第10話:恥ずかしっ!!
「まず、これを」
朝食後、ライベールは僕達に封筒を渡した。
「これはベイルさんとカーネーションさんから預かったものでね、さ、封を開けてみてご覧。」
3人が一斉に中を見た。そこには手紙が入っていた。僕のには「ケイトとテレーゼを支えてやりなさい」と書いてあった。
「ケイト、テレーゼ、なんて書いてあった?」
2人は僕に手紙を見せた。ケイトのには「お兄ちゃんの言うことはしっかり聞きなさい」と書いてあり、テレーゼのには「巻き込んで申し訳ない」という言葉と金塊が入っていた。拡張魔法で封筒が広げてあったのだ。
「金で解決出来るようなことじゃないのに、ほんとに不器用だよ。」
ライベールは感傷に浸るように俯き、また僕達に向き直った。
「実はね、彼らはウェントルプ国王にトラッシュの町を更地にして欲しいって頼まれてたんだ。」
「...えぇ!?さ、更地!?それって、え?あそこの住人は...?」
「死者はゼロだったよ。誰かが動いてくれたみたいだね〜。」
そう言って、彼は遠くを見た。
「まぁ、これくらいなら別に家族で一緒に暮らしててもいいんじゃないかって思うよね?」
「まぁ...うん。」
彼はため息をついた。
「国家間の会議でベイルさんとカーネーションさんを排除することになったんだよね〜。」
「は、排除!?いや、でもそれはウェントルプの国王に頼まれたからで...別に悪気があってやったわけじゃないでしょ...?」
「そう、だけど問題はそこじゃない。2人で...まぁカーネーションさんはおまけだけど、町を簡単に壊せる存在は脅威以外のなんでもないよねってなったんだわ。」
「あ......もしかして、お父さんもお母さんもそれを見越していたから、僕達をわざと売りに出してそこからわざわざ知り合いに救出させに行ったってこと???」
「そう、そういうこと。」
なるほど、やっと分かった。
━━━━━いや、
「いやいやいや、おかしいでしょ!?なんで一旦牢屋に入れる必要があるの!?最初から知り合いに預かってもらえばいいじゃん!?」
回りくどい、なんでこんなことをしたのだろうと思った。
ライベールは少し考え込んだ。ケイトもテレーゼも静かに返答を待っている。
「なんだろうな...試練かな...?俺宛ての手紙に書いてあったことと照らし合わせるとなぁ...そうなるな...。」
「なんて書いてあったの?」
「言えない言えない、言うな、見せるなって書かれてるし。」
「言ってるじゃん」と言おうとしたが、揚げ足をとって機嫌を悪くすると昨日のように何も話さなくなってめんどくさいのでやめた。
「でも...なんでじゃあケイトもテレーゼも一緒に牢屋に入れられたの...?」
「ま、他国の監視官に変な目で見られないように、だね〜。自然な形で子供を逃がせば子供には追っ手が来ないって思ったんじゃない?俺は結構いい判断だと思ったけどな〜」
(...たしかに、監視されてるならそれがいい判断と言える...か?うーん.....)
それ以外にもやりようはあった気がするが...。僕の両親は人だ、ミスはする。しかも監視されてるみたいだし...
「え、まって監視って何?そんな...罪人だったの?」
というか、僕はあの人達がどれほどの実力者か知らない。そんな、危険人物だったのか...?
「 いんや、罪人とかじゃない。むしろ英雄に近いね〜。ベイルさんは剣聖って呼ばれてて、カーネーションさんは賢者って呼ばれてる。2人ともかなーりの実力者なんだよね〜.....そんな...まるで兵器みたいなあの人達の動向が気にならないわけないでしょ。」
(たしかに...剣聖.....剣聖!?)
「剣聖って.....なんでそんなにすごいのに貧民街暮らしだったんだ...」
「それは...俺も分からない。」
彼は、自分の手元にある手紙を一瞬だけ見て言った。
長いようで短かった話が終わった。テレーゼは紙と鉛筆をもってずっと返答する準備をしていたが、実は文字を学んだのは最近なので、2人の会話の速度についていけなかった。
牢屋の中の暇つぶしでエンドから文字を学んでいたのだが、彼女は頭が悪いので結局修学出来なかったのだ。
彼女はいち早く自分の部屋に戻ると、紙と鉛筆を床に叩きつけた。
鉛筆の芯はぽっきりと折れた。
✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤
エンドは特にやることがないのでとりあえず魔法の勉強をすることにした。
ケイトの袋から魔導書を取り出した。
(どうして僕の魔法は失敗ばかりなんだ...)
そう思いながら、ページをぺらぺらとめくる。
「
(何回やっても出来なかった魔法...)
彼は改めてその魔法の注意書きを読んだ。
①自分が空を飛んでいることを想像出来なければ飛べない
②魔力量が足りてないと飛べない。
③魔力が切れると思ったら速やかに降りる。
④上昇、滞空、下降ではこの順番で魔力の消費が大きい。
(やっぱり魔力が足りないとしか...)
彼が悩んでいたら、急にライベールが部屋に入ってきた。
「ようようよう、今後のことを話したくてここまで来ましたよ〜...ん?なんだそれ?」
「これ?魔導書だけど?」
すると、ライベールは吹き出した。
「これっもう50年も前の魔導書じゃんか!」
「え?」
(50年も前.....?)
「ここに書いてあるほとんどの魔法は魔力量がめっちゃ多くないと使うことすら出来ないよ〜。」
「えぇ!?」
(ってことは馬車で
エンドは立ち上がり、部屋の窓を開けた。今日も空は澄み切っている。
「...くそっっっっっったれがぁー!!!」
そう言って、魔導書を外に投げ飛ばした。
ライベールはそんな彼を見かねて、笑いを堪えながら、無言で最新版の魔導書を渡した。
エンドはぺらぺらとページをめくり、
「.....
彼の体はふわふわと宙に浮いた。
ライベールが笑うのを堪えていた。
「で?なんだっけ?今後の事?話すんでしょ?」
そう聞かれたライベールは咳払いをした。
「そ、そうそう、今後のことね、うん、今後の.....ブフッ」
「もういい、出ていって。」
そう言って、エンドは彼を部屋の外に押し出した。
「恥ずかしいねぇ!これまで勘違いしてたんだねぇ!恥ずかしいねぇ!間違いに気づけてよかったねぇ!」
「.......」
彼は扉の前に座り込んだ。
(んおおおぉ!!恥ずかしっ!!もうやだ...。)
エンドはライベールのことを追い出したので、今後の話を聞けるのはまた後ほどとなった。
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