推しの20

 「……ヤバい。

 さすがにヤバい。

 念願の応援ハウスに入れて浮かれすぎた。

 だって、楽しすぎるのよおっ! 他の人たちもみんな、熱烈なドルヲタだから話が盛りあがって寝る間もない。入居したその日に歓迎パーティーを開いてくれて一晩中、ドルヲタ話で盛りあがった。カラオケやって、物真似やって、気がついたらもう出勤時間。あんなにあわてて会社に向かったのはさすがにはじめてだったわ。

 それからも夜な夜な集まりドルヲタ話。それぞれの推しの誕生日にはバースデーケーキを用意して、みんなで『生まれてきてくれてありがとう』って万歳三唱。楽しすぎて寝てる暇なんかないのよおっ!

 おかげで毎日、寝不足で仕事中もボッーとしてミス連発。せっかく内定していた課長への昇進も危なくなってきた。

 いけない、こんなんじゃ。社会人として、もっとしっかりしないと!

 だって、しろハーのことを愛するあまり、仕事に悪影響が出たなんて知ったら、しろハーのことだもの。絶対、気にするに決まってる!

 しろハーが元気にアイドル活動できるよう応援するのがあたしの務め。そのためには自分の生活をきちんとしないと。いい加減にやっていたら、しろハーに怒られちゃう!

 課長への昇進だって確実なものにしないと。昇進できなかったらお給料だって上がらないし、しろハーにつぎ込めるお金も増えない。

 ごめんね、しろハー。心配かけて。でも、もうだいじょうぶ。これからはちゃんと節度を保って応援するよ。仕事もちゃんとやるよ。昇進もするよ。そして、精一杯、応援する! まっててね、しろハー!」

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