメーションでうつしだされている。
入賞と落選の文字が交互に映し出される。
画面の中の主人公がコンテストで入賞すれば、ボーナス確定で7が揃うらしい。
……どうでも良いが、なんか心臓に悪いなこの演出。
「どうなるの?どうなるの?ああ、じれったい!」
何度も入賞と落選の文字が交互に流れる演出に、俺も
「因みに、ボーナス中は画面左下に編集者アイコンが付くわ。最初は一人だけどだんだん増えていくの。増えれば増えるほどボーナスの継続率が上がって、コイン獲得が増えるのよ。ボーナス中は編集者アイコンをチェックよ」
「わ、分かりました」
すると、ついに『入賞』の文字が揃った状態で止まった。
「やったわ
「マジっすか!」
俺は思わず、
「さあ、あなたの手で7を揃えて!」
「ああ、任せておけ!」
……だが、なかなかドラムは7の位置で揃ってくれなかった。
結局、
しかし、
7が2つにBARが一つでボーナス画面に突入したのだ。そうか、だから揃わなかったのだ。
「
ボーナス中は、主人公が出版社のパーティに呼ばれるイベント画面が映った。
だが、編集者アイコンは一人から増えないままだった。
ついに出版パーティのイベントが終了し、画面の中の主人公は最初書籍が書店に並んで喜んでいる絵が写っていた。そこは再び編集者アイコンが増やせるチャンスゾーンなのだが、やはり編集者アイコンは増えないままで、ついに一つだけあった編集者マークも消えてしまった。
その後在庫の山にがっくり
画面は再び、主人公が淡々と小説を書いている通常画面に切り替わる。
「……ボーナスって、こんなもんなんですか?」
「いえ、そんな事はないわ。ボーナスによっては、もっと続いて沢山コインが出てくるの。でもコレは単発だったみたい」
「単発……やな言葉ですね」
「ええ。諦めずに今度はビッグボーナスを引いて、主人公がサイン会で編集者とファンに囲まれるシーンが出てくるのを期待しましょう」
「パチスロの世界、厳しいです」
「世の中そんなものよ」
「仕方ない。次のコンテストのイベントはいつくるんだろう……」
「
「そ、そっすか……」
俺も再び台に目を戻し、ボタンを押す作業に戻った。
その後はすぐにボーナスで得たコインが尽きてしまい、
ここからは自腹に突入だ。
その後はなかなかチャンスゾーンはやってこなかった。
フォロワーゲージも増えないままだ。そして、フォロワーゲージが増えねば星がたまらない。星がなければ、チャンスゾーンには入れないらしい。
やはり、俺にはギャンブル向いてないかも……増えない星と減っていくコインの残高を見ながら、ふと俺は思ったのだった。
——了
櫟乃森暮雄の日常 海猫ほたる @ykohyama
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