第14話 衛兵打つべし

【EQ日記 8月22日 西カラナ平原】


 KINGさんもレベル8になり、永久凍結地帯は、ライバルが増えてしまったので、西カラナで狩りをすることにした。


 例によって平原中央外れにあるガードタワーNo2である。ここはほどほど安全、ほどほど危険、の場所である。


 KINGさんを背後に連れて平原を疾走する。

「この平原は広いから、初めての人は慎重に動かないとすぐに迷子になるんだよね」

 そう言いながら後を見たら、KINGさんがいない。

 迷子になったようである。LOC情報を頼りに探し出す。


「それと大型のモンスター見たら、警戒しないとねー」

 言うのではなかった。言葉にすれば悪魔が聞きつけるとは良く言った

ものである。


 大クモを殺していたら、いきなり後からどやしつけられた。

 一撃52ダメージ。え?

 木の怪物トレアントである。雄大にして温和な存在。畏怖すべき自然の守り神。

 温和だって?


 殴り殺されてしまった。どうやらクモを襲うところをみられたらしい。

 しかし腹が立つのはガードである。トレアントを攻撃しないのはまだ良い。だがログによると、瀕死のわたしを殴っている。

 殺すリストにガードの顔写真を記録した。指名手配。賞金1銅貨である。


「いやー、ひどい目にあった」

 QEYNOSから裸で戻る。ゾーンを越えた途端に、一撃48ダメージ。

 え?

 どうしてここにヒルジャイアントがー。巡回コースから外れているのに。

 仕方がないのでゾーン際でぶちぶち言いながら、待つ。


「やーっと辿りついたあ」

 自分の死体の懐に手を入れ、まず取り出すのは食い物である。バウバウ。

 人心地ついたところで、装備をつけかえ、自分の死体が消えるのを見守る。


「ほーんと大変だったよねー。まあ山賊でないだけ増しかあ」

 言ってはならないのである。絶対に。言葉に出せば・・・


 隣で狩りをしていた二人組みにKINGさんが近づいた。どうも様子がおかしい? 名前を見てあわてた。モンスターのバンデッドだ!

 遅かった。いきなりKINGさんが襲われる。タワーに突っ込むが、ガードは全力でこれを無視。ヒーリングが間に合わずKINGさんが死亡。

 パラディンの全力を尽くし、これを撃破。ぷああ~。疲れた。くたくただ。


 更に、ベンジフル骸骨に殺されるわ、ルート中にヒルジャイアントが走ってくるわ、もお大騒ぎ。


 すべてが終わってからしばらく考えてみる。

 何となく今日の大騒ぎの理由がわかった。


 ヒルジャイアントがゾーンにいたのは、誰かが連れてきたのだ。

その後、ガードポスト横をどしどし走っていたのもそうだ。

 山賊連中も、普通はいない場所だから、誰かが引っ張ってきて、あそこで死んだのだ。いや、もしかしたらわざとやっている所謂モンスターPKがいるのかもしれない。

 誰か恐ろしく迷惑なプレーヤーがこのカラナに陣取っているのだ。


 む・・・う・・・わたしも人の事は強く言えないが、実に迷惑な話ではある。


 本日の教訓)ガードは味方のふりをした敵である。

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