第76話 面接
中に入ってきた人は計十人の少年少女で、先頭の女性だけが僕達と年齢が近そうで、他の九人は少し幼い。
「!? お、お久しぶりです!」
深々と頭を下げる女性は、以前六花に回復魔法をお願いしてきた女性だ。
「どうも」
恵奈さんの案内で僕達の前に十人が立った。
今日の面接の相手は彼女たちだ。
「初めまして。僕はリーダーの栞人と言います。よろしくお願いします」
「ほ、本日はよろしくお願いします!」
後ろの子供達も少し緊張した面持ちで大声で「よろしくお願いします!」と声を揃えた。
周りで見守っていたスーツの人たちが椅子を持ってきて、全員が座って顔を合わせる。
「ではこれから面接を始めます。お名前をどうぞ」
「は、はいっ! 私はミナと申します。こちらから、アキ、セナ、ユウコ、レイ、ソラ、レン、イツキ、アオ、ハルと言います」
名前を呼ばれた時に本人が頭を下げたので、とても分かりやすい。
「私達は孤児ですので、苗字も名前もありません」
ダンジョンから起きたスタンピードのせいで、日本は大きな被害を被りやがて未登録の子供が増えるようになってきた。
僕達も両親が早くに亡くなってしまい、半孤児のような生活を送ったのでそこら辺の事情は知っている。
名前もお互いを呼ぶためにそれぞれで付けたモノだ。
「ありがとう。――――事前に軽めに説明は聞いていると思うけど、本日の面接の目的は僕達の仲間になってくれるメンバーを探しています」
凪からそう言われたけど、どうして仲間を募集するのかは僕にもわかっていない。ただ凪が必要だということで募集した形だ。
「僕たちは普段からクラウンダンジョンで探索者となって狩りを行っています。皆さんにも僕達と共にダンジョンで狩りをする覚悟があるのか、それを聞かせてください」
「は、はいっ! 私達……本当なら死ぬ運命にあったんです。それは……栞人様もお分かりだと思いますが、私達は流行り病でいつ死んでもおかしくありませんでした。孤児だから……仕事もできずに日々少ない食事をみんなで分けて生きています。だから仕事をくださるならどんな仕事でもやってみせます!」
「ダンジョンに入ったことは?」
「あ、ありません……以前、一度だけ隠れて入りましたが、それ以上は……」
「皆さんが孤児になった一番の理由は、ダンジョンから魔物が溢れたスタンピードにあります。つまり、これから皆さんはダンジョンで魔物を狩る側になってもらいたい。――――命をかけることになります」
全員が息を呑んだ。
「判断一つで死が隣り合わせ。ダンジョンというのはそういう場所なんです。僕もダンジョンで何度も死にかけました。皆さんにその覚悟はありますか?」
「…………今回流行り病で色々思いました。私にもっと力があればと……ですから一生懸命に働かせて頂きます」
「でも死ぬかも知れませんよ?」
すると彼女は笑顔を浮かべて話した。
「それは心配ありません。皆さんに限って私達を見捨てるような人だとは思いません。きっと私達にできるからこうして面接に応じてくださったんだと思ってます」
隣の凪が小さく口角を上げた。
「私も~!」
六花が元気よく手をあげる。
「みんな、魔石採取ってわかる? ものすごく大変だよ~?」
「それなら大丈夫です~! 私できます~!」
セナちゃんが手を上げて元気に答える。どうやら魔石採取の経験者がいるみたい。
それにしても彼女たちには魔石採取をさせたいのか?
「す、すごい…………」
「これは中々だわ……即採用ものね……」
あはは……凪と六花は魔石採取に向いてないからな。
「ケントくん? 私は彼女たちなら仲間になってもいいと思うけど」
「うん。僕もいいと思う。でも一ついいか?」
「うん?」
「僕は彼女たちに何をさせるのか聞かせていないけど、全部凪に任せていいのか?」
「もちろん! そのつもりだよ~」
「そっか。なら僕としても反対する理由は見つからないな。みんなちゃんと働いてくれそうだし、何より――――絵里さん同様、凪と六花のご飯を食べたら、絶対に虜になってくれると思うから」
すると隣から絵里さんが小さい声で「うぅ……反論できない……」と呟いた。
続いて凪の「採用~!」と声が上がり、彼女たちは口を揃えて「ありがとうございます!」と大声で感謝を伝えてくれた。
普段から一緒に過ごしている家族だからこそ、こう声が揃うのも自然にできる。これならダンジョンでも問題ないか。
その日は凪が彼女たちを連れてどこかに行って、僕たちは家に戻り、歓迎会の準備を進めた。
一時間後に帰ってきた凪たちと彼女たちの歓迎会が始まり、美味しい料理にみんなが笑顔に染まる。
凪が何をしたいのかは正直わからないけど、彼女たちにとっても悪い話ではないと思うので、これから何が起きるのか楽しみだ。
そして次の日に凪が何をやろうとしたのかやっとわかることとなる。
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