第52話 決戦グランドリッチ
次の日にやって来たのは、クラウンダンジョンの一階ではなく、真っすぐ十一階にやってきた。
妹のヘイストの詠唱が終わると同時に走り出して、真っすぐ十九階にやってきた。
「さて、ここで少しだけ腕慣らしをしよう」
「「「了解!」」」
絵里さんがいつもの魔法を唱えて無数の火の玉を放つと今までと比べて明らかに違う大きさの爆発が起きた。
「す、凄い……増えた魔力量も凄いし、増幅量も高いし、とんでもないわ」
見た目だけでなく使う本人も納得の強さのようだ。
次は六花が光の槍を展開させる。が、生成された光の槍の大きさとかは変わっていない。
ターゲットに向かって手を繰り出すと、光の槍が発射されて、とんでもない速さで目標を貫いた。
「凄い~! 前よりも三倍くらい速くなったよ~! これならもっと楽に狙えるかも!」
魔法によっては必ず火力が上昇するわけではく、速度が上昇する場合もあるみたいだ。
次は花音で、リトーを空高く飛ばすと、機械音を鳴らしながら飛んでいく。そもそもスカウターというのはどういう性質を持っているんだ?
「スカウターは弓使いにとっては夢の一つなんですよ~見せてあげますから~!」
いつも通り弦を弾いて魔法の矢を空高く放つ。いつもとは違う角度に放たれた矢は、真っすぐリトーに直撃した。と思ったらリトーの真下に光の壁みたいなものがあって、そこにぶつかった魔法の矢がそこからシャワーのように下に降り注いだ。
無数の魔法矢のシャワーで周辺に散っていたゴブリンシーフを殲滅していく。
「スカウターは反射能力があるのでこうして協力的な技も使えますし、盾としても優秀なんですよ~」
反射するということは、相手の攻撃も反射するということか。
「あの反射するのは単純に『リフレクト』という魔法なんですけど、本体を維持させるにも魔法を展開させるにも魔素が必要で、そのために魔石が沢山必要だったりするんです。ですから栞人さん。これからもよろしくお願いしますね」
「分かった。花音の戦力増強になるなら魔石くらい安いもんだ。それに凪曰く、二十階を超えたら、多分
花音と話していると、僕達の近くに忍び寄る気配を感じた。次の瞬間、後ろから一瞬殺気が感じられ、花音で目掛けてゴブリンアサシンの短剣が襲い掛かる。
その間に割り込んで僕の左腕に装着されていた盾で短剣を防いだ。
当たった感覚が全くないのに金属がぶつかる音が聞こえて、ゴブリンアサシンが後ろに弾かれる。
体勢を崩したゴブリンアサシンを黒龍漆聖刀で頭部を跳ねた。
「凪~すまないがウォーミングアップする時間はあま――――――り必要ないみたいね」
「うん! 私も完璧だよ~」
笑顔でこちらに手を振る凪の後ろにはとんでもない数のゴブリンシーフの亡骸が横たわっていた。
みんなの腕慣らしが終わったようなので、ゴブリンアサシンを倒したのもあるから二十階への扉を潜り抜けた。
二十階に着いて、いつものフロアボスとの戦闘を選択すると光が降りて来て姿を現すのは、二十階のフロアボスのグランドリッチ。
「さて――――作戦通りに行くか!」
「「「「はいっ!」」」」
最初に花音の魔法矢が飛ぶ。魔法矢と言ってもあくまで物理属性なのでグランドリッチは気にする素振りすら見せずに受けると、体をすり抜けて当たることなく奥に飛んでいく。
そこにいつの間にか飛んでいったリトーがリフレクトを展開させて魔法矢を受け止めると、無数の矢になってグランドリッチに飛ぶ。
スカウターのリフレクトの良いところは、何もただ反射するわけではない。魔素をより使えば反射したモノに力を上乗せすることができる。つまり、いま反射されて無数に増えた魔法矢にはしっかり魔法の属性が上乗せされているのでグランドリッチもそれに反応して爆発魔法を放つ。
それと同時に絵里さんと六花の魔法が始まり、光の槍が先に飛んでいく。
凄まじい速度で飛んでいく光の槍にもちゃんと反応してその場から空中で動いて避けられる。
六花の隣で凄まじい威圧感の魔法を詠唱している絵里さんを捕捉したグランドリッチが、真っすぐ飛んで来て魔法を連発してくる。
それらの魔法に対応するのは――――僕だ。
黒龍盾で魔法を
その合間を縫って六花の光の槍が連続して飛んでいき、一発がグランドリッチに当たると今度は上から花音が放った魔法矢をリフレクトした無数の魔法矢シャワーがグランドリッチを襲い、地面に叩き落とされた。
地面に叩き落とされたグランドリッチはすぐさま両手に炎を禍々しい闇の玉を作り、二つを一つに合体させ始める。
これがグランドリッチの必殺技でもあり、一回だけ使える大魔法だ。
周囲に強烈な爆発を起こす大魔法が放たれる。
だが、それも全て予測通り。
僕達の後ろから、それをも圧倒するかのような炎の巨大な球体が空に浮かんでいた。
「――――フレイムエクスプロージョン!」
グランドリッチの魔法と絵里さんの炎の球体がぶつかりあって、周辺の景色を一瞬で灰にするかのような大爆発が起きる。
爆発によって空にはキノコ雲ができる程に強力な爆発なのが分かる。
しかし、それでもグランドリッチがその場にボロボロになりながらも立ち上がっていた。
「これでも倒せないなんて、純粋な魔法だけだとやっぱり倒せないわね。これだとゴブリンジェネラルとか雑魚も込みで殲滅できるのに……」
「まあ、魔物の耐性やら弱点やら色々あるみたいですからね。グランドリッチ。物理耐性に絶大な耐性を持ちながら、魔法にも高い耐性を持つ魔物。なのに、物理と魔法両方を持つ属性にはめっぽう弱いという弱点は不思議ですね」
「そうね。花音ちゃんの矢一発でもふらふらになってたものね」
「さて、最後はやっぱり――――――うちのエースの出番ですね」
ふらふらしているグランドリッチに向かって、美しい銀色の天使がゆっくりと近づく。
「私がここで貴方に敗北した日のこと、今でも覚えているわ。今では凄く感謝している。あの日、貴方に初めて完敗したおかげで私は弱いということを知った。速さだけが最強ではないと。だからありがとう。気づかせてくれて。そして、ケントくんに会わせてくれて」
ゆっくりと双剣を抜くと、美しい刀身が彼女の両手から伸びた。
その姿には今までの双剣とは少し違う部分がある。
柄の柄頭部分は元々四角い小さな飾り物があったのだが、今はそこから白い布が伸びている。まるで天女の衣のようなどこまでも白く美しくなびいている。
「私に新しい力をくれてありがとう。これからもよろしくね」
次の瞬間、真っ白だった布が赤く染まると同時に双剣の刃も赤く染まった。
「
ゆっくり歩いていた凪が一瞬でその場から消えてグランドリッチに向かって走り出していた。
彩姫というのは、彼女が初めて布を見たときに美しさと性能を聞いてすぐに付けた名前だ。相棒には名前をちゃんと付けないといけないみたい。僕の黒龍漆聖刀みたいなところだ。
一瞬で近づいた彼女に魔法を放つグランドリッチだったが、その魔法を丸ごと斬り捨てて、次々剣戟がグランドリッチに与えられる。
物理属性の剣に火属性を宿らせた両方の属性を浮かべた彼女の双剣は、もはや魔法すら斬り、遠くの相手に属性が込められた剣技を飛ばせるようになり、僕達パーティーのエースとして最強の力を目覚めさせた。
グランドリッチが凪の前で倒されると、暗かった世界に一筋の光が注がれる。
美しい銀色の髪は光を受けて、こちらに笑みを浮かべて嬉しそうに手を振ってくれた。
彼女に向かって走り出す妹、花音、絵里さんを後ろから追いかけながら眺める。
僕が底辺冒険者としての日々を繰り返していた頃には夢にも思ってなかった光景。それが夢のようで信じられなくて、今が幸せで少しだけ泣きそうになる。
「ケントくん~早く~」
「にぃに! 次行くよ次~!」
「栞人さん~! 魔石採取して源氏さんに恩返ししますよ~!」
「栞人くん~今日は勝利を祝って美味しいモノ食べようよ~」
僕に手を振る四人がいるなら、僕はどんな辛いことでも乗り越えられると思う。
そう。僕の……いや、僕達の探索は始まったばかりだ!
「ああ! すまないが今日は凪と六花の手料理が食べたい気分だからお願いしていいか~?」
「「いいよ~!」」
「「やった~!」」
ダンジョンに僕達の嬉しい声が響き渡った。
――【後書き】――
何度かタイトルを変えましたが、ここまで『ダンジョンで出会った天使と最底辺探索者は空を見上げる。~モンスターカードを集めてハズレ才能カードコレクターは覚醒する~』を読んで頂き心から感謝申し上げます!
こちらの作品は当作家の作品で非常に人気が出た『レベル0の無能探索者と蔑まれても実は世界最強です~探索ランキング1位は謎の人~』という作品からインスピレーションを受けて、もう一回現代ファンタジーに挑戦したく書いた作品になります。
ただ書いたモノ全てが伸びるわけではないのは知っているつもりなので、レベル0と比べたらあまり人気はでませんでした。が、当作品は毎日楽しく書かせて頂いております。
ということで(?)こちらの話を持ちまして、当作品の一章部分が終わりを迎えました。
皆様、ここまでのダン天使は楽しんで頂けたでしょうか? もし楽しかったよ~と思った方はぜひ★を!(結局それか!)
と色々後書きに書きましたが、こちらの作品。明日からの投稿分から投稿頻度が変化致します。毎日投稿していた当作品ですが、二章からは隔日更新に切り替えようと考えております。これからも更新は続きますが少しペースが落ちると思います。栞人くん達のこれからの冒険や凪さんの秘密諸々まだ楽しめる要素が沢山あると思いますので、ぜひこれからも読んで頂けたら嬉しいです。
では二章からもよろしくお願いします~!
まだ作品のフォローと★がまだの方はぜひ入れてくださいね~! よろしくお願いします!
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