推しの21

「ぐふ、

 ぐふふふ、

 ぐふふふふふふ。

 いやったあっ!

 ついに! ついに、平井ソーラーファーム制覇!

 これにてふぁいからりーふによる関東制覇達成! 関東一円のソーラーファームはふぁいからりーふ、ひいてはしろハー印一色に染められた!

 やはり、正義はあったのだっ!

 いやあ、それにしても長かった。我らがふぁいからりーふに関東制覇させるための日々。一円でも多く課金するために同僚たちの誘いを断り、日々お弁当作り。目を皿のようにして近所のスーパーのタイムセールをチェック。時間が重なれば自転車をすっ飛ばして時間との競争。そのためにどれほど自転車のペダルをこぎまくったことか。競輪選手になれるかと思ったわ。

 もちろん、あたしひとりじゃどんなにがんばったって、関東制覇なんてできやしない。同志を増やすべく、日々奮闘。最新情報をチェックし、日々の活動をつぶさに観察し、毎日まいにちブログで呟き、ふぁいからとしろハーの魅力を余すことなく世界に伝えつづけ……その甲斐あってのふぁいから衆の急増、その甲斐あっての関東制覇!

 苦労はした。

 悩みもした。

 いい歳してこんなことをつづけていていいのか。

 そう思い悩んだときもある。

 親からは見合い話や婚活パーティーの情報が山ほど届いた。すでに結婚している妹からも『もういい歳なんだから早く相手、見つけなよ! グスグスしてたらめぼしい相手は全部さらわれちゃうし、子供だって産めなくなるわよ!』と、責められた。

 正しいことがわかるだけにつらかった。

 そりゃあね。あたしだってわかっていたのよ。いい歳してドルヲタなんてやってたら一生、結婚できないってことぐらい。これ以上歳とったら、子供だって産みにくくなるし……。

 その現実を前にして、背筋の凍る思いをしたことだってある。しろハーグッズに埋め尽くされた部屋のなか、ひとりさびしく孤独死していく末路を想像して冷や汗を流したこともある。

 でも!

 それでも!

 その思いは報われた!

 ふぁいからりーふ関東制覇!

 これをきっかけに日本を、ひいては世界を手に入れる!

 そう。あたしは気付いた。

 それこそ、あたしの人生!

 あたしはしろハーと魂の結婚をしている!

 そして、しろハーとあたしの生み出す新しい世界こそ、あたしの子供!

 もう、あたしは迷わない。だって、あたしの人生、価値があるかどうかを決められるのはあたしだけ。世間の尺度に従って思い悩む必要なんてない! あたしひとり幸せならそれでいい! 他のすべての人たちの人生にとって、自分ひとりが幸せならそれでいいように。

 あたし、がんばる! 思いっきりワガママに、自分の幸せを追求する!

 そして、ふぁいからりーふを世界の頂点に……」

 「ふっ。そうはさせん」

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