第4話 『カツ夫と海の仲間たち』

 絵里は考えながら、少しずつ話をし始めた。


『……僕は、気がついた時には海で泳いでたんだ。僕の名前?名前はね…そう、カツオっていう種類の魚の、カツ夫って言うんだ!カツオのカツ夫さ!』


「カツオの、カツ夫〜?変な名前~」


 男の子が、うふふと笑ってくれた。


(さあ行け、私!)


 絵里は男の子の笑顔を見て自分を奮い立たせる。


『……きらきらとした青い海の中でスイスイって泳いで、みんなで毎日一緒にご飯を食べて、クジラさんやイルカさんや他にもいっぱいの海の友達と一緒に楽しく暮らしてたんだ!』

「……」


 男の子と女の子はキラキラした目で、絵理の話を聞いている。


『……でも、そんな時にアイツは現れたんだ。おっきな体の、シャチっていうヤツ。「おお、おいしそうな魚達がいるなぁ。腹も減ったし、お前らを、食べてやろうか」って言いはじめたんだ』

「カツ夫、食べられちゃうの?」

「こわいおさかなさんにたべられちゃうの?」


 不安そうな顔をした二人に絵里は微笑んで、胸の前に人差し指を立てた。

 まだまだ、これからだよ!と。


『……みんなでシャチから頑張って逃げた。でも仲間の一人がもう逃げられないって時に、群れの中にいた僕らのリーダーが「逃げろっ!ここは僕にまかせるんだ!」ってシャチに体当たりをして、僕らを守ろうとしてくれたんだ!』


「りーだー、負けるな!やっつけちゃえ!」

「めーなの!はち、めー!!」

「僕もリーダーを助けにいく!変!身!」

「きゃいきゃい!あー!」


 わいわいきゃあきゃあ!とキッズスペースの端っこが大騒ぎとなり。

 絵里は子供達に微笑みながら、ツウ、と冷や汗を掻く。


 子供、増えてるよね?と。


 子供達の父親、母親とおぼしき大人達も、スペースの中と外で、ウンウン、と微笑みながら見守っている。


 (え、えーい!女は度胸だぁ!)


 それでも絵里は、止まらない。

 子供達と一緒に、冒険譚へと。



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