第三話
尾張国中央部の集落は、藩の直臣ではなく、小高い山の
国主が何代変わろうと、
そんな屋敷を取り囲む
長槍で門を警護する門番は、槍を十字に掛け合って、取り乱す百姓を押し留めた。
「
百姓からの、息も絶え絶えの主訴を耳にするなり、二人の門番も顔色を豹変させた。
裏門の脇戸を開けて中に入り、百姓共々母屋を目指して疾走する。門番は母屋の縁側をひた走り、
「騒々しい。何事だ」
書卓に向かって居住まいを正し、写経をしていた深作は、居室に飛び込んできた側近を睨みつけ、静かに筆を
しかし、耳打ちされた深作は、瞠目をして息を呑む。
「……誠か? それは」
「はい。たった今、小百姓が訴えに……」
門番は肩で激しく息をした。深作は、眉根を僅かにひそめたきりで、決然として立ち上がる。
「誰か居るか!」
老いた農夫の見間違いではないのなら、集落を預かる身として
と同時に、床の間の
深作は着物を脱ぎ捨て、筒状の袖の下着に着替えたのち、
脛当てと籠手も下男につけさせ、刀と脇差を腰に帯びる。
同じように武装を済ませ、弓と槍をたずさえた
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