閑話:エネーギと従者
「ん?答えを教えて欲しいって?」
エネーギはそばにいる誰かにそう言った。彼女は彼の従者であり、エンドらが王宮に来た時もすぐそばにいた。ただ、エネーギ以外の誰もその存在には気づけなかったのだ。
「はい。結局何が正解であったのかと気になりましたので。」
そう言うと、彼は顎に手を当てて考え始めた。
「あぁ、いや、別に答えを考えていなかったって訳じゃないよ?」
(...心を読まれた。)
彼は、自身と親密な関係の存在にしかこの力を明かさないので、どうしてあの3人にこの力のことを明かしたのかということも気になっている。
「ただね、ボクが考える答えは無数にあるからどれを言おうか迷ったんだ。」
「そんなにあるんですか?」
「うん、そもそも僕の問に完全な答えなんか無いよ。だってできっこないことは答えに入れちゃいけないからね。」
「そうですか?」
「うん。だからエンド君が言った答えはもちろん正解だけど、その先があるんだよ。」
「......その先...とは?」
「問題の穴を突くんだよ。」
従者はそれが何か分からずにいた。
(たしか...問題というのは「死んでもいい人間をつれてくること」だった。問題というより試験だ。)
「試験の穴を突くって言うとなんか変だからね。」
そんな理由なのか...。
エネーギは椅子から立ち上がり、王宮の出口へと歩き出した。それに従者も続いた。
「まず、ボクの用意していた答えの範囲は「ボクが気に入る答えであればなんでも」だよ。最初の段階のエネーギ君は人の思いも分からない、というか分かった気になっただけの凡人だった。相手を自分の認識に歪めて、それが正しいと思ってる愚か者。大っ嫌いだね。そういう輩は皆、正しくもないのに自身の行動を免罪符にして幻想の中に理想を創る。」
段々と彼の歩くスピードが早くなってきた。歩幅は狭いので先程のスピードと大差は無い。
「それなら行動した方がマシだよ。あの時のままならケイト君にだけエクスタを教えていたよ。それがエンド君にとって一番キツいことだしね。」
彼は扉を開け、廊下に出た。彼は扉を守る兵士に「おつかれ、もう帰っていいよ」と言うと、長い廊下を歩き始めた。
「理想の中で理想を貫くわけでなく、現実の中で理想を貫く...この言葉いいよね。10歳の発言とは思えない。あの年で既に現実に生きることを決めてるんだ。ボクが気に入らないわけない
い。」
王宮に仕えるメイド達とすれ違った。彼女らは王に一礼すると、私達が来た方向へ歩き出した。
「まぁ、ギリギリだったね。このままならもっとボクのお気に入りに成長できる。」
「そうですか。では、そろそろ問題の穴とやらについて教えてくれませんか?」
「せっかちだなぁ〜。」
彼は自分の部屋の前で足を止めた。
「その問題がボクから出されたものであるという事だよ。だから、ボクがどうしようもない人物を連れてくればその時点で問題は崩壊する。そう、手の施しようがない奴ら。例えばグレイとか魔王。魔王はもう居ないはずだから良いとして、あの場面でグレイを呼ばれてたら...ボクの有利な立場が一瞬で無くなってた。グレイは優しいから、無条件でエクスタを教えるはずだ。問題を解く意味が無くなればボクは剣聖と賢者に恩を売れなくなって面白くない。」
「あの場面で魔王やグレイドール様を連れてくる事など出来るはずが...。」
「うん、だからあくまでも問題の穴を突いたというか、問題そのものをぶち壊す答えなんだ。」
彼は自分の部屋の扉を開けた。
「これで分かった?」
「...まぁ、一応。」
彼は従者の肩をポンと叩いた。
「監視に戻れ。」
「了解しました。」
たちまち従者の姿はエネーギの前から消え去った。彼は部屋の扉を閉め、椅子に座り目を閉じた。
従者の視界を通じて、瞼の裏に、平原で話している5人の光景が映し出された。
「あーそう、あなた達は2人部屋なんですね?」
「はい。( ˙꒳˙ )」
グレイがケイトとテレーゼと話している。彼女が振り返り、エンドに近づいた
「じゃあ、この子の部屋に泊まるとします。」
「んぇ?」
「はぁぁぁぁぁ!?!?!?」
エネーギは叫びながら目を見開いた。
(これはまずい...グレイはともかくエンド君がなにか間違いを起こすかもしれない...。)
彼は、グレイの入浴中に注意喚起しに行こうと決めた。
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