第16話 ハイホー誕生

【EQ日記 8月21日】


 一人になってしまったので、ハップホーは封印し、新たにエンチャンターのハイホーを作りだす。ホー一族の中ではハップホーの弟にあたる。

 種族は高貴なハイエルフ。まさに私にふさわしい種族ある。


 ハップホーの使用をやめたのは、お前はこのレベルで見捨てたのだぞという友達鳥に対する暗黙の非難のつもりである。

 新しいキャラを作ることで極力友達鳥との関係を薄くするためでもある。

 もっとも友達鳥はそういう意図を見抜ける人でもないので意味はないのであったが。

 私が映画や食事をおごる限り、この人は私に取り憑いて離れないだろうとの予感があった。それは私が礼儀正しくかつ我慢強いからだとは考えずに、自分に謎の人徳があるからだと信じてやまない人なのだ。



 エンク(エンチャンター)はアクセサリの生産能力があり、これが気に入っていたのだが、これも実際には大した機能のアクセサリは作れずあくまでも趣味の範囲である。


 プレイヤーとしてのエンク・キャラは基本はパーティでしか行動できないキャラだ。

 その能力は味方の強化魔法(バフ)と敵の弱化魔法(デバフ)である。

 攻撃速度増大および力の増大である。デバフは逆に敵のパラメータを減少させる。低レベルでは心持ち程度だが、高レベルでは目に見えて違いが出てくる。

 そしてかなりレベルが上がるとクラリティのバフが使えるようになる。エンクはこのために居ると言ってよい。このバフは魔法力(MP)の回復を速めるので、パーティレイドには欠かせないものなのだ。

 だが問題はそれまではゴミでしかないエンクを誰がパーティに入れてくれるかということだ。この理由で成長が難しいキャラの一つでもある。

 この辺りを知らぬ外人プレーヤーの中には通りすがりにエンクを見つけるとクラの魔法を乞食するずうずうしい者も多いが、ほとんどのエンクはそれを断る。エンクのマナはパーティのものであり、無駄使いは許されない。

 気安くマナを振りまくと次の戦闘でパーティが壊滅する恐れがあるためだ。


 エンクは中レベルからは睡眠魔法を使うことができる。これも多モブと戦うパーティプレイでは生き残りに必須の魔法となる。ただしこれも、睡眠しないモブもいるし、睡眠呪文のヘイト(モブの攻撃対象選別の基礎になる)が異常に高いことから、パーティメンバーが賢くないとエンクの死亡という結果を引き起こす楽しい呪文である。

 エンクは自分をガードするためのペットも召喚できる。エンクのペットは剣と盾だけを持った透明人間という姿をしていて、ペット召喚の呪術師に比べると、制御が効きにくいという大きな欠点がある。

 よくダンジョンで大トレイン(モブの大暴走)を作りだすのは、エンクのペットが引き金になっていることが多い。そのためエンク・ペットにはトレインメーカーという異名がつけられている。

 これらはすべて使いどころが難しく、結果としてエンクはソロには向かないキャラクタなのである。



 だがそれでも初心者レベルまでは何とかソロができた。

 もっとも随分と逃げ足が鍛えられて速くなってしまったが。

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