第90話 平和になった生活

「「「「賛成~!」」」」


 三十層のフロアボスを倒して、三十一層から屋敷に戻り、急いで多数決会議を行って、満場一致で僕の提案に賛成がでた。


「じゃあ、今回のフロアボスのカードは――――カードにする」


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 ①対象のカードを固定にして『アップグレード品』とする。

 ②対象のカードに『アップグレード』を付与する。

 ③対象のカードを複製する。

 ④対象のカードを消去してカードが持つレア度のドロップ率を上昇させる。

 ⑤特典を破棄する。

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 僕のスキル『カード』が発動すると選べる特典がこの五つ。


 当然⑤を選ぶのはない。今回悩んだのは④のドロップ率を取るべきなのか、③の複製を取るべきなのかだった。


 いつもなら迷わずドロップ率を取っていたはずだが、今回は内容が内容なだけにカードを増やすべきじゃないかと悩んだのだ。


 売るため――――ではなく、その効果が『素早さ+150』という破格な性能だからだ。


 これがあれば、凪と花音の一枚目に装着してもらい、素早さ+300をみんなで共有することができる。


 現在凪は『グランドリザードマン』というレアカードで素早さ+50を、花音は『グランドオーガ』というレアカードで力+50を増やしている。


 力が50減ってしまうが、素早さが250も上昇するのはかなりのメリットだ。


「にぃ~賛成は賛成なんだけど、一つ質問いいかな?」


「ん?」


「これから毎日ゴブリンジェネラルと倒すでしょう? となるとそのうち枚数が集まったら凪姉達にそれを装備してもらうんでしょう? それならわざわざ増やさなくてもいいんじゃない?」


「それもそうだが……共有しなくても、単体でも十分効果が高いし、それこそ絵里さんに装備してもらうとより効果が高いかなって思って」


「私?」


「はい。素早く動きながら魔法が放てたらそれだけで強いですからね。それは六花もね」


「そっか~」


「それにゴブリンジェネラルカードがそう簡単に出るとは思わないし、まあ、今回はドロップ率よりもカードを優先させるよ」


「は~い」


 僕は恐る恐る特典のカード複製を選んだ。


 テーブルの上に眩しく光り輝くダークスパイダーキングのカードが二枚現れた。


「「「おお~」」」


 本当に増えた……フロアボスカードが二枚……特典おそるべし……。


「これは私と花音ちゃんじゃなくて、由衣ちゃんの方がいいかも?」


「そうですね。私よりも由衣ちゃんの方がいいと思います」


「そっか。じゃあ、凪と由衣。よろしくな」


「「は~い」」


 二人が装備してくれると、一気に体が軽くなる感覚があった。


 元々僕の素早さが280なので、約二倍上昇し、合計530にもなった。


「にぃ! まだ時間あるんだから、一時間置きにフロアボスの所にいくわよ~!」


「う、うん……」


 なんだか六花がバトルジャンキーみたいなことを言っている気がする……。


 それから一時間置きに十層に向かいゴブリンジェネラルを倒し、そのまま二十層に向かいグランドリッチを倒し、三十層に向かいダークスパイダーキングを倒した。


 他のパーティーがいたら譲る予定だが、いなければ遠慮せず僕達が倒すことにしている。




 ◆




 次の日から三十一層の攻略を始めた。


 どんなマップになるのか期待していたら、驚くことに一層と全く同じ景色だった。


 平原にちょいちょい大きな瓦礫が落ちていて、現れる魔物の一層と同じゴブリンだった。


「ここからハイゴブリンという種族になるらしいよ。ゴブリンよりずっと強いから気を付けてね~」


 なるほど……姿は一緒でも強さが全然違うという感じか。


 凪が言った通り、三十一層のハイゴブリンの動きは凄まじいものだった。あのゴブリンからは想像もできないように速くて、油断していると一瞬で距離を詰められるほどだ。


 クラウンダンジョンの三十一層からは非常に――――不人気とのことだ。


 二十一層から二十九層までは非常に経験値効率がよく、敵も程よく弱い・・ので人気だが、問題は三十一層から現れるハイゴブリン。こちらは真逆になる。


 個体の姿からは想像もできないように強いのに、経験値効率は非常に落ちるという。


 というのも一撃で倒せれば非常に効率が高いのだが、ハイゴブリンは素早さだけでなく頑丈さとスピードまで兼ね備えた強敵だからだ。


 まあ…………カードバーストで一掃できるので、僕達にはいい狩場になっている。


 それに六花達も難なく倒していたので、うちのパーティーがそれだけ強くなったのが分かる。


 そんな毎日を過ごしながら、金曜日には集まったフロアボス魔石を持って源氏さんのところに向かう。


 最初こそダークスパイダーキングの魔石を喜んでくれたのに、今では顔色が青くなっている。


 ダークスパイダーキングの魔石は非常に高額らしく、嬉し涙を流していた。


 そもそも僕達は源氏さんのおかげで強くなれたので、買取額は無視して押し付けているのだ。


 どちらかというと源氏さんより、秘密結社アルカディアの店員さん達の表情の方が絶望に染まっている。


 最近はアルカディアが破産するんじゃなかろうかと思える量を持ってきている。


 毎週金曜日はアルカディアメンバー総出で僕を迎え入れてくれたりする。




 そんなこんなで毎週のルーティンをこなして平和な生活を送り続ける。


 僕達は日々強くなっていき、フロアボスのカードも少しずつ集まったりした。


 そして、僕達はより強くなることができた。

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