推しの2
「いやったあっ! ついに! ついに、ふぁいからりーふが河越ソーラーファーム制覇!
プロジェクト・
考えてくれた人、ほんと神!
日本各地に戦国時代の城を模したソーラーファームを作りあげ、あたしたちの貢いだお金で各アイドル印の太陽光発電システムを購入し、タダみたいな値段でリースする。課金額が一定以上になればその
それも、このアプリ。日本地図の上にすべての城が表示され、どのアイドルがどれだけの城を手にしているか一目でわかるんだからなおさら燃える。
しかも、この太陽光発電システム、アイドルたちの歌って踊る映像付き。一日に数回、不定期に流される。あたしたちがどんどん課金して、どんどん制覇すれば、それだけ多くの場所で推したちの歌って踊る姿が放映される! 全国制覇すれば文字通り、日本中で愛する推しの映像が流されるのよおっ! これはもう、何がなんでもやるしかないってもんでしょうが!
……いや、まあ、もちろん、それだけお金はかかるんだけどね。でも! そうすることで再生可能エネルギーが普及して、温暖化対策になるんだからいくら課金したって文句は言われない。大威張りで課金できる!
ああ、思い出す。プロジェクト・太陽ドルがはじまる前のこと。あの頃は、推しを応援するためにグッズ類を買いまくり、家族に白い目で見られたものだった。
ときには食費さえなくなって、お弁当を作ろうとしたところを母親に見つかり、『食費さえないくせに何やってんの! 骨の髄までしゃぶられちゃうわよ!』って、メチャクチャに怒られた。
結婚した妹からも『アイドルなんかにお金使ったって何にも残らないわよ。将来のために貯金しなさい!』って、さんざん説教された。
会社の同僚からも『遊ぶわけでもないのに、何にお金使ってるの?』なんて聞かれて、返事に困った。
そりゃあね。あたしだってわかっていたのよ。応援のためとは言え、同じようなグッズをいくつも買い込むなんてとんだ無駄だって。どんなに好きでも使ったり、飾ったりできる数には限りがある。その他のものは結局、床に積んだまま、やがて朽ちてゴミになる。
何て無駄なことをしているんだろう。
何度となくそう思った。
使いもしない(と言うか、使えもしない)グッズの山を前に罪悪感に押しつぶされ、死にたくなったことが何度あることか。
何よりつらかったのは、大好きな推しの顔が描かれたグッズが使われもしないままに朽ち果て、捨てる羽目になること!
でも!
それでも!
グッズを買わなきゃ人気がないと思われちゃうじゃない!
そう思うと買うのをやめられなかった。
でも! プロジェクト・太陽ドルがはじまってすべては変わった! もう買い込むものはゴミじゃない。世界を照らす太陽電池。無駄を増やすどころか世のため、人のためになる!
もう、いくらお金を注ぎ込んでも罪悪感の虜となって落ち込む必要なんてない。大威張りで課金できる。
母さんには『あたしの出したお金が世界を救うのよ!』と言えるようになった。
妹にだって『太陽電池が残る!』と胸を張って言える。
会社の同僚にも『地球環境のために太陽電池の普及に募金しているの』と言える!
ああ、幸せだあ~!
プロジェクト・太陽ドルがある限り、大好きな推しに思う存分、課金して、しかも、そのことを堂々と公言できる! まさに、夢のような日々!
しろハー、あたし、仕事がんばる! ガンガン稼いで、ガンガン課金して、片っ端から城を落としてみせる!
目指すはひとつ、ふぁいからりーふの、ふぁいからりーふによる、ふぁいからりーふのための全国制覇!
力を合わせて達成しようねえっ~!」
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