第29話

「ごめんなさい、ここは継げない」


「いいのよ。私達がはじめたから、勝手に終わるから」


「いや、お前…」


「天野さん、お願いします」


「…あ、はい」


ゆきみさん、そっけない返事なんだけど。


「牛がいるんですよね?」


いきなり関係ない話。ちゃんと聞いてた?


「いるぞ。継がないくせに、なんなんだ」


「見たいです」


「勝手に見て勝手に帰れ」


「わかりました」


結局認めてもらえたみたいだけど、家の中には入れてもらえなかった。2人で牛舎に行く。


[久しぶりだーみんな元気?]


[みるくだ。元気そう]


[え?]


[元気だけど、話せる?]


[え、みるく言葉がわかるようになったんだ!]


「牛と見つめあってる」


雪見さんが話しかけてきた。そうか、私…声出してないんだ。


「話せた」


「へー」


それどういう反応なんだか!


[この人は、私と結婚するの]


「え、チャラそう]


[そうかもね]


[みるくを見てるよ?]


[なにかな?]


ゆきみさんを振り返る。


「前から話せた?」


「ううん」


「…牛で思い出したんだけど、酪農家に預かってもらうっていう体験する予定だったんだ」


「え、なんの話?」


「飛行機で帰るんだよね?その前に寄ってみたいとこあるんだけど」


「うん、どこ?」


「酪農家の個人宅で。場所は…確か…」

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