第62話 二十一層
今日は一層からではなく、真っすぐ二十一層に真っすぐやってきた。
最近は毎日一層から登るだけで一日を消費していたのだが、源氏さんとの話し合いでフロアボスの魔石は毎週一つも持ってきてくれれば十分ということで、月曜日から木曜日までは通常攻略をすることにして、金曜日はフロアボスの魔石を狙い、源氏さん及びアルカディアで売却をする。土曜日と日曜日は休日にすることになった。
ということで、今日から久しぶりにダンジョンの攻略を開始する。
二十一層は少し近未来的な構造のビルが立ち並んでいる街並みだ。
「そういや、ダンジョンのオブジェクトというんだっけ? これって壊せられないんだよね?」
「そうね。フロアボスは壊せるけど、すぐに元通りに回復するね」
オブジェクトというのは建物だったり廃墟だったり草木だったり各階層を構成している景色そのものだ。それらを壊すことはできず、草一本引き抜くことができない。まるでそこにないかのようにどれだけ力を入れても、火魔法を放っても草木一つ燃えないのだ。
建物は全て扉が固く締まっており、中には入れそうにない。つまり、ここにあるビル群全てがオブジェクトだ。
「これだと下層よりも視界が悪いね」
「そうだね。ここからは私も未知だからアドバイスはできないかも」
「そうだったな。――――凪」
「うん?」
「その……ありがとうな。ここまで僕たちを連れて来てくれて。それと、お待たせ。これからもよろしく」
可愛らしい目を大きく見開いて、すぐに笑顔に染まる。
「よろしくって言わなかったら多分怒っていたよ?」
「だと思ったよ」
「ふふふっ。これからもよろしくね! 目指せ最上階~!」
「そういや凪は最上階を目指していたんだっけ?」
「うん」
ダンジョンの中は不思議な構造になっていて、天井を眺めてもそこにあるのは果てしなく広がっている空のみ。
「必ず行こう。六花も花音も絵里さんも。これからもよろしく!」
「うん! にぃ!」
「任せてください!」
「こちらこそよろしくね」
みんなの意識が攻略に向いたところで、整備された道を歩く。上層に向かう方法を探りながら進む。下層を考えれば、どこか上層に繋がっている扉と階段があるはず。
ゆっくりと歩いていると、敵意を感じて身を構える。
そこに現れたのは、緑肌を持つ人間だった。
「人?」
「多分ゴブリンかも」
ゴブリン!? ゴブリンはもっと醜悪な顔をしているはずなんだが、視界に映っているゴブリンは非常に人間に近い。違いがあるとしたら肌色が緑である点と耳が少し尖っている。
「どういう能力を持っているか分からないから、基本的に先制は花音に任せる!」
「任されました~!」
すぐに大弓を展開して矢を放つ。相変わらずヘイストを受けた矢は凄まじい速度で飛んでいき、真っすぐゴブリンに刺さった。と思った直前、ゴブリンが矢を叩き落とす。
「嘘!?」
「スキルだね。恐らく遠距離攻撃に対して発動するかも」
冷静に判断した凪の言う通り、当たった時に不思議な光の
「花音。もうちょっと試してもらえるか?」
「了解ッ!」
それから連続で矢を放つも、全て素手で弾かれてしまう。念のためいくつかのスキルを使って撃ってもらったけど、全部弾いている。
物理的に効かないならまだしも、弾くってところが中々面白いな。
「次は僕が注意を引く! 花音はそのまま狙ってくれ! もしそれでも効かないなら次は六花の光の槍。それでもダメなら絵里さんの魔法。最後は凪と一緒に倒そう」
みんなが「了解」と口を揃えて、僕はこちらに向かってくるゴブリンに向かった。
武器は持っていない。となると魔法という線もあるけど、ゴブリンメイジを思えば杖らしきものを持っているから魔法系統ではないか。となると――――
軽めに攻撃を試してみると、軽々と避けられた。それと同時に両手をあげて、両足で体重をずらしながら飛んでいるさまは武人そのものだ。武術系統のゴブリンだな。
僕の肩を掠めるように矢が飛んできたが、楽に弾く。視界が見えてなくても勝手に反応するんだな。
次は注意をそらすために、みんながいる場所から背を向かせるため後ろに回り込む。
挟み込む形となり、ゴブリンが僕に視線を向けていると、額から矢の先が出て来てその場に倒れ込んだ。
「後ろからは効いたってことは、矢を弾くのはあくまで前方だけみたいだな。花音!」
「言われるまでもありません! 任せてください!」
「ああ。ではこれから狩りを始める!」
二十一階には『ゴブリンマーシャル』『ゴブリンスピア』の二種類のゴブリンがいて、武術を使うマーシャルと、槍を持つスピアだ。
二枚のカードで十枚目と十一枚目によりドロップ率を上昇させて、遂にドロップ率が0台を超えて1%台となった。
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