第7話 話が終わって
話が終わった後、絵里は子供達に囲まれていた。
大事になった恥ずかしさと盛大にやってしまった感に顔色を紅く青く替える絵里は、子供達に揉みくちゃにされていく。
(よかったあ……何とかなったみたい……)
と、ハンカチで顔を拭きながら安堵の息をついたのもつかの間。
お話もっともっとぉ!とせがまれ、大人達は拍手をした後に、ニコニコと期待の目で絵里を見ている。
さっきまで泣いていた女の子が小さな手を振り上げて、『ふおおおお!』と顔を輝かせながらお母さんに抱かれているのを見て、絵里は掌を握りしめた。
「ごめんね、あの子とお話したいの。ちょっと待っててくれる?」
絵里は側にいた子供達に謝りながら立ち上がり、ゆっくりと歩いていく。
●
「あ、あの……」
「あら!お話良かったよ~!……どうしたの?」
母親が、顔を曇らせている絵里に首を傾げる。
女の子は絵里をひと目見て、恥ずかしそうに母親の肩に顔を
二人の顔を交互に伺う絵里を見た母親が、顔いっぱいに笑った。
「そういう事ね~!大丈夫、大丈夫!……ねえ、
女の子は顔を埋めながら、こくり、と頷いた。
「お姉ちゃんの話、楽しかったならお礼言わないとだね」
「………………あいがと!」
母親の言葉に女の子が絵里に向かって笑いかけて、すぐに恥ずかしそうに顔を背けた。
「ごめんねえ、この子恥ずかしがりなの。さ、子供達待ってるから行った行った!わざわざありがとうね~!」
母親の言葉に、絵里は深々と頭を下げたのだった。
●
その後。
皆が十分に間隔をあけて話を聞いていたからか、図書館のスタッフから注意されなかったどころか、大人達と一緒に拍手をしていたのを見た絵里。
何とかしてください……と目で訴えたが、列の整理をするのに一生懸命のスタッフ達を見て、すぐに諦めた。
そもそも、自業自得だよね……とこっそりタメ息をついた絵里は、お騒がせしてごめんなさい、ありがとうございます、という気持ちを込めてスタッフ一人一人に頭を下げる。
絵里と目があったスタッフは、ニッコリと笑って絵里に手を振った。
そして。
結局、子供達の「おはなし、おわっちゃうの?」と、しょんぼりする姿を見て、もうひとつだけね、と子供大好きの絵里は言ってしまっていた。
だが、絵里が子供たちのリクエストに答えた理由が、もう一つ。
そう、今更ながら絵里は気付いたのだ。
膝にあるノートPCから有名どころの短い童話を検索すれば、お話を考えなくてもよかったのではないか、と。
しょんぼりと唇をほんの少し尖らせた絵里は、童話、とPCで検索する。
と。
"
という話を見つけた絵里は、猫ちゃんの手を私にもぜひぜひ!と思いながら、その話を語り始めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます