第65話 ユニーク才能
アルカディアとの交渉を終えて、シェアハウスに戻り現状をメンバーに報告した。
全ては凪の提案通りに進んだことを祝って、デザートパーティーで祝った。
次の日。
本来なら休日だけど、今日はお休み返上で源氏さんの迎えを待つ。
ソワソワしながら待っているとお昼に差し掛かる頃、一台の車がシェアハウスにやってきた。
色は真っ黒で車体が今まで見て来た普通の車よりも長い。見た目からして高級車なのが分かる。
迎えに来てくれた車に向かう。
そこには汚れ一つない着物を着ている女性が佇んでいた。
「お待たせしました」
「初めまして。源氏様から言伝を預かっております
礼儀正しく深々と挨拶する彼女に、僕たちも頭を下げる。
「ではこれから我々――――『
組織名は『出雲』か。初めて聞く。ちらっと凪を見つめたけど、首を横に振る。凪も知らない組織名のようだ。
少なくとも源氏さんの仲間なら信頼に値する。それに車の中には僕達以外の人はいないから問題なさそうだ。
全員が乗り込んでも余るくらい広々として、高級椅子から中にはテレビ、飲み物も用意されている。
「皆様。これから案内する場所は秘密にさせて頂きたいので、内側の窓を閉めさせて頂きます」
「分かりました」
外が透けて見えていた窓の内側にもう一枚の黒い硝子が上がってくると、外の景色は全く見えなくなった。
車が移動して、運転席の部分も黒い硝子で遮られてしまった。
テレビには色んな事件が映っていたけど、その中にスラムの流行り病が何者かによって全部治されたと流れている。彼らは自ら『黒猫団』と名乗ったそうだが、僕達は一切名乗っていない。恐らく僕達を見張っていた連中がそう名付けたのだろう。
他にもとあるダンジョンの新しい層を踏破したとか。新しい素材が見つかって効能がどうとか色んな情報がニュースに流れる。
そういえば、うちはニュースとか一切見てなかったけど、こういうのを屋敷に流してもいいかも知れない。
「ケントくん? あまりニュースは信じちゃだめだよ?」
「ん? そうなの?」
「ええ。例えば、さっきの黒猫団とか、平然と
確かに凪の言うこともごもっともだ。少なくともそこに嘘が一欠けらでもあれば、間違いなく嘘になる。事実に嘘というスパイスを混ぜて報道したい気持ちも分かる気がする。
暫く動いていた車の速度が遅くなっていき、やがて停車した。
「お待たせしました。窮屈な想いをさせてしまい、大変申し訳ございません」
扉が開いて、伊狩さんは頭を下げながら謝罪をした。
「いえいえ。それも想定済みですので、気になさらないでください」
「痛み入ります」
車から降りると、周りは大きな樹木で囲まれていて、目の前には立派な屋敷が現れた。
僕達が住んでいるシェアハウスよりもずっと広い上、和風の屋敷からは凄まじい迫力を感じる。
伊狩さんの案内で屋敷内に案内されて連れて行かれた場所は、綺麗に保たれた庭が見える茶の間だった。
絵本でしか見たことがない和風の庭や建物にまるで異世界にでも誘われたかのような感覚に陥る。
テーブル前にはそれぞれ分厚い座布団が用意されていて、そちらに座って待っていると慣れ親しんだ顔が現れた。
「今日は来てもらって悪かったな」
「いいえ。源氏さん」
僕達の向かいに源氏さんが座るとすぐに和服の男性と伊狩さんがやってきた。
早速みなさんが席について、中央に座る白髪が目立つ和服の男性に注目した。
「本日はわざわざ来てもらいありがとうございます。わしは組織『出雲』の長、
僕に織田さんに続いてそれぞれ自己紹介をした。
「それで、本日呼んでくださった理由を聞いてもいいですか?」
「ええ。どうやら皆さんの中に――――回復魔法が使える者がいるとのことですね」
「はい」
織田さんの視線が僕から隣の妹に移るのが見える。
「私達の情報では光属性の攻撃魔法が得意だと聞いていたのですが……まさか回復まで使えるとは」
「ええ。自慢の妹です。普段も『光の槍』で攻撃に参加しています」
「ふむ……ということは、妹君は攻撃魔法だけではなく光系統に関する全ての魔法が使えると考えていいですね。まさに――――――『聖女』のようだ」
聖女?
隣の妹が一瞬だけビクッとなる。
「その『聖女』というものが何か聞いてもいいですか?」
「ええ。これは
無限にも思える魔素量。光魔法による殲滅。回復魔法。どれもが今の六花に合っていた。
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