第72話 0.2%の確率
「由衣さん。疲れてませんか?」
「大丈夫ですよ~それと、私のことは由衣
「!?」
クラウンダンジョン二層でゴブリンの魔石を回収しながら回っていると、由衣さんが呼び名を指定してきた。
どうやら凪から「由衣ちゃん」と呼ばれているから、僕からも呼び捨てにして欲しいらしい。花音も名前で呼んでいるし。
「栞人さん~呼んでみてください~」
「う、うっ…………ゆ、由衣……」
「えへへ~は~い」
「つ、疲れてない?」
「大丈夫ですよ~」
遠くから六花から殺気が込められた視線を感じた。
暫く二層での狩りを終えて屋敷に戻って行った。
「ケントくん~」
「うん?」
「明日から暫く二層で狩らない? 由衣ちゃんも慣れが必要だからね」
「そうだな。暫く慣れるためにそうするか」
凪の提案で今週はずっと二層での狩りとなった。
◆
三日後の金曜日。
今度は一層から二十層に向かう。
由衣には動きやすい格好になってもらった。いつもの着物と違い、凪と似た普段着の清楚感のあるジーンズとシャツだ。
防具の意味で戦いには非常に向いていないので、常に六花に守りをお願いして、他のメンバーで上り始める。
いつもの速度ではなく、少しゆったりした移動だけど、三日間みんなのおかげでゴブリンだけで由衣のレベルが上昇し、僕のスキルもあって、彼女もステータスが上昇して走りやすくなったようだ。
十層に着くと、いつものフロアボスの確認画面が現れる。
「みんな! 行くぞ!」
返事を受けてフロアボスとの戦いを始める。
最近は魔石採取ばかりしていたので、今度は最前線に出る。
無数のゴブリンたちを黒龍漆聖刀で斬り倒す。まるで豆腐のように斬れる。
「ケントくん~」
隣には凪もやってきて、一緒に連携攻撃をする。
前後、横なぎ、凪との連携斬り、カードスラッシュによる攻撃、凪の連続技。
次から次へと斬り倒して最後のゴブリンを斬り倒す。
周囲には絵里さんの魔法の跡と、無数の矢が見える。
最後に巨大なゴブリンが僕達の前を塞ぐ。何だか久しぶりに思えるゴブリンジェネラルだ。
「ケン~トくん。私も一緒に戦っていい~?」
「ん? もちろん」
「えへへ~じゃあ、行こうか」
何だか最近凪の雰囲気が変わった気がする。
それはともかく、今は目の前の敵に集中だ。力を手に入れたとしても、強敵であることは違いない。
先に凪が足早に接近してゴブリンジェネラルに仕掛ける。
大きな盾を双剣で叩きつけると周囲に凄まじい風圧が広がっていく。凪の力なら盾を斬れてもおかしくないはずだ。多分
今度は僕の剣にカードスラッシュを剣に纏わせて、ゴブリンジェネラルの足を斬り倒す。
巨体がその場に倒れ込むのが見える。
すぐに凪の双剣と美しくなびく白い布が見えた。そして、一閃の光が通り過ぎる。
たった一回息を呑んだだけで、ゴブリンジェネラルがバラバラになっていく。
銀色の綺麗なカーテンのように宙を舞う凪の姿と共に――――――その場に虹色に輝くモンスターカードが一枚、光り輝いていた。
「にぃ~! カード!」
「う、うわああああ!?」
ゆっくりと手を伸ばしてモンスターカードを手にした凪は、それはそれは満面の笑顔を浮かべて僕に向かって笑顔を咲かせた。
レアカードのドロップ率0.2%。その確率がここで花開くとは思いもしなかった。
◆
「小僧はどうしたんじゃ?」
「にぃは今日の収穫物で魂が抜けるよ? ほら、頬っぺたを押しても反応しないの」
六花が僕の頬っぺたを押し込むのが見えるけど、あまり感覚がない。
反対側からは凪がいたずらっぽい笑みを浮かべて僕の頬っぺたを押し込むが、あまり感覚がない。
「まあいい。由衣。これが小僧たちに作ってあげた制服と同じデザインの服装だ。ただ、由衣だけ少し変わってる。戦闘用ではなくて支援魔法用を考えて両手に自衛用武器を装着させておいた。赤いのの提案で魔石は供給できるらしいから、魔石を使って魔素を貯めるようにな」
「は~い! ありがとうございます~源氏さん」
「おう。小僧が情けない顔をしてるからすぐに帰るといい」
「はい~。ほら、ケントさん? 帰えますわよ~」
「お、お……お…………」
それから由衣に手を引かれた気がしたけど、気が付けば屋敷のソファに座っていた。
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