第55話 栞人さんの秘密

 ◆栗原花音◆


 ふふふっ……今日は久しぶりの休日!


 初めてパーティーを組んでからのもの毎日狩り狩り狩りと……毎日が充実しているようですが、戦士にもたまの休日は必要なのです。


 栞人さんは可愛らしい妹さんの六花ちゃんとデートに出かけたみたいです。どうやら服を買いに行くみたいですね。


 六花ちゃんは私から見てもものすごい美少女で、最近では髪の色も隠さないようにしているので目立ってるのもあり、歩けば視線を集めていますね。


 栞人さんにとって彼女は命よりも大切な存在のようで、凪さんはずっと彼女の隣で身をていして守るためにいつも近くにいます。


 となると凪さんの銀髪と六花ちゃんの金髪が合わさって、もはや神々しさまで感じてしまうんです。


 それはいいとして、私は今日屋敷の大掃除がしたいのです!


 …………自分で言うのもあれですが、私は掃除が大好きなんです!


 屋敷の周辺には植物は一切植えていないので葉っぱが落ちてもないですし、最近高級屋敷に必ず使うという虫よけ素材を使っているのか、外も中も虫一匹寄り付かない作りなので、塵すら積もらないから掃除の必要が全くないですね。


 屋敷中はというと、みんなさんきれい好きのようで、汚れは殆どないですし、ゴミが捨てられるなんてまずありえないですね。


 これでは掃除のし甲斐がないです…………でも! 見えないゴミは溜まるものなんです!


 最初はお風呂場。次は厨房、玄関、リビングと大掃除を続けます。


 絵里さんも今日はゆっくりと家で過ごすとのことで、部屋にいるのかなと思ったら、二階にあるテラスにビーチチェアのような大きいチェアに横たわり、のんびりと読書をしながら大きなグラスに入った飲み物を堪能していますね。


 喫茶店『黒猫』に宅配をお願いしているので、ご飯とかは全く苦労しません。あのお店もとても便利というか、あのマスターが作ってくれる料理はどれも美味しくて、さらにアルカディアに所属しているからそこに所属している人にこうやって宅配なんてしてくれたりもするので、『黒猫』に通うようにしたのは大正解でしたね。


 やっぱり私! すっごく見る目があるっ!


 大掃除を進めていき、二階の部屋の順番になりました。


 本来なら男性と女性で住み分けができるのに、六花ちゃんの命令によりそういうのはないみたいですね。最初は驚きましたが……栞人さんなら問題ないでしょう。そういうを感じませんからね。


 …………。


 そういえば、栞人さんってそういう気を感じませんね。


 近くに超絶美少女妹六花ちゃんがいるからなのか、はたまた絶世の美女天使凪さんがいるからか。でも二人に対しても男らしい気配を発しないのは不思議ですね。


 今日も出かける前に私とちょっとぶつかっただけで「ひよお~! ご、ごめん~!」と素から出たリアクションが少し可愛かったですね。


 …………。


 男は全員狼のはずなんです! 栞人さんだって……そういう気があっても可笑しくないと思うんです!


 恐る恐る栞人さんの部屋の扉を開きました。


 実はみなさんの部屋の大掃除をするって許可はもらっているので、不法侵入でもなければ、掃除のための堂々とした侵…………入室です。


 栞人さんの部屋には初めて入りましたが、思っていたよりもずっと――――整理整頓された綺麗な部屋でした。


 ベッドも布団とか枕とか乱雑に置かれていると思ってましたが……綺麗に畳まれていますね。


 みんな普段はリビングで寛いでいますが、寝る前はそれぞれ部屋でゆっくりしたりと意外と一人にいる時間も多いんですが、栞人さんも時折読書をするからと部屋に籠る場合があります。


 男性なら……そういうこともあるでしょうからツッコまないようにしています。


 …………掃除掃除。


 窓を開けて積もった塵を拭いたり飛ばしたりと掃除を進めて行く。


 机の上は綺麗で何も置かれていません。時折本を読むと言っていたのに、一冊も本が……ない?


 これは不穏な気配を感じますね。


 ピュアな栞人さんですけど、実は裏で妹モノとか、銀髪美女モノとか読んでいるに違いないのです!


 机の引き出しを確認してみるも、やはり何も入っておらず、隠し板とかもありませんね……。


 となると…………ベッドの下に! …………何もありませんね。


 こうも見つからないと逆に怪しいですね。やはり栞人さんが普段から愛読している本は……イケナイ本のような気がします!


 最後に探すのはベッドのボード部分にある出し入れ…………ここに栞人さんの秘密が~!


 開いた引き出しの中に二冊の雑誌のようなモノが入っています!


 き、きっと金髪妹シリーズと銀髪姉シリーズに違いありません!


 恐る恐る手を伸ばして雑誌を取り出しましょう。


 え、えいっ!


 と、取り出しました!


 こ、これはああああっ!


 …………。


 『強い男になる方法-訓練編』『強い男になる方法-実戦編』?


 えっと…………もしかして、だ、男性として・・・強くなる!?


 ゆっくりと開いて中身を確認します。


 …………。


 …………。


 見なかったことにしておきましょう。


 はあ……栞人さんって…………どこまでもピュアな心の持ち主なんですね。


 そうか……ここに置かれている筋トレグッズはこの本の影響なんですね……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る