顔が良い私はいつか世界を救うはず

ふふっとね。

エピローグ 

 「人生で、一番の危機はいつ?」と尋ねられたら、秒で「今」と答えよう。だって、目の前にドラゴンがいるから。

 たった十五年の人生だけど、この先これ以上の危機は起きないだろう。


 私は至って冷静だ。体は動くし、頭も回ってる。

 さっきまで一緒にいた友達は遠くに投げ飛ばしたし、逃げ遅れた住民はもういないはずだ。

 この国で一番栄えている王都だが、今は寂しさすら感じるほど静まり返っている。


「ドラゴンって、割と大人しいんだね。話せたりするの?」


 話せるものなら、話して欲しい。私だって怖いものは怖いのだ。

 期待はしていなかったが、ドラゴンからの返答はない。

 ドラゴンなんて、目の前に現れるまでは空想上の生き物だと思っていた。その鱗は全てを防ぎ、その爪は全てを貫き、その吐息は全てを無に帰す。まさに絵空事だ。

 私の命なんて、このドラゴンの吐息で吹き飛んでしまう。なんて、軽い命なのだろう。


 おっと、悪い方向にばかり考えすぎた。私はそんなやつじゃないだろう。いつだって前向きで、皆の笑顔のためならいくらでも頑張れる、顔が良い女だ。

 私の命が軽い? そんなわけない。私の命はこんなところで終わらない。


「貴方に恨みはないけど、貴方が脅威となるなら私は全力で迎え撃つ。私の名前はギオラ・カヴァリエ。この名前、覚えて帰りな」


 

 

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

顔が良い私はいつか世界を救うはず ふふっとね。 @Hhuhu_To_Warae

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ