第74話 ゴブリンジェネラルカードの真価
休日ではあるけど、今日は早速ダンジョンにやってきた。
ゴブリンジェネラルカードの性能を試すためだ。
「にぃ? どう?」
「ん~特に変わった感じはしないかな?」
フロアボスのカードとはいえ、特に何かが変わった感じはしない。
「ではこれから『カードスラッシュ』と『カードバースト』を試してみるか」
「うん!」
ゴブリン三体の群れを見つけた。昔はこの三体にすら足が震えていたのに、随分と遠いところにきたものだ。
黒龍漆聖刀を抜いて『カードスラッシュ』を纏わせる。
「スキル、カードスラッシュ!」
一振りで僕の前方に『カードスラッシュ』の光が放たれる。ただ、今まで見てきたサイズとは桁違いである。
本来の数十センチの大きさだったのに、そこから五倍は大きくなっている。三メートルくらいはありそうな長さ。
変わったのは長さだけではない。太さも五倍は太くなっている。もはや範囲スキルと言ってもいいと思えるくらいに凄い。
そしてもう一つ。その効果だ。
目の前のゴブリン三体に飛んで行ったカードスラッシュの光がゴブリンに当たると、その場から消滅した。文字通り消滅だ。ただし、魔石は残っている。
「消滅というよりは、無数の刃で一瞬で斬られて塵も残らなかった感じか」
「あの光の粒子一つ一つが刃になってたね!」
「以前は一つの大きな剣って感じだったけど、感覚が少し変わったかな~」
「ものすごく強くなるんだね!」
本来なら剣戟として三回判定される『カードスラッシュ』だったけど、それが根本から変わって光の粒子全てに当たり判定が生まれ、大きさが五倍上昇した感じだ。
「次のスキルが怖い……」
「にぃがものすごく強くなっちゃう……」
次のゴブリン三体の群れの近くに向かう。
『カードバースト』が届く距離は十五メートル。まさかそれが五倍となるわけはないと思う。
「にぃ頑張れ~!」
「おう!」
また黒龍漆聖刀にスキルを集中させる。水色の光が灯る。
「――――スキル! カードバースト!」
目の前に広大な光が降り注ぐ。言葉通りに空から降り注いだ。
いや、あまりにも目の前に光の嵐が凄まじくて空から降り注いでいるように見える。
目標だったゴブリンは既に姿を消していて魔石と化している。が、それよりも遠くに見えるゴブリンたちも全て魔石に代わっている。
虹色のキラキラした光の粒子が幻想的な景色を作り上げ、それに心を奪われて暫く眺めた。
「にぃ? 一面のゴブリンが消えたよ?」
「そ、そうだな……」
「スラッシュと同じく粒子一つ一つが刃みたいだね」
「みたいだな……」
「あと、この光って人には問題ないみたい」
「それが本当に救いだよ」
まさかこんなにも広いと思わずに使ってしまったが、遠くにいる探索者も光に包まれている。もし探索者にもその刃が効くなら、消えていたかも知れない。
「あんなに遠くまで広がるんだね。これならゴブリンジェネラルも一撃で全滅させられそう」
「あ、あはは……」
自分が使ったけど末恐ろしい。
「にぃ? せっかくだからゴブリンジェネラルと戦わない?」
「へ?」
「少し走れば行けるし、にぃの新しい力を見てみたいから!」
ポカーンとしている僕の手を引いた妹は、魔石を全て回収してから十層に向かって走り始めた。
向かってる間に極力狩りはしないつもりだったけど、走りながら光の槍を放つ妹が
十層に着くと、戦っているパーティーもなく、すぐに戦闘可能な画面が現れる。
少しドキドキしながら、何度も押してきた戦闘ボタンを押すと上空から大きな光の塊が降りてくる。
「にぃ! 頑張れ~!」
「お、お…………スキルゥ……カードバーストォ……」
目の前に広大な光の嵐が吹き荒れる。
百体の色んなゴブリンたちが姿を一瞬で消し、最奥にいるゴブリンジェネラルも全身が斬り刻まれてその場から姿を消した。
そして――――
「あああああああ! またカードがああああああ」
「わあ~! おめでとう。にぃ~!」
その場で崩れる僕の視界には、軽やかに走って行く六花の姿が見えた。
あれ? レアカードのドロップ率って今のところ0.2%だろ!?
確認のためにステータス画面を開くと、ドロップ率に変化はなかった。ただし、二つのアクティブスキルの名前の後ろに『+』表記が追加されている。
恐る恐るそのスキル効果を押してみた。
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『カードスラッシュ+』
カードホルダーに保管しているカードの枚数に応じて威力が上昇する攻撃スキル。使用魔素1
進化効果:攻撃性能超絶強化
追加効果:このスキルで倒した時、カードドロップ率+3%
---------------------
『カードバースト+』
カードホルダーに保管しているカードの枚数に応じて威力が上昇する範囲攻撃スキル。使用魔素10
進化効果:攻撃性能超絶強化
追加効果:このスキルで倒した時、カードドロップ率+3%
---------------------
ああああああああ!
一層で巻き込まれたゴブリンたちがやけにカードをドロップしたからまさかとは思ってたけど、まさか攻撃スキルにドロップ率効果が乗るのかあああああああ!
六花が満面の笑顔でゴブリンジェネラルのカードを持って僕の下に軽やかに走ってきた。
「にぃ~! 今日も三十億円ゲットだね~」
声にならない僕の声がダンジョンに響いたのは言うまでもない。
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