推しの18
「『泳いで千葉』公開、迫る!
ああ、どうしよう。いまからウキウキして仕事が手に付かない。仕事なんか放り出して、いまから映画館の前にキャンプを張って、いの一番に飛び込みたい!
でも、ダメだよね。ふぁいからりーふの皆が自分の仕事に一生懸命になってるんだもん。応援する側だってそれに負けないぐらい一生懸命じゃなくちゃ。応援する資格なんてないよね。やるべきことを放っぽって応援してたら、しろハーに『ダメだよ』って言われちゃう。
あたし、がんばるよ、しろハー。はやる心をグッとこらえて職場に踏みとどまる。そして、公開の日には日の出と共に映画館に向かい、最前列に座るの。映画館の大スクリーンいっぱいに広がるしろハーの姿。ああ、想像しただけで昇天しちゃいそう。その日まで仕事がんばる。しろハーに恥じないあたしとして応援に行くからね。
まっててね」
「……ううう、泣いた、泣いたよ。『泳いで千葉』!
素敵だったよ、かわいかったよ、健気だったよ、天使だったよ、惚れ直したよ、しろハー!
もちろん、他のメンバーも魅力爆発!
突如、千葉県全土を覆った謎の現象、千葉ックホール。
その謎に挑む
その陰でうごめく大東京増殖計画。
千葉を乗っ取ろうと攻め込む東京軍。
郷土愛と誇りに懸けて迎え撃つ赤葉の勇姿!
そして……東京の陰謀の証拠をつかむべく、単身、敵地へと侵入するしろハー。
しかし、敵に捕まってしまい、張り付けにされ……ああ!
いま思いだしても替わってあげたくなって、いても立ってもいられなくなっちゃう!
残忍非道な東京都知事の打ち鳴らす鞭の音。そのたびにビクッとして身をすくめるしろハー。怖かったよね。恐ろしかったよね。見ていて思わず、画面のなかに飛び込んで助けてあげたくなったよ。でも……張り付けにされて怯えるしろハー、ほんとにかわいかった。マジ天使降臨。
一方、埼玉出身・
まさに、愛と感動の一大スペクタクル巨編!
まさか、仲が悪い、チームワークが取れない、一体感がないと言われつづけたふぁいからりーふがこんなにも見事な映画を作りあげてくれるなんて。
ラスト近く、千葉の同胞たちに朗報を届けるべく泳いで海を渡るしろハーの健気な姿。必死に波を渡り、アップになった表情から伝わる苦しみと使命感。その絶叫が引き起こす信じられない奇跡。そして、赤葉と迎える哀しくも美しいそのラスト。
ああ、まさか、まさか『ガチで憎み合ってる』とまで言われた赤葉としろハーが、こんなにも切なく美しい悲恋物語を演じてくれるなんて。もう『チバラキ』は悪口なんかじゃないよ。ふたりの至高の愛によってふたつの県は最良の伴侶として結びついたんだよ。
成長したねえ。
おとなになったねえ。
やっぱり、『グラミー賞を取る』って言う目標がみんなをひとつにしたんだね。
すばらしかったよ。いまのしろハーたちならきっと、グラミー賞だけじゃなくアカデミー賞だって取れるよ。
でも、やっぱり、あたしは後悔している。エキストラとして参加しなかったことを。
エキストラ募集を見たとき、
出たい!
しろハーと一緒に映画を作りたい!
痛切にそう思った。でも、世間の目が怖くて応募できなかったあたしは本当にダメな女。映画のなかではあんなにも多くの人たちが堂々と素顔をさらして出演していたのに。
あたしはあの人たちに顔向けできない。
でも、いつまでもそうじゃないよね。しろハーたちがグラミー賞を取って、誰もが堂々と『アイドルが好き!』って言える世界を作ってくれるんだもんね。
その日まであたしもがんばるよ。ガンガン仕事して、ガンガン課金して、日本、いえ、世界中の城をふぁいから印の太陽電池で染め上げてみせる!
一緒にがんばろう、しろハー!」
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