第1話:あなたの能力は女体化です

 「水谷様、お待たせしました。異能鑑定の結果が出ました。あなた様が覚醒した能力は、えっと、えー・・・女体化です。」


 「すみません、もう一度お願いできますか??」


 俺、水谷健也みずたにけんや。今日15歳になったので、国によって義務ずけられた異能鑑定に来ていた。のだが、肝心の能力名が良く聴こえなかったのでもう一度確認する。声が小さくてよく聞こえなかったが、気のせいでなければ何か変な能力だった気がする。

 

 「し、失礼しました。私も初めてのことですので驚いてしまいまして。あなた様の能力は”女体化”です。おめでとうございます。ランクExの能力ですよ」


 「えぇ・・・」


 ランクEx。規格外を示すそのランクは、文字に表せばかっこいいかもしれないが、要は詳細がよくわかってなかったり、活躍する状況があまりにも限定的すぎたり、あまりにも強力すぎて逆に使えないなどの理由でランクの設定が難しい能力は全部このランクになる。なので、ランクExだからといって将来が約束されたわけではないし、むしろ社会のはみだし物のような扱いとなることが殆どだ。能力の活用が前提となったこの社会で生きていけるか不安だ。よほど運がよくない限り、今後の生活はかなり厳しい生活となりそうだ。


 「えっ、えーっと、ちなみに過去にその能力を持った人の記録はありますか?」


 「いえ、ありません。あなた様が初めての能力です。」


 「よ・・・良かったぁ・・・」


 ランクExと聞いたとき、今後どうしようか凄く悩んだが、初出の能力ならむしろ当たりだ。初出の能力は異能組合によって能力検証が行われた後、お金がもらえる。更にその後研究などで詳細なデータを提出すればそれもお金になるのだ。配信で能力研究を行ってくれるスポンサーを見つければ将来の生活はある程度約束される・・・はず。


 「ではこの後、発動確認を行います。今回は記録にない能力ということですので、その影響力を確かめるためのある程度の検証を行う必用があります。そのため2時間ほど時間を頂くことになるかと思いますが大丈夫ですか?」


 「はい、今からで大丈夫です。」


 組合員に案内され、奥にある能力検証施設へ移動した。検証施設の中には5人ほどの研究員と思われる人がいて、こちらを見ている。大した能力ではないのに、こうして見られるのは恥ずかしい。


 「では早速能力検証を行います。能力の発動は大丈夫ですか?」


 「はい、大丈夫です。」


 異能の発動方法については15歳になった時に頭の中に浮かぶようになる。どういう原理かは不明だし、なぜ15歳なのかもわからないが、とにかくそういう作りになっているそうだ。ただし、発動方法はわかるけどどのような異能なのかは発動するまでわからず、発動して初めてどんな異能なのかがわかるという。最初から異能の内容までわかればいいのにと思う。まぁ、そんなこと言っても仕方ないけど。


 「では、発動します。」


 俺の異能の発動方法は簡単で、魔力を身体の中にあるスイッチに流すだけでいい。スイッチって何だってなるだろうが、そういうのがあるんだとしか言えない。魔力の扱い方は学校で習うので、スイッチに流すくらいどうということはない。


 

 そしてスイッチに魔力を流すと、一瞬目の前が白くなったかと思うと、直ぐに元に戻った。


 「あー、まぁ、うんそうですよね」


 女体化という能力の通り、異能を発動させると女性の身体になった。身長が何故か伸びたせいで、悔しいような嬉しいような凄い微妙な気分。声は女性の声だ。


 「お・・・おぉ・・・」


 「あの?大丈夫ですか?」


 「はっ!すみません、見惚れてました。鏡をお持ちしますので少々お待ちください。」


 そして組合員の方は鏡を取りにいった。その間、研究員の方から色々な質問を受けた。身体の調子はどうだとか、気持ち悪いところはないかとか、魔力の巡りはどうかなどだ。全体的に身体の調子がいい気がする。そりゃぁ普段ある物が無いことや胸に膨らみがあることに違和感を覚えるが、それを考慮しても調子がいい。


 「お待たせしました!こちらで自分の姿を確認してください。」


 「あ、ありがとうございます。」


 質問がある程度落ち着いたところで、鏡に映る自分の姿を確認。髪は襟足が肩まで伸びたウルフヘアに、赤のインナーカラーが入っていて、目の色は濃い赤。顔はかなり整ってアイドルでやっていけそうなくらいに美人。背が伸びたせいで服の丈が少しあってないように見えるが、元が男性用の服なのでキツイ感じはない。


 「問診はある程度済んだようですので、次は身体測定を行います。」


 その後、血液検査やら尿検査などが行われた。その過程で女性医師に全裸を見られて凄く恥ずかしい気分になった。検査が終わった後は、身体能力測定が行われ100m走とか持久力測定とか色々実施した。かなり疲れた。というか男の身体の時より若干いい記録が出たのが納得いかない。一応自分の身体のはずなのに何か負けた気分。


 「お疲れ様でした。これにて発動確認、能力検証は完了となります。検査結果、報酬金は1週間以内にお送りいたしますので、ご確認ください。」


 「はい、ありがとうございました。」


 一通り検証が終わったので、家に帰った。もちろん元の姿で。いくら美人な姿とはいえ、普段と違うというのは違和感があるから無理。



 「ふぅ、ただいま~」


 といっても家には誰もいない。両親はいるが今は二人とも海外に出張していて次いつ帰ってくるかは不明。兄弟は姉が二人だが、どちらも大学生で一人暮らしをしている。つまり今俺は実家で1人暮らしなのだ。二階建ての一件家に1人暮らしなので、掃除が面倒だが、あまり細かいところまで掃除しないのでどうにかなってる。


 「さて、今日も配信するか~」

 

 今日は誕生日なので、ケーキをちゃんと買ってきた。といってもそれだけだけど。仲のいい幼馴染?そんなのはいない。悲しくなるからやめて。


 

————————————————―――――――――――――――――――――

あとがき:

 TSとか男の娘とか女装子とかが性癖すぎて、何かいてもそういう系のキャラが出てくる呪いにかかりました。最高ですね。



 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る