(女ヲタの女子アイドルへの)愛は地球を救う

藍条森也

推しの1

「北条、上杉、武田、織田、徳川……戦国乱世を走り抜けた英傑たちの戦いがいま! アイドルたちに受け継がれる!

 新たなる戦国を勝ち抜き、乱世を平定するのは一体、誰か⁉ それはもちろん、我らが北条家アイドルふぁいからりーふ!

 彼女たちを支え、天下を取らせることこそ、あたしたちファンのなによりの使命!

 と言うわけで、ふぁいからりーふのライブに応援に行ってきた! いつも動画や写真で見ているけどやっぱり、生で見るアイドルはかわいいっ!

 バレエ仕込みの切れ味、燃え盛る炎のアイドル、赤葉あかば

 歌唱力№1、清らかなる森の歌姫、青葉あおば

 超絶美形、魅惑のクールビューティー、黒葉くろは

 天然癒やし系、みんなのおっとりお母さん、黄葉おうは

 みんな、みんな、かわいいけど、何と言っても一番かわいいのはやっぱり、穢れなき純白、純粋純情ピュアっ子、白葉しろは

 デビューから早一年。でも、いまだに緊張する癖が抜けなくて、ステージに立つと脚が震えっぱなし。それでも、一生懸命、歌って踊る健気な姿! あ~、かわいい、かわいい、かわいい!

 思い出すなあ。北条家アイドルとして小田原城を舞台にしたデビューライブ。あのときはもう、メンバーのなかでただひとり緊張しまくりで、自己紹介もろくにできずにガタガタ震えっぱなし。ステージがはじまってからも他の四人が元気よく歌って踊るその陰で、いまにも心臓発作を起こすんじゃないかって顔で立ち尽くしていたっけ。

 歌も踊りも全然できなくて、センターの赤葉に怒られまくってたよね。そのたびにビクッと萎縮して、身をすくめて、泣きそうになって……その姿にどれだけハラハラさせられたか。そして、思っちゃったのよね。

 この子は、あたしが支えてあげなきゃダメになる!

 あのライブだけで一体何度、力の限り『ガンバレー!』と叫んだことか。その甲斐あって、最後にはようやく歌えるようになってたよね。ダンスは全然できていなかったけど。

 でも、赤葉に怒られて、涙をいっぱいに溜めながら、それでも自分のやるべきをことをやろうとして一生懸命だった。

 はじめてのライブで怖かったよね。

 やるべき事ができなくて情けなかったよね。

 赤葉に怒られて悲しかったよね。

 でも、逃げなかったよね。

 泣きながらでも最後までステージに踏みとどまって、少しずつでもできるようになっていったその姿。一生、忘れないよ、しろハー。

 『ガンバレー!』って叫びすぎて、声がかれて、おかげで翌日の仕事に差し障ったけど……でも、その甲斐はあったよ。だって、運命のアイドルに出会えたんだもん。

 あれから一年。いまも緊張してるし、脚震えてるし、立ち位置まちがえるし、歌もトチるし、ダンスもミスるし、トークも忘れるし、赤葉に怒られてるけど……でも、成長したよね。

 いまでは泣きそうになっても、グッとこらえて、笑顔を浮かべて、最初から最後までちゃんと歌って踊っているもん。デビューのときから考えたらすごい進歩だよ。怖がりだけど勇敢で、泣き虫だけどがんばり屋。泣きながらでも戦うその姿に、あたしたちも勇気と元気をもらうんだよ。

 ああ、しろハー。

 しろハー。

 しろハー!

 愛してるよっ、しろハ~~~~~~ト!」

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