第15話 裏切り

【EQ日記 8月20日】


 友達鳥から通信が入った。


「今度からハップホーと遊ぶのやめるわ」

「ええ?」

「クレリックキャラで他のパーティに参加するから」

 そのまま通信が切れた。


 驚きである。

 こちらは仕事が終わった夜だけしか遊べない。友達鳥は専業主婦なので一日中遊んでいる。自ずからこちらと遊べない時間はクレリックの別キャラで誰かと遊ぶことになる。

 この手のファンタジーゲームではパーティの中心はクレリックになる。回復薬がいなければ戦いはできないからだ。だから自分がパーティを仕切りたいと思うものはクレリックになる。

 友達鳥は性格的にクレリックは向かないのだが、強烈な仕切り屋、それも周囲のことを露とも考えない仕切り屋なので、クレリックを選んだのだろう。

 そしてそれで遊んでいた同じく一日中遊ぶぞ勢たちが高レベルになり、そちらに本腰を入れるために、私を切り捨てたということだ。


 信じられない。そもそもEQで遊ぶから来いと言ったのはこの人なのに。無責任にも程がある。

 そう言えば前回のUOでもこの人は同じことをやった。魔法のフルブックを用意したから一緒に遊ぼうとやっておいて、いざUOに行ってみたらそれは嘘で、パラメータを上げるために薬をつくれ木こりをしろと押し付けた挙句、そうやってできた薪などを取り上げていた。何のことはない単なる召使が欲しかっただけなのだ。

 それはディアブロなどでも同じで、戦闘中に指輪を拾うとすべて差し出させ、要らないと見ると投げて寄越す。すべて戦利品は自分に権利があるとしていた。


 眞正のクズであるが、それでも私は我慢していた。友達だから。

 このとき縁を切っておけば私の人生はどれだけ穏やかだったろうか。

 この後も友達鳥はこちらの我慢の限界ぎりぎりのところまで押し込んでくるのだがそれはまた別のお話である。


 これからはKINGさんと二人で盛り上げるしかないなと考えていると、KINGさんから連絡が入った。


「EQを止めようと思う」

「ええ!」

「遊んでいると眠くなるんだ」


 3D酔いの一種である。それに今の状況では二人でレベリングだけなので、確かにこれは面白くない。いつか強くなることを夢見て修行だけなんてつまらないのだから当然だ。


 こうして私は西カラナ平原の端っこにポツンと放置された。

 心がとても寂しい。

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