閑話:ダストの頃のおはなし
これは、エンドがまだダストの町にいる頃の話。
「.....?今世が最後?なんだそれ」
突如として頭に浮かんできたその言葉に頭を抱えていた。誰かが頭の中に直接囁いたかのように浮かんできたその言葉は、前世の自分が今世の自分へと宛てた言葉なのだが、そんな事知るわけもない。
(今世が最後.....?最後ってなに?今世が終わったらどうなるの?)
試してみよう。
そんな考えになってしまう自分が怖い。だが、気になるものは気になるのだ。現在4歳の僕は考えるよりも行動に移す派である。
なるべく、高い所へ登ろうと考えた。トラッシュの家と同じで、ダストにいた頃の家は二階建てである。違うところは石造りであるということ。借金に追われてみすぼらしいトタンの家に住まざるおえなくなった。
さすがに屋根までは登れないので、二階の窓から外を見た。目の前には青い空と、街道を挟んで反対側の家の屋根がある。
ふと、下を見る。高い。やけに高く感じる。
街道は土でできているので、雨の日ならぬかるんで骨折程度で済みそうだが、今は快晴だ。
急に震えが止まらなくなる。
(あれ.....?なに...?なんだ...?)
怖くてたまらない。ここから落ちたら確実に死ぬ。それに加えて今世が最後という言葉。この言葉の意味を考えると怖くてたまらない。なんで気になっちゃったんだ。
思い切って窓の外にでた。
先程まで青空と屋根を映していた目は、次の瞬間には地面しか映さなくなった。
✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤
「あっ」
「あっ、じゃなくてですね?」
気付いたらそこは天界だった。前世の記憶も全て戻ってきた。神の使いは見るからに呆れている。
「いや、まさか次の世界の俺がそんな事になるとは思ってなくて...」
「.......はぁ。ちょっと面白かったからいいです。」
人の死を笑うなよ。時々思うのだけれど、神の使いは俺に対して冷たすぎる。もう少し、労いの言葉とかないのか。
「...で?俺は神の食事になるんですか?」
「あ、い、いえ、まだギリッギリ生きてます。」
「ギリッギリかぁ...。」
これは死んだな。なにせ天界にいるのだもの。神の使いもそう思ったからここに呼んだんだ。神の使いは僕が落ちて死にゆく様を映像で見せてくれた。うわ、グロ。
「こんな呆気ないのか...。」
「...残念でしたね。え?あ、はい、今行きます。」
神の使いが誰かに呼ばれたようだ。ここから瞬時にどこかへ消え去った。いや、逆かもしれない。俺がどこかへ連れてかれたのかも。
そんな思考は無意味で、もちろん神の使いの方が呼ばれただけだった。
「え〜〜っと。特例で生き返らせてもらえるらしいです...。」
これまで500回も人生を送ってきた俺を?最後だからか?いや、俺を生き返らせるくらいなら他の人を.....。
「.....まぁ、そうですか。俺は生き返れる...ってどうやって生き返らせてもらえるんですか?俺の死体に蘇生魔法でもかけてくれるんですか?」
神の使いが地上に降りるとか、大騒ぎになりそうだ。なにせあそこはスラム街、神なんか信じていない人が多すぎる。
「いえ、私は人の世界に直接干渉出来ませんので...。運命を操ります。」
今まで見ていた僕の死体が映った映像に1人の幼女がやってきた。幼いというか、先日生まれたばかりのエンドの妹だ。
「ケイト?なんでこいつが?」
彼女は僕を見るなり泣き出して、僕の顔を叩いた。
「ちょっと、これ何?なんかあるんですか?」
「あ、ここに来たことや貴方が行った事に関する記憶とかは消えるので承知しておいてください。」
「え??何が?」
神の使いにそう言われた後、僕は視界がギュンと狭まるような感じがして、目が覚めた。
僕は現世に戻ることができた。目の前にはケイトの泣き腫らした顔がある。
彼女は僕に、蘇生の魔法を使ったのだ。
✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤
(ダストに着いたらまずジェン・バートンを探さなきゃ...。)
ケイトに魔法の興味を持ってもらうために、既に死んだであろうジェンを蘇生しようと躍起になっている男がいた。
その男は幼少期に1度死に、ケイトに蘇生されているが、そんなことは記憶に残っていない。
自身が無駄な事をしようとしていると露知らず、エンドはケイト、テレーゼと共に故郷へと戻るのであった。
✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤ ✤
皆、私に魔法を勉強させたがる。
そもそも、前提が間違っているの。
みんな、文字が読めるようになったら、同じ文字の勉強はしなくなるでしょう?
既に自分に出来ていることなんて、学ぶ必要がないの。
私は生まれた頃から魔法が使えた。まるで呼吸のように。
呼吸の仕方に興味なんか持てるわけないでしょ?
━━━━━━━━━大魔道士ケイトの日記より「10歳の私」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます