第69話 レベル25と新たな検証

 二十三層での狩りを終えて、次の日も二十一層から狩りを続ける。


 二十四層からはモンスターがまた一新して、十一層で出ていたレッサースパイダーよりも一回り大きいブラックスパイダーが無数に出現した。


 この階層はモンスターというより、モンスターが吐き出した蜘蛛の巣に足を引っ張られて動きにくくて難しかったけど、ここは絵里さんの出番で火の魔法で全部燃やしていた。


 二十五層はブラックスパイダーの中にギガントスパイダーが出てきて、ゴブリンウォーロックと同じくレアカードだった。



 ――【レベルが24から25に上昇しました。】


 ――【新しいスキル『コレクター』を獲得しました。】



 その日の夜。


 作戦会議のために恵奈さんには先に部屋で休んでもらい、僕達だけパーティーメンバーだけで会議を行う。


「さて、これから会議を始めるよ。僕と六花のレベルが遂に24から25に上がりました」


 みんながパチパチと拍手をする。


「では六花の新しいスキルを発表してください~」


「あいっ! にぃより先に発表させて頂きますっ!」


 六花が可愛らしく敬礼ポーズをして起き上がる。


 今までダブルスペルやらヘイストやらとんでもないスキルを覚えてきた。今回覚えるスキルもとても楽しみだ。


「今回私が覚えたスキルは――――魔素をより多く消費して魔法の範囲を広くする『拡大化』というスキルです~!」


「やはりレベル25で覚えるスキルは凄いわね……」


 凪がボソッと呟くと同時に、みんなで大きな拍手を送った。六花はよくわからなさそうな表情のままドヤ顔で喜んでくれた。


「凪? レベル25のスキルって凄いの?」


「うん。とても凄いわ。だって――――レベルの折り返し地点・・・・・・だからね」


「ということはレベルって50が最大値?」


「そうなの。だからレベル25で覚えるスキルは凄く強いことが多いよ。30からも強いものを覚えるけどね」


 なるほど……となると25からが本番・・ということだな。


 いつの間にかこんな高いレベルまで上がってきたものだな。


「今度はにぃの番だよ~」


「そうだな。僕の新しいスキルは――――『コレクター』というスキルなんだ」


 みんなが「これくたぁ?」と声を揃えて可愛らしく首を傾げた。


「色々制約があるんだけど、カードホルダーに入っているカードの枚数で好きなステータスを上げられるみたい」


「それって凄いことなんじゃない!?」


「う~ん。でも制約が色々あって、枚数分だけ好きなステータスを上げられるのはいいけど、条件が純粋なステータスの三倍まで。今のままでいくと、1ずつしか上がらないから僕の純粋なステータスは25になる。となると、追加で上げられるのは75までってことになるね。魔素だけは1,000まで上げられるみたい」


「凄いですね~でも今のままでも全部上げ切るには~えっと~」


 花音が計算を始めると、隣にいた六花がすぐに「1,225枚だね~」と答えた。


 それにしてもとんでもない枚数なので、気が遠くなりそうだ。


「とにかくまだ二十六枚だから、速度に全部振ってるよ」


 すると何かを考え込んでいた凪が手をあげた。


「凪?」


「私に一つ提案があるんだけど、いいかな?」


「いいよ?」


 それから凪はとある提案をしてくれた。


 次の日から凪の提案である検証を始めることとなった。




 ◆




 数日の検証を終えて、ゴブリンジェネラルとグランドリッチの魔石を届けて、今度は大量に集まった魔石を売りにアルカディアに向かった。


 いつも通り、魔石を籠に詰めると、いつもより少なさに少しホッとしている受付嬢さんが見えた。


 やっぱり少し減らすべきかな……?


「あの。店長さんにお会いする事ができるでしょうか?」


 すると少し待って欲しいと言われて、数分しないうちに店長さんがやってきて、以前話し合った会議室に通された。


「今日は急にすいません」


「いえいえ。例の件の工事は順調に進んでいますので、もう少しだけお待ちください」


「はい。その件はよろしく願います」


 連日うちの中で行っている工事のことだ。それが終われば、移動が少し楽になりそうだが、まだまだ時間が掛かりそうな大掛かり工事だから気長に待つ。


「では本日の用件を聞きましょうか」


「はい。単刀直入に言いますと――――人手が欲しいです」


「人手?」


「はい。ダンジョンで狩りを行ってくれるメンバーがいいです」


「ふむ…………失礼だと思いますが、それは高難易度の探索者のことでしょうか?」


 僕は小さく笑みを浮かべて答える。


「いえ――――全く戦いの経験がない人で構いません。とにかくたくさんのメンバーがいいです。こちらの条件としてはシェアハウスでの家を提供した上に食事なども提供して、お給料まで提供しましょう」


「ふむ……それは弱くても構わないってことですね?」


「ええ。ただし、信頼できる者がいいです」


 すると店長が笑みを浮かべた。


「私に思い当たるメンバーが十人いますね。まあ、才能に糸目を付けないのであればの話ですが」


「ええ。才能に糸目は付けません。最初は十名、今度また十名を雇うと思います」」


「かしこまりました。すぐに取り掛かりましょう」


 店長と握手を交わしてアルカディアを後にした。


 喫茶店にあがり、みんなに親指をあげて交渉が上手くいったことを伝えると、みんな満面の笑顔を咲かせた。

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