勇者召喚に応じたら、游者（ゆうしゃ）になっていた

第7話 ピートロネラ・フェリシア・ファン・ディーレン

　Side 　ピートロネラ皇女

　私の名は、ピートロネラ・フェリシア・ファン・ディーレン

　神聖帝国ロンドロッグ帝国の王女。

　今この国は未曽有の危機に直面しています。

　魔王の襲撃。

　父が神聖帝国ロンドロッグの皇帝としてこの地を支配下におき、はや３０年程経ったそうです。

　そして今、魔王が神聖帝国ロンドロッグの周囲を攻め滅ぼしており、近いうちにこの国も魔王が進撃してくるだろうと言われています。

　聖騎士団５００名からなる陣容の我が神聖帝国。

　そう魔王に後れを取るとは思えないのですけれど、ここは万全を期す為にも勇者を召喚すべきではないでしょうか？

　既に隣国では万が一、私による召喚が不発に終わった時の事を考慮し、勇者召喚をいつでも行えるよう準備を開始しようとしているようですけれど、私が召喚を行う仕方は他国のそれとは違い、犠牲を伴いません。

　対象の勇者足る人物に語り掛け、自らの意思でこちらに来て頂く、というもの。ただ欠点は勇者様を探し当てるのに時間がかかってしまう事。

　万が一間に合わなければ、もしくは失敗するような事があれば隣国の勇者召喚が行われます。しかし隣国の召喚は多大な犠牲が伴うと聞き及んでおります。ですので私は何としても勇者召喚を成功させねばなりません。

　広範囲で探さねばならず、簡単に見つかるとは思えませんが、私が勇者様を探して数年、ようやく一人の男性が私の求めに気が付いて下さいました。

　やり方が悪いのか、今まで私の願いは誰一人気付いてもらえなかったのですが、こちらの男性は気が付いて下さりました。

　そして、決断も素早く、なんと召喚に応じて下さるとか。

　善は急げで、私は最短の時間で勇者様をお迎えする事に致しました。

　ただ慌てていたため、勇者様のカードが作っていなかった事を知らなかった私は、急ぎ作成をします。本来は私が召喚の儀を担い、私の兄弟姉妹の誰かがカードを用意すべきなのですけれども、誰も用意をしませんでした。

　ただ、この勇者様の言語、ニホンゴなる言葉が存外難しく、カードの作製は時間がかかり、確認できないまま勇者様をお迎えしてしまいました。何故なら、私は召喚の後気を失ってしまい、カードの確認をできなかったからです。

　そして勇者様が目の前に現れて下さったのですが、予想外の出来事が。

　勇者様は身体に布を一枚だけまとったお姿をしておられて、何やら手にはカゴを持っており、なお悪い事には、勇者様は水のある場所に居られたようで、私は勇者様と共に大量のその水？お湯を体にかぶってしまい、さらには勇者様が私の上に降ってしまい、お湯をかぶってしまった私は避ける事かなわず勇者様にぶつかってしまいます。

　思わず、

「きゃあ」

　●ここより変化あり●

　と叫んでしまいました。

　そして気が付けば目の前には、ゆうしゃ様の大事な・・・・これ以上は恥ずかしすぎて何も言えませんが、ゆうしゃ様も私の股間に顔をうずめる形に。そしてゆうしゃ様の手は私の胸に！

　あ、私の胸は、さほど大きくないので、きっと失望したのでは？

　ですが周囲の誰かがゆうしゃ様を助け起こして下さりました。

　ですがここで更なる問題が起こります。

　ゆうしゃ様の言葉がわからないのです。

　予め想定していましたので、私は魔道具を差し出します。

　この魔道具を装着すれば、相手の言葉がわかります。

　警戒されているようでしたので、２つある魔道具の一つを私が装着、もう一つをゆうしゃ様が受け取って下さり、装着して下さいました。

　改めてゆうしゃ様を見ます。

　言うまでもなく、強い絆を感じます。

　これは間違いなく勇者召喚が成功した証。

　安心したのですが、無理があったのか私は意識が遠のいてしまいました。