神の使いに、「あなたの人生はあと一生です。」と言われたから、これまで500回転生を繰り返してきた俺は最後の人生を平和に、豊かに過ごそうと思ってはいる。
閑話:ドキドキ!10歳差のアラサーとの添い寝スペシャル!
閑話:ドキドキ!10歳差のアラサーとの添い寝スペシャル!
特訓(?)1日目の夜、風呂から上がったグレイドールが僕の部屋に入ってきた。ちなみに僕は特訓で汗をかいたので先に入浴しておいた。昨日のように風呂で逃げることは出来ない。
彼女は椅子に座ってる僕の横を通って、ベッドに座った。
「さぁ、お休みの時間よ〜。」
(いやだぁ...ほんとにやだぁ...本当に無理なんだけど...?)
そう思いながら僕はベッドに入った。彼女が僕の横に寝転がってくる。
(僕の何か...プライドが...崩れる...。)
「ほら、寝ましょうね〜。」
(僕は赤ちゃんじゃないんだけど...とりあえず寝たフリしておこ...。)
僕は寝息を立て始めた。
グレイドールは僕の顔を覗き込んだ。
「バレバレよ?」
「.......」
「ほんとは起きてるんでしょ?」
「.......」
「...そ。」
(よし、やりきった!これでグレイドールが寝たら気づかれないようにまた隣の部屋に行こう...!)
僕がそう決意を固めた横で、彼女は目を閉じた。そして、寝息を立て始めた。
(...寝た?)
とりあえず寝返りをうって掛け布団を全部グレイドールに掛けた。その状態で1分待機。彼女は依然寝息を立てたまま。
僕はそっと立ち上がり、音を立てないように扉まで向かった。
「ねぇ。」
(!?)
いつの間にか後ろにグレイドールがいた。
「ねぇ、どうして逃げようとするのよ。」
「.......」
(ど、どうしよう...どうやってごまかす...?何も思い浮かばない!)
僕は扉に手をかけたままの姿勢で動けなかった。
「ねぇ、聞いてるの?」
「.......」
「もしかして、寝てる?」
「.......ぐがぁ...」
(こんなんでごまかせるか?なんて馬鹿なことしてんだ僕...。)
そう思ったが、意外にもごまかせてるようだった。
「なんだ、夢遊病なのね。」
「ぐ...ぐがっ...。」
(夢遊病なのねってなに...?馬鹿なのこの人?)
グレイドールは僕を抱えてベッドに運んだ。
「ぐがぁ...!」
僕は起き上がろうとした。彼女に腕を回されてるせいで起き上がれない。力強すぎるだろ...!
「ん?やっぱ起きてる?」
「.....ぐ...がぁ...」
「...やっぱり夢遊病なのね。」
(案外ごまかせるものなのか...。)
そう思ったのもつかの間、彼女は僕の方を向いて言った。
「夢遊病なわけないわよね?」
「.....ぐっ...が...」
(怖っ...。急に低い声で言い出さないでよ...ビビって声でちゃった...)
彼女は僕の瞼を開いた。
「起きてるわね?」
「そんなことされたら起きるに決まってんでしょ!?馬鹿か!?」
「グッモーニン。」
(クッッッッ...ソこいつもエネーギもライベールもなんで揃ってムカつく奴ばっかなんだよ...!)
すっかり目が冴えてしまったので、僕は起き上がってベッドに腰掛けた。
「ふぅ...確かに逃げようとしたのは悪かったと...いや別に悪いとは思ってないけど、だからといって無理やり起こすのはおかしくない?」
「そうね、起きてたならおかしくないわね?」
「...起きてる状態で起こすとか意味わかんないけど...まぁ、寝てる人の邪魔しないんならいいんじゃない?」
「逃げようとしたってことが自覚できてるなら君は起きてたってことよね?」
「やっぱり起きててもダメだと思う。」
バレた。完全に僕の自滅だけど...こうなったらもう仕方ない、話題を変えよう。
「そういえば、そこに立てかけてある
彼女は立ち上がってそれを持ってブンブンと振った。強い風が吹き、掛け布団をめくった。
「持ってみる?」
そう言って彼女は剣の柄の方を僕に向けた。僕はそれを手に取った。が、その瞬間あまりの重さに剣を落としてしまった。
「まぁ、分かってたけど。」
なら持たせるなと思った。(あ...床に凹みが...)
彼女はその剣を拾い上げ、再び壁に立てかけた。
「そんなの実践で使えるの?」
「えぇ、雑魚処理なんかはかなり楽よ。こう、床に立てて...」彼女は剣を床に突き立てるようにした。「で、ここで反転すると...あっ」
「ん?」
彼女は慌てて口を塞いだ。
「どうかしたの?」
「...いや、なんでもないわ。」
彼女は露骨に目を逸らした。
「反転って...?」
「気にしなくていいわ、私のポリシーの問題だから。」
そう言われるとよけい気になってしまう。
僕は覚悟を決めた。
「観念して添い寝するから、その...反転?について教えて。」
「わかったわ。」
即断即決すぎる。そんなに添い寝したいのか。年下に興味ないんじゃないのか。
彼女は瞬時にベッドに寝転がった。
「ほら!ほら!ほら!ほら!」彼女は自分の横のスペースを叩いた。
(嫌だな...寝る前なのになんでこんなにテンション高いの...。)
僕は自分の言ったことなので仕方なく、隣に仰向けに寝転がった。
「こっち見ないの?」
「僕は仰向けじゃないと寝れないの。」
「嘘ね。」
「嘘じゃない、嘘じゃないから早く反転ってのについて教えて?」
「せっかちだねぇ〜。」
せっかちというかもうとっととその話題に切り替えてこの地獄みたいな空気を終わらせたいと思ってるだけなのだけど。
「反転っていうのは私の能力、持っている武器を反転させることが出来るわ。」
「...ふーん。え、それだけ?」
「え、そうだけど結構使い勝手いいのよ?」
彼女はそう言って、特訓に使っている木剣をどこからともなく取り出した。
「見ててね」そう言うと、木剣の刃の部分が現在ついてるの反対側についた。彼女の頭の方に刃があったのに今は足の方に刃が反転している。
「ほら」
(え、ほんとにこれだけ?)
彼女には、彼女が誰から攻撃されたか認識するだけでカウンターできるという特殊な技能があるので、もっと派手な能力かと思ったのだけど...。
「しょぼいって思った?でもね、シンプルなのが1番強いの。この力は剣を振るモーションを飛ばして相手に攻撃出来る。歴戦の兵士ほど予想外に弱い...まぁ初手を見抜かれたら対応されちゃうけど、だからなるべく初見殺しできるように周りに広めないで欲しいのよね...」
「僕、別に誰にも言わないけど?」
「信用してって?そんな簡単に出来るわけないじゃない。君はまだ子供で私より遥かに弱い、というか比べるまでもないから仕方なく教えてあげたのよ?私は反転について、私がそれで致命傷を与えた相手にしか教えないって決めてたのに。」
雲が晴れたのか、急に月光が部屋を明るく照らした。目に入った彼女の表情は何を考えているか分からないくらい真顔だった。彼女の瞳は夜の闇より黒ずんでいた。
「あっそういえばさぁ。」再び僕は慌てて話題を変える。「なんで添い寝したがってるの?ずっと疑問だったんだけど。」
彼女の瞳に光が戻った。
「...私ね、弟がいたはずなのね。ちょうど君くらいの年の。」
「10歳差!?」
「...まぁそのくらいね。私の弟...グレイン・ブランドールは生まれた途端死んじゃったの。私が産まれる前に名前つけてたの...妹か弟ができた時にやりたいことも決めてた。それのひとつが添い寝ね。」
思ったより重い話題だった。
「ごめん。そこまで配慮が出来てなくて...。」
「全然いいわよ。私、弟が死んだことに気づいてなかったのよ?まぁ親が隠してたっていうのもあるけど、そのせいで弟への関心が無くなっていつまで経っても弟の姿が見えないことに疑問すら持たなかったのよ。」
彼女は悲しそうな顔をしていた。...何故か分からないけど、彼女が嘘をついてるような気がした。僕のグレイドールに対する印象が悪いからだろうか、彼女が悲しんだりするはずがないと思ってしまっている。
「じゃあ、今日の話はこれでおしまいね。早く寝て、明日の特訓に備えないと。」
彼女は目を瞑り、寝息を立て始めた。
とりあえず寝返りをうって掛け布団を全部グレイドールにかけた。その状態で1分待機。彼女は依然、寝息を立てたまま。
僕はそっと立ち上がり━━━━
「おい。」
...そっとベッドに入った。
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