第33話

「中学の時、肝試ししたよな。あのとき、そこに人がいるって言ったけど、みんなに見えなかった。俺は、人と違うことでバカにされてきたけど、勘は鋭いよ」


「は…?」


「お前のいそうなところを考えた。そしたら、高校の時行けなかった牧場を思い出した。金儲けできそうとかなんとか言ってた」


「金は返せない…」


「そんなことわかってる。もう、地元に戻らないと約束してくれ」


「え?」


「俺も戻れないから」


「戻るつもりないよ」


「約束だからな」


全て、夢にあったことを思い出した。

彼の家は、借金してたことも、俺が保証人になったことも知らない。ましてや、俺が勘当されて、そのあと警察に捕まったことすらも。

それは、全て息子のせいだと思ってしまうのだろう。それじゃ、幸せじゃない。



「ラーメン屋いっぱいあって迷ったんだけど」


みるくのメールには、ラーメン屋にいるよとのことだった。そんなのいくらでもあるし。勘で入ったらいた。


「お腹いっぱいで寝ちゃいそうになってたよ」


俺にはみるくがいるから、平気。彼は牧場でずっとすごすのか?ひっそりと。それでいいならもう知らない。


「用事は終わり?」


「うん」


「ラーメン注文しよう?」


「うん。みるくと同じやつでいい」


ここに来れたのはよかった。高校なんて後からでも行ける。でも、楽しく話し合ってたあの頃を思い出すと、裏切られた気持ちは忘れられない。


「おまち」


牧場に泊まるのは1日で、あとはラーメン屋とかカニとか食い放題…なんて話し合ってた。それは、夢に終わった。全ての時間を刑務所に捧げた。隼人と一緒じゃなかったら、どうなってたかな。


「ゆきみさん、伸びちゃうよ」

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