第2話 キッズスペースと男の子

 


 そんな訳で。


 絵里は図書館に出向き、張り切ってキャッチコピーを考えているのだが、言葉が浮かんでこない。


 時折、キッズスペースの子供達に目を向けてホッコリしながら、絵里は再度、むうっ!と気合を入れる。


(あ!いろんな言葉を並べてみよう!何か浮かぶかも)


 思い立ったらすぐ行動!とPCの画面を分割し、メモ帳に単語や短文をタカタカタカ、と入力していく絵里。


 すると。


「パパより打つの早ーい!すごーい」


 絵里の座る椅子から1メートルくらい離れたキッズスペースを囲うクッションから身を乗り出し、小さな男の子が絵里に話しかけてきた。


 絵里はいつものにっこにこ顔で答えた。


「そうなのー?」

「そう!パパもお仕事で、パソコン使ってるの。でもお姉ちゃんみたいにタタタターン!って打てないの!いっつもパソコンの前で腕組んで、ウーンウーン、って言ってるばっかり」

「そっかぁ」


 男の子はキラキラした目で絵里とノートPCを交互に見て、顔を紅潮させている。


 私もそんなに打つの早くないんだよ〜と思いつつ、男の子の笑顔を見て、絵里はまたまたホッコリする。


 が。


 続く言葉に凍りついた。


「お姉ちゃんのお話は、どんななのー?聞きたーい!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る